この記事では、ニフティライフスタイル株式会社が2024年6月28日に発表した「事業計画及び成長可能性に関する事項」を解説します。
同社は、不動産テック、ウェルネステック、クロステックの3つの領域で事業を展開し、ライフスタイル市場において独自の地位を築いています。

本資料の注目ポイントは、ドアーズ社の買収によるリフォーム市場への参入です。これにより、同社は「住まい全般の支援」という新たな事業戦略を打ち出し、既存事業とのシナジー創出を目指しています。
また、財務面では、ドアーズ社の連結子会社化により、2025年3月期の売上高は期初予想を大幅に上回り、中期経営計画の目標を1年前倒しで達成する見通しであることも注目すべき点です。

この記事を読むことで、ニフティライフスタイルの事業内容、成長戦略、財務状況、そして今後の展望について深く理解することができます。ぜひ最後まで読んで、同社の未来を一緒に考えてみましょう。

概要

ニフティライフスタイルは、今回の資料で、M&Aによる事業拡大と既存事業の成長により、ライフスタイル市場での存在感を高めるという力強いメッセージを発信しています。
特に、ドアーズ社の買収によるリフォーム市場への参入は、同社の成長戦略における大きな転換点と言えるでしょう。しかし、競争の激しい市場環境の中で、これらの戦略がどこまで成功するかは未知数です。今後の動向に注目が必要です。

会社概要

ニフティライフスタイルの沿革は、1986年の株式会社エヌ・アイ・エフ(現富士通クラウドテクノロジーズ株式会社)の設立に始まります。1987年にはNIFTY-Serveサービスを開始し、1991年に社名をニフティ株式会社に変更しました。

その後、1999年に@niftyサービス、2000年にニフティ不動産、ニフティ求人サービス、2003年にはニフティ温泉サービスを開始するなど、インターネットサービス事業を拡大してきました。2008年にはDFOサービスを開始し、2014年にはオンライン内見サービスを開始しました。

2017年には、ニフティ株式会社が富士通クラウドテクノロジーズ株式会社とニフティ株式会社に分社化され、ニフティ株式会社はノジマグループの傘下に入りました。そして2018年2月23日、ニフティライフスタイル株式会社が設立されました。

2019年には株式会社Tryellを子会社化し、ニフティ株式会社からDFO事業を譲り受けました。2021年12月24日には、東証マザーズ市場(現グロース市場)に上場し、中期経営計画を開示、パーパスを策定し、配当を開始しました。

2023年9月には株式会社GiRAFFE & Co.を子会社化し、2024年4月には株式会社Tryellを吸収合併しました。そして2024年5月には株式会社ドアーズを子会社化し、現在に至ります。

対象企業が所属する市場の概要と競合状況

ニフティライフスタイルは、「ライフスタイル×テクノロジー」をテーマに、不動産テック、ウェルネステック、クロステックの3つの領域で事業を展開しています。

不動産テック領域

  • 市場規模: 不動産領域の市場規模は36兆円、不動産周辺領域・不動産テック領域の市場規模は28兆円と推定されています。
  • 競合: SUUMOやHOME'Sといった大手不動産ポータルサイトが主な競合です。
  • ニフティライフスタイルの強み: 1,300万件という膨大な物件情報数、独自の検索システムによるデータの高速処理、デジタルマーケティングのノウハウなどが強みです。これらの強みを活かし、物件情報の網羅性や検索機能の充実度で差別化を図っています。
  • ニフティライフスタイルのサービス:
    • ニフティ不動産: 賃貸・売買物件の検索プラットフォーム。物件情報やオンライン内見サービスなどを提供しています。
    • オンライン内見: 不動産物件の内見をオンラインで実施できるサービスです。
    • 外壁塗装の窓口: 2024年5月に子会社化した外壁塗装業者と顧客をマッチングするプラットフォームです。

