本記事では、「めちゃコミック」を運営するインフォコムのブラックストーンによる買収について説明を行います。
2024年6月18日、米投資ファンドであるブラックストーンの買収主体であるビー・エックス・ジェイ・シー・ツー・ホールディング株式会社(以下、BX)によるインフォコム株式会社(以下、インフォコム)への公開買付け(以下、本公開買付け)に賛同し、株主に対して応募を推奨する旨の意見表明を公表しました。
本公開買付けは、インフォコムを非公開化することを目的としたものであり、成立すればインフォコムの上場は廃止される予定です。
公開買付価格は6,060円であり、ブラックストーンが様々な企業に対して行ってきた提案活動の中で、インフォコムの成長性や収益性、BXとの協業の可能性を評価し、本公開買付けに至りました。
インフォコムの概要
インフォコムは、1983年2月に日商岩井株式会社(現 双日株式会社)の情報システム部門が分離独立する形で、日商岩井株式会社の子会社として設立されました。その後、何度かの社名変更を経て、2001年4月に帝人の子会社である株式会社帝人システムテクノロジーと合併しました。
2002年3月には日本証券業協会の店頭登録銘柄として登録され、2004年12月にはジャスダック証券取引所に株式を上場しました。その後、大阪証券取引所ヘラクレス市場への上場を経て、2022年4月には東京証券取引所プライム市場に移行し、現在に至ります。
インフォコムは、一般消費者向けにスマートフォン向けの電子コミック配信サービスを展開しています。また、企業や医療機関、教育機関など法人向けに、情報システムの企画・開発・運用・管理などのITサービスを提供しています。
2023年5月16日に公表された中期経営計画では、「United Innovation “価値共創 and beyond”」をスローガンに掲げ、情報通信技術(ICT)と現実世界のビジネスを融合させることで、新たな価値を提供するサービス企業を目指しています。
案件概要
案件目的
本公開買付けを通じ、ブラックストーンはインフォコムの株式及び新株予約権の全てを取得し、インフォコムを非公開化します。
ブラックストーンは、インフォコムがメディア事業とITサービス事業の両方で高いシェアと競争力を持っていると認識しており、その潜在的な成長力を高く評価しています。しかし、インフォコムは、国内市場の競争激化や成長の鈍化といった課題に直面しています。
ブラックストーンは、非公開化によってインフォコムが短期的な業績にとらわれず、中長期的な視点で成長戦略を追求できる環境を構築できると考えています。具体的には、ブラックストーンは、自社の豊富な資金、ノウハウ、グローバルネットワークを活用し、インフォコムの経営陣と協力して以下の施策を推進する予定です。
- メディア事業: 海外展開の加速やIP(知的財産)の収益化
- ITサービス事業: 既存事業の強化、新規事業の創出、M&Aの検討
ブラックストーンは、これらの施策を通じて、インフォコムの企業価値を最大化し、将来的には再上場も視野に入れています。
案件背景
インフォコムを取り巻く経営環境の変化と、親会社である帝人との関係性の変化が、今回の公開買付けの背景にあります。
- インフォコムを取り巻く経営環境の変化
- 市場の成熟と競争激化: インフォコムは電子書籍市場とITサービス市場で事業を展開していますが、どちらの市場も成熟化が進み、競争が激化していました。
- 成長の鈍化: 新型コロナウイルス感染症の影響もあり、インフォコムの成長は鈍化していました。
- さらなる成長のための投資の必要性: 今後の成長のためには、既存事業の強化に加え、新規事業の創出やM&Aなど、積極的な投資が必要となっていました。
- 親会社である帝人との関係性の変化
- シナジー効果の欠如: 帝人は、インフォコムとのシナジー効果を見出すことができず、事業ポートフォリオの見直しを検討していました。
- 帝人の業績悪化: 帝人は業績が悪化しており、保有するインフォコム株式の売却を検討していました。
- 売却価格の最大化: 帝人は、市場株価に一定のプレミアムを上乗せした価格での売却を目指していました。
案件後の経営方針
公開買付者は、インフォコムの非公開化後、ブラックストーンが有するノウハウや資金、グローバルネットワークを活用し、インフォコムの更なる成長を支援する予定です。具体的には、メディア事業では海外展開やIPの収益化を、ITサービス事業では既存事業の強化やM&Aを検討しています。
ネットビジネス事業
インフォコムのネットビジネス事業は、強固な電子コミック配信プラットフォームを基盤として、同社の成長を牽引してきました。特に30代以上の女性からの高い支持とロイヤリティを強みとして、安定的な利益率を維持しています。
