この記事は、株式会社ファブリカホールディングスの2024年3月期決算説明資料をまとめたものです。同社は、SMS配信サービスや中古車販売事業者向けの業務支援サービスなどを主力事業としており、テクノロジーで社会の課題を解決することをミッションとしています。
2024年3月期の業績は、売上高が過去最高を更新したものの、成長投資の実施により減益となりました。しかし、主力事業の成長は堅調であり、2025年3月期は増収増益を見込んでいます。同社は、主力事業の強化に加え、BtoBのSaaS型ビジネスの展開やAI・ブロックチェーン技術への投資にも注力しており、今後の成長が期待されます。
後段では、同社のM&Aや資本業務提携のアイデアについても考えます。
概要
ファブリカホールディングスは、SMS配信サービスと中古車販売事業者向け業務支援サービスというニッチな市場で確固たる地位を築いています。テクノロジーを活用した課題解決というミッションを掲げ、既存事業の成長に加え、新たなBtoB SaaS事業やAI・ブロックチェーン技術への投資など、積極的に事業を拡大しています。
一方、2024年3月期は成長投資の影響で減益となりましたが、これは将来の成長に向けた戦略的な投資と捉えることができます。2025年3月期は増収増益を見込んでおり、今後の成長戦略が注目されます。
会社概要
- 社名: 株式会社ファブリカホールディングス
- 設立: 1994年11月
- 本社所在地: 東京都港区赤坂
- 従業員数: 193名(2024年3月末時点、連結、就業人員)
- 事業内容:
- 業務支援システム開発・販売事業(SMS配信ソリューション、中古車販売業務支援クラウドサービスなど)
- インターネットメディア事業
- WEBマーケティング事業
- 自動車整備・レンタカー事業
- ブロックチェーンおよびAI関連事業
対象市場
SMSソリューショングループ
- 市場規模:
- 国内のSMS送信サービス市場は成長市場であり、2028年には約100億通の市場規模が見込まれています。
- 国内アグリゲーターの2023年から2028年の配信数CAGR(年平均成長率)は26.4%と推定されています。
- 北米のA2P-SMS市場規模は約8,821億円であり、日本の約40倍の市場規模があります。
- 競合状況:
- 国内法人向けのSMS配信数でシェアNo.1を継続しています。
- 「業務連絡」「督促」「事前通知」などの用途で強みを持っています。
U-CARソリューショングループ
- 市場規模:
- 自動車アフターマーケット市場は約20兆827億円の巨大市場です。
- 中古車販売店は近年増加傾向にあります。
- 競合状況:
- 2030年度に中古車販売事業者10,000社への導入を目指しており、現在の導入社数は4,036社です。
- 「symphony」は中小規模の中古車販売店に特化した機能と利用料を設定しており、競争優位性を築いています。
事業概要
SMSソリューショングループ
- メディアSMS: 法人向けのSMS送信サービスで、企業が顧客にSMSを送受信できるプラットフォームを提供しています。
- 主な活用事例: 車検満期案内、リコール通知、リクルート、ログイン促進、契約満期更新、商品入荷通知、予約リマインド、緊急連絡、業務連絡、挨拶SMS、本人認証、督促・徴税、プロモーションなど。
- 強み:
- 国内法人向けに特化した営業戦略
- 大規模なSMS配信を行う大手企業だけでなく、地方や中小規模の企業にも対応可能
- 長文SMSサービスの提供やコンサルティング営業のノウハウ
U-CARソリューショングループ
- symphony: 中古車販売業務支援クラウドサービスで、中古車販売に必要な情報を一元管理できます。
- 主な機能: スマート仕入登録、中古車販売に特化した広告配信プラットフォーム、在庫管理、顧客管理、販売管理、保証・保険、車検、メンテナンスなど
- 強み:
- 中小規模の中古車販売店が導入しやすい機能と利用料
- スマート仕入登録による入力業務工数の大幅削減
- 10サイト以上のWEBメディアへのワンクリック広告掲載
その他の事業
- インターネットサービスグループ: SMSソリューション事業、U-CARソリューション事業の集客支援や独自のサービスを提供
- オートサービスグループ: 事故車の修理やレンタカー貸出、車検・整備事業
経営戦略
- コアビジネスのプロダクト強化および提供価値の向上:
- SMSソリューショングループ: 差別化戦略で市場を牽引
- U-CARソリューショングループ: コストリーダーシップ戦略で顧客基盤を構築
- BtoB×SaaS型のビジネス展開による企業のデジタル化の推進: M&Aも視野に入れ、戦略的な案件を厳選
- 人工知能(AI)やブロックチェーンの研究開発への先行投資: Generative AI活用推進や大規模言語モデル(LLM)などの研究開発
財務概要
2024年3月期(実績)
- 売上高: 81億6,200万円(前期比+7.4%)
- 営業利益: 10億7,000万円(前期比-16.5%)
- 経常利益: 10億8,700万円(前期比-13.8%)
- 親会社株主に帰属する当期純利益: 6億7,300万円(前期比-16.9%)
2025年3月期(見込み)
- 売上高: 87億円(前期比+6.6%)
- 営業利益: 11億円(前期比+2.7%)
- 経常利益: 11億円(前期比+1.2%)
- 親会社株主に帰属する当期純利益: 7億円(前期比+3.9%)
クロスSWOT分析
強み(Strengths)