ウェルネステック領域

  • 市場規模: 電子チケットサービスの潜在的市場規模は、ニフティ温泉の掲載施設数約17,000施設から推定すると、一定規模があると推察されます。
  • 競合: じゃらんや楽天トラベルなどの総合旅行予約サイトが主な競合です。
  • ニフティライフスタイルの強み: 16,950施設という国内最大級の掲載温浴施設数、月間386万ユーザーという豊富な会員基盤などが強みです。これらの強みを活かし、温浴施設に特化した情報やクーポンを提供することで、独自のポジションを確立しています。
  • ニフティライフスタイルのサービス:
    • ニフティ温泉: 温浴施設の検索・予約プラットフォーム。施設情報やクーポン、口コミなどを提供しています。
    • 電子チケットサービス: 温浴施設の事前決済サービスです。

クロステック領域

  • 競合: デジタルマーケティングエージェンシーやSEOコンサルティング会社などが主な競合です。
  • ニフティライフスタイルの強み: 不動産テックやウェルネステック領域で培ったノウハウや技術を活用したデジタルマーケティング支援が強みです。
  • ニフティライフスタイルのサービス:
    • DFO: データフィード最適化ツール。
    • SEOコンサルティング: 検索エンジン最適化コンサルティング。
    • 広告運用サービス: 広告運用代行サービス。

ニフティライフスタイルは、これらの3つの領域において、競合との差別化を図りながら、独自のサービスを提供することで、市場におけるプレゼンスを高めています。

事業概要

ニフティライフスタイルは、以下の3つの事業を柱としています。

不動産テック領域

  • ニフティ不動産: 賃貸・売買物件情報検索サービス。物件情報やオンライン内見サービスの提供、不動産事業者向けのDX支援サービス、不動産周辺領域の送客支援などを行います。
  • オンライン内見: 不動産物件の内見をオンラインで実施できるサービスです。
  • 外壁塗装の窓口: 2024年5月に子会社化した外壁塗装業者と顧客をマッチングするプラットフォームです。

ウェルネステック領域

  • ニフティ温泉: 温浴施設の検索・予約プラットフォームです。施設情報、クーポン、口コミなどを提供し、温浴施設と連携した広告プランの提案も行います。
  • 電子チケットサービス: 2024年1月に開始した温浴施設の事前決済サービスです。

クロステック領域

  • DFO(Data Feed Optimization): WEB広告入稿支援ツールです。商品データを最適な広告配信フォーマットに自動変換します。
  • SEOコンサルティング: 株式会社GiRAFFE & Co.が提供する、テクニカルSEOやWEBサイト解析などのデジタルマーケティングコンサルティングサービスです。
  • 広告運用サービス: データフィードのプロフェッショナルによる広告運用サービスです。
  • その他サービス: ニフティ求人など

これらのサービスを通じて、ニフティライフスタイルは、ユーザーの意思決定をサポートし、生活者の暮らしを豊かにすることを目指しています。

経営戦略

ニフティライフスタイルは、2024年3月期から2026年3月期までの3年間を対象とする中期経営計画において、以下の3つの柱を掲げています。

  1. 事業基盤の強化: 既存事業の着実な成長と新規事業の創出
  2. 事業拡大による収益源の多様化: M&Aやアライアンスの積極的な活用
  3. 新たな価値が生まれる組織環境整備: 人材採用・育成の強化

ニフティライフスタイルは、2024年3月期から2026年3月期までの3年間を対象とする中期経営計画を策定し、「既存事業の着実な成長」と「新規事業の創出」という2軸で成長戦略を推進しています。
3つの事業領域それぞれで、以下のような戦略を掲げています。

不動産テック領域

  • 事業戦略:「お部屋探しから住まい全般の支援へ」をスローガンに、賃貸・購入物件に加え、リフォーム(外壁塗装)領域へも進出し、事業を強化しています。
  • 具体的な施策:
    • 既存事業(お部屋探し)の強化:SEO施策の強化、アプリのUI/UX改善、不動産事業者向け送客支援の拡充など
    • 周辺領域(住まい全般)への展開:2024年5月に子会社化した「外壁塗装の窓口」を通じてリフォーム市場に参入し、顧客接点の獲得を目指しています。

ウェルネステック領域

  • 事業戦略:「温浴からウェルネス全般へ支援拡大」をスローガンに、既存事業の深化と新たな価値提供を目指しています。
  • 具体的な施策:
    • 既存事業の深化:クーポン送客、体験型広告、温浴施設向けビジネスの強化など
    • 新たな価値提供:美容や健康に関する支援領域への拡大、ブランディング強化など
    • 電子チケットサービスの普及・拡大:2024年1月に開始した温浴施設の事前決済サービス「電子チケット」の普及・拡大を通じて、顧客基盤の確立を目指しています。