一方、電子コミック市場の競争は激化しており、顧客データのさらなる活用やオリジナル・独占配信作品による差別化が、中長期的な成長には不可欠です。公開買付者は、ブラックストーンの既存投資先であるCandle Media社のノウハウやネットワークを活用し、インフォコムの海外展開やIP(知的財産)の360度収益化を支援する予定です。
ITサービス事業
インフォコムのITサービス事業は、ERP「GRANDIT」や放射線情報システム(RIS)などの病院向け部門システムなど、市場で高いシェアを誇る製品・サービスを提供しています。
公開買付者は、ITサービス事業の今後の成長のために、既存事業における売上・利益の最大化に加え、新規事業の立ち上げやM&Aも視野に入れています。
人材
公開買付者は、現在の従業員に継続して働いてもらうことを想定しており、従業員の意欲とエンゲージメントを維持するための施策を実施する予定です。また、事業成長に必要な場合は、インフォコムと協議の上、新たな経営人材の採用も検討します。
公開買付者は、ブラックストーンから取締役を派遣し、ブラックストーンのネットワークを活用して外部から取締役を数名招聘する予定です。
再上場
ブラックストーンは、インフォコムの事業成長と企業価値の向上が実現した後、株式を再上場させることを基本方針としています。
案件検討の経緯
帝人側の動き
- 2022年7月下旬: 帝人は、事業ポートフォリオ見直しの必要性を理由に、インフォコム株の売却を検討し始めました。
- 2022年10月上旬: 帝人の業績悪化を理由に、株式売却の検討を一旦見送りましたが、一部売却の方針は維持されました。
- 2023年9月中旬: 帝人は、インフォコムとのシナジー効果を見出せなかったことから、保有するインフォコム株式の全部を売却する意向を表明しました。これに対し、インフォコムは、株式売却の意向は尊重するものの、上場廃止が企業価値に与える影響を懸念し、売却に関する協議には合意できないと回答しました。
- 2024年1月中旬: 帝人は、インフォコム買収に関する複数の「真摯な買収提案」を受け、入札プロセスを開始することを決定しました。
- 2024年2月下旬: 帝人は、野村證券を通じて、複数の企業に対して入札プロセスへの参加を打診し、ブラックストーンを含む複数の候補者を対象とした第一次入札プロセスを開始しました。
- 2024年3月下旬: 帝人は、第一次入札プロセスを通過した複数の候補者を選定し、第二次入札プロセスを開始しました。
- 2024年5月下旬: 帝人は、ブラックストーンを最終候補者として選定し、本公開買付けの実施に向けた協議を開始しました。
インフォコム側の動き
- 2023年10月初旬: インフォコムは、帝人の株式売却方針を受け、自社株買いによるMBO(経営陣による買収)の可能性を含めた検討を開始しました。
- 2023年11月上旬: インフォコムは、帝人に対し、自社株買いによるMBOを提案しましたが、帝人は、売却価格の最大化という観点から、この提案を拒否しました。
- 2024年2月28日: インフォコムは、帝人による入札プロセスの開始を受け、特別委員会を設置し、非公開化提案、企業価値向上策、自社株買いによるMBOの3つの選択肢について検討を開始しました。
- 2024年5月中旬: インフォコムは、帝人に対し、自社株買いによるMBOの最終提案を行いました。しかし、帝人は、ブラックストーンからの提案の方が有利であると判断し、この提案を拒否しました。
- 2024年5月下旬: インフォコムは、ブラックストーンからの最終提案内容を精査し、ブラックストーンを最終候補先として選択しました。その後、ブラックストーンと帝人との間で協議を重ね、最終的に本公開買付けの実施に至りました。
このように、帝人とインフォコムは、それぞれ異なる視点から検討を進め、最終的にブラックストーンによる公開買付けという形で合意に至りました。インフォコムは、ブラックストーンの支援の下、非公開化によって企業価値向上を目指します。
取引スキームの特徴点
買収スキーム
- 二段階買収
- 本公開買付けは、2段階のスキームで実施されます。まず、第一段階として、公開買付者が株式公開買付けを行います。
- 第二段階では、公開買付者が、第一段階の公開買付けでインフォコムの株式の全てを取得できなかった場合に、株式併合と単元株式数の定めの廃止を行います。これにより、公開買付者と帝人以外の株主は、強制的に株式を買い取られ、インフォコムは非公開会社となります。
- 資金提供と減資等
- 公開買付者は、インフォコムの完全子会社化後、帝人から自己株式を取得する予定です。
- 公開買付者は、この自己株式取得の資金をインフォコムに提供し、インフォコムは、この資金の一部を自己株式取得に充当します。
- また、公開買付者は、自己株式取得に必要な分配可能額を確保するために、インフォコムが減資を行うことを提案しています。