- SMS配信サービスで国内シェアNo.1
- 中古車販売事業者向け業務支援サービスで競争優位性
- BtoB SaaS事業やAI・ブロックチェーン技術など、新たな事業領域への積極的な投資
- インターネットサービス事業を通じたグループシナジー創出
- 安定した財務基盤
弱み(Weaknesses)
- 特定の業界に依存している
- 海外展開に積極的でない
- 人材不足
機会(Opportunities)
- SMS送信サービス市場は成長市場であり、2028年には約100億通の市場規模が見込まれる
- 自動車アフターマーケット市場は約20兆円の巨大市場であり、中古車販売店は増加傾向にある
- 企業のDX投資需要の高まり
- BtoB SaaS型ビジネスの展開による企業のデジタル化推進の需要増加
脅威(Threats)
- SMS市場は競争が激化しており、価格競争に陥る可能性がある
- 中古車販売事業者向けの業務支援サービス市場も競争が激化しており、新たな競合が登場する可能性がある
- 技術革新のスピードが速く、常に最新の技術に対応していく必要がある
- 個人情報保護やセキュリティ対策に対する要求が高まっており、万が一の事態が発生した場合、企業の信頼を失墜するリスクがある
考えられる潜在的な競合とのシナジー
- SMSソリューショングループ
- 他社SMS配信プラットフォーム: 連携により、配信可能顧客層の拡大や機能拡充などが期待できます。
- MAツールベンダー: SMS配信機能をMAツールに組み込むことで、顧客接点を強化できます。
- SFA/CRMベンダー: SMSを活用した営業活動支援や顧客管理ソリューションを共同開発できます。
- 決済代行事業者: SMSを活用した決済通知や本人認証サービスを連携できます。
- U-CARソリューショングループ
- 中古車オークション事業者: 在庫情報連携やオークションシステムとの連携により、効率的な仕入れを支援できます。
- 自動車整備事業者: symphonyとの連携による顧客管理や整備履歴管理の効率化が可能です。
- 自動車保険会社: symphony上で保険商品の販売や契約管理を行うことで、顧客接点を拡大できます。
- 自動車ローン会社: symphony上でローン商品の比較検討や申し込みを可能にし、販売促進につなげられます。
- AI・ブロックチェーン事業
- AI開発企業: 技術提携や共同研究により、AIモデルの精度向上や新たなAIサービス開発を加速できます。
- ブロックチェーン開発企業: ブロックチェーン技術を活用した新規事業開発や共同でのプラットフォーム構築が可能です。
これらのシナジーはあくまで一例であり、ファブリカホールディングスの技術や事業基盤と親和性の高い様々な企業との連携が考えられます。
考えられるM&Aや資本業務提携のアイデア
ファブリカHDが買収企業となる場合
- SMS配信事業の強化
- 株式会社空電プッシュ: 地方自治体や中小企業へのSMS配信に強みを持つ。ファブリカHDの顧客基盤と組み合わせることで、全国展開を加速できる。
- 株式会社SMSデータテック: AIを活用したSMSマーケティングツールを開発しており、ファブリカHDのSMS配信サービスの機能強化に貢献できる。
- 株式会社トレタ(飲食店向け予約管理システム「トレタ」): SMS配信機能を連携させることで、予約リマインドやキャンペーン通知などの顧客接点を強化できる。
- 株式会社SmartHR(労務管理システム): 従業員への緊急連絡や情報共有手段としてSMSを活用するサービスを共同開発できる。
- U-CARソリューショングループ事業の強化
- 株式会社Ancar(中古車個人間取引プラットフォーム「Ancar」): symphonyの個人向け提供や、個人間取引における安全な決済・契約システムの開発などで連携できる。
- 株式会社ブロードリーフ(整備工場向け業務管理システム「PitTouch Pro」): symphonyとの連携により、整備履歴や顧客情報を一元管理し、業務効率化を図れる。
- 株式会社講談社ビーシー(自動車雑誌「ベストカー」): 雑誌やWebメディアでのsymphonyの露出を増やし、認知度向上と導入促進につなげられる。
- 新規事業領域への進出
- 株式会社BEDORE(AIチャットボット「hachidori」): AIチャットボットを活用した顧客対応自動化により、業務効率化と顧客満足度向上を実現できる。
- 弁護士ドットコム株式会社(電子契約プラットフォーム「CloudSign」): ブロックチェーン技術を活用した契約プラットフォームを共同開発し、不動産取引や中古車売買の効率化・透明性向上に貢献できる。
ファブリカHDが買収対象となる場合
- サイボウズ株式会社: ファブリカHDのSMS配信技術や顧客基盤を自社のグループウェア製品に組み込み、顧客接点強化や新サービス展開を図る狙い。
- KDDI株式会社: SMS配信サービスの基盤技術や顧客基盤を獲得し、法人向けサービスを拡充する狙い。
- Zホールディングス株式会社: 広告・メディア事業との連携や、傘下のヤフー株式会社が提供するサービスとの連携によるシナジー創出を狙う。
- 株式会社NTTドコモ: 通信事業との連携によるSMS配信サービスの安定化・強化、法人向けソリューションの共同開発などを狙う。
これらの企業は、ファブリカHDの事業とのシナジーが見込めるだけでなく、資金力や事業規模も大きく、買収や資本業務提携を通じて、ファブリカHDの企業価値を大きく向上させる可能性があります。