クロステック領域

  • 事業戦略:「グループ第3の事業の柱の創出」を目標に、デジタルマーケティング支援サービスの強化と新規事業の創出を目指しています。
  • 具体的な施策:
    • デジタルマーケティング支援サービスの強化:SEOコンサルティング、DFO、広告運用サービスの拡充など
    • 新規事業の創出:ライフスタイル×テクノロジーの新たな可能性を追求し、新規事業の創出を目指しています。

中期経営計画の進捗と今後の展望

ニフティライフスタイルは、中期経営計画の初年度において、いくつかの成果を上げました。

  • 株式会社GiRAFFE & Co.の子会社化によるクロステック領域の拡大
  • ニフティ温泉における電子チケットサービスの開始

一方、不動産テック領域とウェルネステック領域におけるM&Aは実現していません。 しかし、M&Aやアライアンスを引き続き積極的に検討し、事業拡大を目指しています。

また、人材戦略にも注力しており、2024年4月には「人材組織開発部」を新設し、組織力の底上げと優秀な人材の確保を目指しています。

財務概要

ニフティライフスタイルの財務状況は、2024年3月期決算で売上高35億5900万円、営業利益9億3300万円と、共に過去最高を更新しました。特に営業利益は、集客効率の最適化により大幅に増加しています。2025年3月期の通期業績予想は、売上高47億6400万円、営業利益9億5800万円とさらなる成長を見込んでいます。

この大幅な売上高増加の背景には、2024年5月に子会社化した株式会社ドアーズの連結効果があります。ドアーズ社の連結により、売上高は期初予想を大幅に上回り、中期経営計画の目標を1年前倒しで達成できる見通しとなりました。

コスト面では、広告宣伝費をテレビCMからWEB動画の活用にシフトし、デジタル化を進めることでコスト削減を実現しています。また、SEO施策の実施効果により、オーガニック集客が改善し、販促コストの最適化にも成功しています。

クロスSWOT分析

強み(Strengths)

・国内最大級の不動産情報ポータルサイト「ニフティ不動産」の運営
・「ニフティ温泉」など、ライフスタイル領域での豊富なサービス展開
・デジタルマーケティング支援事業のノウハウと技術力

弱み(Weaknesses)

・主力の不動産テック事業への依存度が高い
・M&A後の統合プロセスや新規事業開発におけるノウハウ不足
・競争の激しい市場環境の中で、競合他社との差別化が難しい

機会(Opportunities)

・リフォーム市場の成長
・ウェルネス市場の拡大
・デジタルマーケティング市場の成長

脅威(Threats)

・競合他社の積極的な事業拡大
・消費者ニーズの多様化と変化
・技術革新のスピードが速く、常に最新の技術に対応していく必要がある

当該企業との考えられるシナジー

ニフティライフスタイルは、今回の子会社化を通じて、以下のようなシナジー効果を生み出すことができると考えられます。

  1. 顧客基盤の拡大: ニフティ不動産の利用者に対して、ドアーズ社の外壁塗装サービスを紹介することで、新たな顧客を獲得できます。
  2. サービスの相互送客: ニフティ不動産で物件を探している顧客に、ドアーズ社の外壁塗装サービスを紹介したり、逆に、ドアーズ社の外壁塗装サービスを利用した顧客に、ニフティ不動産の物件を紹介したりすることで、相互送客を促進できます。
  3. データの活用: ニフティ不動産とドアーズ社の顧客データを統合・分析することで、よりパーソナライズされたサービスを提供できます。
  4. ブランド力の向上: ニフティライフスタイルのブランド力とドアーズ社の専門性を組み合わせることで、より信頼性の高いサービスを提供できます。

まとめ

ニフティライフスタイルは、今回のM&Aにより、リフォーム市場という新たな成長領域に踏み出しました。既存事業とのシナジー創出やデジタルマーケティングの活用など、今後の成長戦略に注目が集まります。しかし、競争の激しい市場環境の中で、これらの戦略がどこまで成功するかは未知数であり、今後の動向を注視していく必要があります。