- 買付価格の決定方法
- 公開買付価格は、ブラックストーンが様々な企業に対して行ってきた提案活動の中で、インフォコムの成長性や収益性、BXとの協業の可能性を評価し決定されました。
- 自己株式取得価格については、帝人において法人税法上の「みなし配当の益金不算入規定」が適用される見込みであることを考慮し、少数株主への配分を多くすることで、公開買付価格の最大化と株主間の公平性の両立を図っています。具体的には、公開買付者が提示した公開買付価格1株当たり6,060円に対し、自己株式取得価格は1株当たり4,231円に設定されています。
- 公開買付者は、少数株主保護の観点から、市場株価や類似案件のプレミアムなどを参考に、価格の妥当性を検討しています。
LBOローンによる買収と財務負担
ブラックストーンは、インフォコム買収に必要な資金を、自己資金(エクイティ)約1,550億円とLBOローン(借入金)約800億円、そしてインフォコムの保有する現預金約400億円を合わせて調達する計画でした。
LBOローンとは、買収対象企業の資産やキャッシュフローを担保にした借入金です。買収後は、対象企業の収益を使って借入金を返済していくため、買収対象企業の財務負担が増大する可能性があります。
インフォコムは、LBOローンによる多額の借入金が、自社の財務状況に悪影響を及ぼさないか懸念していました。
事業分割に関して
インフォコムは、ネットビジネス事業とITサービス事業を一体で経営することにより、以下のようなシナジー効果を発揮し、企業価値を向上させてきました。
- 「B to C」のノウハウやIT人材の活用
- AIを活用したマーケティング
- 事業拡大のためのインフラの構築
- 優秀な人材の確保と交流
ブラックストーンによる買収後、これらの事業が分割される可能性がありました。事業分割によって、上記のようなシナジー効果が失われ、インフォコムの企業価値が毀損されることを、インフォコムは懸念していました。
この懸念に対し、ブラックストーンは、インフォコムの経営陣の同意なしに、買収完了後2年間は事業分割を行わないという合意書を締結しました。これにより、インフォコムは、少なくとも2年間は現在の事業体制を維持できることになり、事業分割によるシナジー効果の喪失というリスクが軽減されました。
また、ブラックストーンは、インフォコムの企業価値が向上した際には、株式を再上場させることを基本方針としています。このことから、ブラックストーンは、インフォコムの事業を長期的に成長させ、企業価値を高めることにコミットしていると解釈できます。
この懸念に対し、ブラックストーンは、インフォコムの経営陣の同意なしに、買収完了後2年間は事業分割を行わないという合意書を締結しました。
これにより、インフォコムは、少なくとも2年間は現在の事業体制を維持できることになり、事業分割によるシナジー効果の喪失というリスクが軽減されました。
リバースTSAに関して
本公開買付けにおけるTSAは、公開買付者であるBX、インフォコム、およびインフォコムの親会社である帝人の三社間で締結された「移行サービス契約(リバースTSA)」です。
通常TSAは、買収企業が売却企業からサービスの提供を受けるのに対し、リバースTSAは、売却企業が買収企業にサービスを提供するという点で通常のTSAとは異なります。
本公開買付けにおけるリバースTSAは、インフォコムが帝人グループに対して提供しているITサービス等に関して、以下の内容で合意しています。
- インフォコムによる帝人グループのITシステムの開発等に係るプロジェクトに関する各業務の継続遂行
- インフォコムによる帝人グループのITシステムの運用および保守に関する各業務の継続遂行
- インフォコムによる一定の資産についての帝人グループに対する利用等の許諾又は帝人グループが利用等するための必要な措置の実施等
取締役会の意見
インフォコムの取締役会は、ブラックストーンによる公開買付けに賛同し、株主に公開買付けへの応募を推奨する意見を表明しました。
取締役会は、公開買付価格が少数株主にとって公正かつ合理的であり、株主に合理的な株式売却の機会を提供するものと判断しました。
この判断は、以下の点に基づいています。
- 公開買付価格の妥当性
- 公開買付価格は、複数の候補者が参加した入札プロセスにおいて提示された中で最も高い価格であり、ブラックストーンが当初提示した価格よりもさらに引き上げられたものです。
- 独立した第三者算定機関であるBAPおよびPwCによる株式価値算定の結果とも比較検討し、市場株価平均法やDCF法による算定結果の範囲内であることを確認しています。
- 2024年3月8日の終値や過去1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の終値平均値と比較しても、相当程度のプレミアムが含まれています。
- 少数株主の利益保護
- 公開買付者は、公開買付期間を30営業日と、法定の最短期間である20営業日よりも長く設定し、株主に検討時間を十分に確保しています。
- また、対抗買付けを妨げるような合意は一切行っておらず、市場原理に基づいた公正な価格形成が期待できます。
- ブラックストーンの経営支援
- ブラックストーンは、豊富な資金、ノウハウ、グローバルネットワークを活用し、インフォコムの更なる成長を支援することが期待できます。
- インフォコムは、非公開化によって短期的な業績にとらわれず、中長期的な成長戦略を追求できる環境を構築できると考えています。
これらの点を総合的に考慮し、インフォコムの取締役会は、ブラックストーンによる公開買付けが、企業価値向上と株主の利益にとって最善の選択肢であると判断しました。
価格の算出方法
インフォコムは、独立した第三者算定機関であるBAP及びPwCに株式価値の算定を依頼しました。算定方法は、市場株価平均法とDCF法が用いられました。
DCF法
- 将来キャッシュフロー: インフォコムが作成した2025年3月期から2030年3月期までの事業計画に基づく財務予測をベースに、将来6年間のフリーキャッシュフローを予測しました。
- 割引率:
- BAP:ネットビジネス事業5.3%~6.3%、ITサービス事業5.8%~6.8%
- PwC:ネットビジネス事業6.7%~7.7%、ITサービス事業6.9%~7.9%
- 永久成長率:
- BAP:ネットビジネス事業0.0%~0.5%、ITサービス事業-0.25%~0.25%
- PwC:両事業とも1.5%
- 価格レンジ:
- BAP:4,943円~6,200円
- PwC:4,856円~5,708円
※ PwCが算定の基礎とした事業計画
市場株価平均法
- BAP
- 算定基準日:2024年3月8日(Mergermarketによる憶測報道により株価が影響を受けていないと考えられる日)
- 株式価値の範囲:2,185円~2,497円
- 算定根拠:東京証券取引所プライム市場における、2024年3月8日の終値、及び2024年3月8日までの過去1ヶ月間、3ヶ月間、6ヶ月間の終値単純平均値
- PwC
- 算定基準日1:2024年3月8日(Mergermarketによる憶測報道等により、当社株式の市場株価が影響を受けていないと考えられる日)
- 株式価値の範囲:2,185円~2,526円
- 算定根拠:東京証券取引所プライム市場における、2024年3月8日の終値、及び2024年3月8日までの過去1ヶ月間、3ヶ月間、6ヶ月間の終値単純平均値、出来高加重平均値
- 算定基準日2:2024年6月17日(本公開買付けの公表日の前営業日)
- 株式価値の範囲:2,993円~5,740円
- 算定根拠:東京証券取引所プライム市場における、2024年6月17日の終値、及び2024年6月17日までの過去1ヶ月間、3ヶ月間、6ヶ月間の終値単純平均値、出来高加重平均値
- 算定基準日1:2024年3月8日(Mergermarketによる憶測報道等により、当社株式の市場株価が影響を受けていないと考えられる日)
プレミアム
- Mergermarketによる憶測報道(2024年3月8日)以前の株価と比較して、同日株価に対して177.35%のプレミアム、過去1ヶ月間の終値単純平均値2,257円に対して168.50%、過去3ヶ月間の終値単純平均値2,374円に対して155.27%、過去6ヶ月間の終値単純平均値2,497円に対して142.69%のプレミアムがそれぞれ加えられています。
- また、最終的な公開買付価格6,060円は、2024年6月17日のインフォコム株の終値5,740円に対して5.57%、過去1ヶ月間の終値単純平均値4,903円に対して23.60%、過去3ヶ月間の終値単純平均値3,557円に対して70.37%、過去6ヶ月間の終値単純平均値2,993円に対して102.47%のプレミアムを加えた価格です
プレミアムに対する評価
公開買付価格は、市場株価平均法で算定された価格を大幅に上回るプレミアムが提示されています。これは、ブラックストーンがインフォコムの将来の成長性と収益性を高く評価していることの表れだと考えられます。また、公開買付価格がDCF法で算定された価格の上限もしくは中央値を上回っていることも、ブラックストーンがインフォコムの企業価値を高く評価していることを示唆しています。
経済産業省が公表した「公正なM&Aの在り方に関する指針-企業価値の向上と株主利益の確保に向けて-」(2019年6月28日)以降に公表され、2024年6月14日までに成立した、日本国内の上場企業の非公開化を目的とした他の公開買付け91件の平均プレミアムと比較しても、本公開買付けのプレミアムは相当程度高いと考えられます。
インフォコムの特別委員会は、これらの価格算定結果やプレミアムの水準などを総合的に検討し、公開買付価格が妥当であると判断しました。
買付価格決定までの過程
- ブラックストーンによる提案
- ブラックストーンは、2024年5月17日に帝人に対して、1株当たり5,570円でインフォコムの株式を公開買付けする提案を行いました。
- この価格は、提案日の前営業日である2024年5月16日のインフォコム株の終値3,730円に、49.33%のプレミアムを加えたものです。また、過去1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月の終値単純平均値と比べても、それぞれ85.54%、104.40%、116.73%のプレミアムが上乗せされていました。
- ブラックストーンによる価格引き上げ
- その後、ブラックストーンは、帝人との協議や本公開買付けによるインフォコムの中長期的な企業価値向上などを検討した結果、2024年5月30日に、公開買付価格を1株当たり6,060円に引き上げる提案を行いました。
- この価格改定は、ブラックストーンが、インフォコムの企業価値を高く評価していること、そして、本公開買付けを成功させたいという強い意志を示すものと解釈できます。
- 帝人との合意
- 帝人は、ブラックストーンが提示した1株当たり6,060円という公開買付価格を承諾し、2024年6月18日に本公開買付けを実施することで合意しました。
- 公開買付価格のプレミアム
- 最終的な公開買付価格6,060円は、2024年6月17日のインフォコム株の終値5,740円に対して5.57%、過去1ヶ月間の終値単純平均値4,903円に対して23.60%、過去3ヶ月間の終値単純平均値3,557円に対して70.37%、過去6ヶ月間の終値単純平均値2,993円に対して102.47%のプレミアムを加えた価格です。
- 特別委員会の評価
- インフォコムの特別委員会は、独立した第三者算定機関による株式価値算定の結果や、類似のM&A案件におけるプレミアムの水準などを参考に、ブラックストーンが提示した公開買付価格が妥当であると評価しました。
公正性担保措置の内容
入札手続きの実施
- 帝人は、インフォコムの株式売却にあたり、透明性と公正性を確保するため、複数の買い手候補者を対象に入札手続きを実施しました。
- ブラックストーンは、この入札手続きにおいて、他の候補者よりも優れた提案を行い、最終的な買収者として選定されました。
- このプロセスを通じて、インフォコムの株式が公正な価格で売却されることが期待されます。
- 独立した特別委員会の設置
- インフォコムは、取締役会とは独立した特別委員会を設置し、公開買付価格や手続きの公正性について検討を行いました。
- 特別委員会は、独立した専門家である法律事務所や財務アドバイザーの助言を得ながら、少数株主の利益を最大限に尊重するよう努めました。
- 特別委員会は、ブラックストーンが提示した公開買付価格が妥当であると判断し、取締役会に公開買付けへの賛同を推奨しました。
- 公開買付期間の長期化
- 公開買付者は、公開買付期間を法定の最短期間である20営業日よりも長い30営業日に設定しました。
- これにより、株主は、公開買付けについて検討する十分な時間を確保できるだけでなく、他の買い手候補者からの対抗提案を待つことも可能になります。
特に、本公開買付けにおいては、マジョリティ・オブ・マイノリティ(少数株主の過半数の賛同を得ることを公開買付けの成立条件とすること)条件は設定されていません。インフォコムは、この条件を設定すると公開買付けの成立が不安定になり、株主にとって不利になる可能性があると判断したためです。
また、マーケットチェック(市場における競争原理を活用して、株主にとって最も有利な条件を引き出すこと)に関しても、公開買付期間を長期化し、対抗買付けを妨げるような合意を結ばないことで、十分に配慮されていると考えられます。
これらの措置により、インフォコムの少数株主の利益が保護され、公正な価格で株式を売却する機会が確保されていると考えられます。
まとめ
インフォコムは、メディア事業とITサービス事業を2本柱として事業を展開しており、国内市場で確固たる地位を築いています。しかし近年、国内市場の競争激化や成長鈍化といった課題に直面しています。
こうした中、ブラックストーンは、インフォコムの持つポテンシャルに着目し、豊富な資金とノウハウ、グローバルネットワークを活用して、インフォコムの更なる成長を支援できると判断しました。非公開化によって、短期的な業績にとらわれず、中長期的な成長戦略を追求できる環境を構築し、意思決定の迅速化や柔軟な経営体制を実現できると考えられます。