ユナイテッド株式会社の成長戦略と今後の展望
この記事では、ユナイテッド株式会社の2024年3月期決算説明資料をもとに、同社の事業概要、市場環境、成長戦略、財務状況などを総合的に解説します。IT人材不足やスタートアップの資金調達ニーズの高まりといった社会課題を背景に、同社がどのように事業を展開し、成長を目指しているのかを理解できます。今後の展望やリスクにも触れ、投資家やビジネスパーソンにとって有益な情報が得られます。
後段では、同社のM&Aや資本業務提携のアイデアについても考えます。
概要: ユナイテッド株式会社の成長戦略と今後の展望
ユナイテッド株式会社は、デジタル人材の育成やスタートアップへの投資を通じて、日本のデジタル化を推進しています。2024年3月期は減収減益となりましたが、これは投資事業における有価証券売却の抑制やアドテク事業での広告出稿量の低下によるものです。
しかし、2025年3月期には投資規模の拡大やデータ・AI領域への注力など、新たな成長戦略を打ち出しています。M&Aや戦略的出資を通じた事業領域の拡大も積極的に行っており、今後の成長が期待できる企業です。
会社概要
ユナイテッド株式会社は、東京証券取引所グロース市場に上場している企業です。2024年3月期の連結売上高は125億7300万円、営業利益は48億5900万円でした。事業セグメントは、「投資事業」「教育事業」「人材マッチング事業」「アドテク・コンテンツ事業」の4つで構成されています。
対象市場・競合状況
投資事業: スタートアップ投資市場は、政府の「スタートアップ育成5カ年計画」などにより拡大傾向にあります。競合は他のベンチャーキャピタルや投資ファンドなどです。ユナイテッド株式会社は、広範なスタートアップへのリーチと自己資金による投資実行を強みとしています。
教育事業: 2030年には約80万人のデジタル人材不足が予測されており、デジタル人材育成のニーズは高まっています。競合は他のプログラミングスクールやオンライン学習プラットフォームなどです。ユナイテッド株式会社は、質の高いメンターによる指導や実践的なスキルの習得を強みとしています。
人材マッチング事業: 働き方改革やリモートワークの浸透により、副業/フリーランス人口が増加しており、人材マッチングサービスの需要も高まっています。競合は他の転職エージェントやフリーランスプラットフォームなどです。ユナイテッド株式会社は、多様な働き方での就労機会の提供やキャリアに適したスキルアップ・経験の機会を創出することを強みとしています。
アドテク・コンテンツ事業: インターネット広告市場は競争が激化しており、広告技術の進化や広告規制の変化に対応していく必要があります。競合は他のアドテク企業やコンテンツプロバイダーなどです。ユナイテッド株式会社は、メディア向け広告最適化プロダクト(SSP)や広告主向け広告最適化プロダクト(DSP)などを提供しています。
事業概要
投資事業: シード~アーリーステージのスタートアップ企業に投資し、資金とノウハウを提供することで、事業の成功確率を高めることを目指しています。2024年3月期末時点での累計投資金額は約72億円、売却益は含み益と合わせて約534億円に達しています。
教育事業: オンラインプログラミングスクール「テックアカデミー」や法人向けオンライン研修などを提供し、デジタル人材の育成を支援しています。2025年3月期には、データ・AI領域に注力し、黒字化を目指しています。
人材マッチング事業: 副業/フリーランス人材と成長企業のマッチングプラットフォーム「Kasooku」や、人事特化型マッチング事業「Carry Up」などを運営しています。2025年3月期には、正社員採用の対応を強化し、収益基盤の構築を目指しています。
アドテク・コンテンツ事業: メディア向け広告最適化プロダクト(SSP)や広告主向け広告最適化プロダクト(DSP)などを提供しています。また、オンラインくじサービスやクラウド型会員管理サービスなども提供しています。
経営戦略
ユナイテッド株式会社は、「意志ある人を、知恵と機会で、意志ある事業を、資金とノウハウで支援する」というパーパスを掲げ、社会課題の解決に貢献することを目指しています。
投資事業: 投資規模の拡大、リード投資家としての投資実行・ハンズオン支援の強化、データ・AI領域への注力などを進めています。
教育事業: データ・AI領域への注力、運営体制の効率化による収益性改善、黒字化を目指しています。
人材マッチング事業: 人材紹介(正社員採用)への注力、中期的な成長に向けた先行投資の継続を計画しています。
アドテク・コンテンツ事業: 各社個別の戦略により、継続的な利益創出を目指しています。
財務概要
2024年3月期の連結売上高は125億7300万円(前期比4.3%減)、営業利益は48億5900万円(同16.6%減)となりました。2025年3月期は、売上高94億円~103億円、営業利益20億円~25億円を見込んでいます。
クロスSWOT分析
強み(Strengths)
- 広範なスタートアップへのリーチ
- 自己資金での投資実行
- 質の高いメンターによる指導
- 実践的なスキルの習得
弱み(Weaknesses)
- 2024年3月期は減収減益
- 投資事業の収益変動リスク
- 教育事業の競争激化
- アドテク事業の市場環境変化リスク
機会(Opportunities)
- デジタル人材不足
- スタートアップ投資市場の拡大
- 副業/フリーランス人口の増加
- インターネット広告市場の成長
脅威(Threats)
- 新技術の普及による既存事業の陳腐化
- 投資先の業績低迷
- インターネット市場における法規制導入等による市場全体の停滞
考えられる競合や他企業とのシナジー
ユナイテッド株式会社は、自社の事業領域である投資事業、教育事業、人材マッチング事業、アドテク・コンテンツ事業において、他社との連携を強化することで、さらなる成長を目指しています。
例えば、投資事業で出資したスタートアップ企業に対して、教育事業で育成したデジタル人材を紹介したり、人材マッチング事業を通じて企業の成長を支援したりするなど、シナジー効果が期待できます。
考えられるM&Aや資本業務提携のアイデア
ユナイテッド株式会社が「買収企業」になる場合
- データ分析・AI開発企業の買収: 教育事業のデータ・AI領域への注力を加速するため、データ分析やAI開発に強みを持つ企業を買収する。例えば、AIによる学習効果測定ツールを開発している企業や、教育データの分析・活用を得意とする企業などが挙げられます。
- 具体例: データ分析ツールを提供している「株式会社ALBERT」や、AI教材を開発している「atama plus株式会社」
- 人材紹介・派遣企業の買収: 人材マッチング事業の人材紹介(正社員採用)への注力を強化するため、人材紹介や派遣事業を展開している企業を買収する。特に、ITエンジニアやデジタルマーケターなど、デジタル人材に特化した企業が候補となります。
- 具体例: ITエンジニアに特化した人材紹介サービス「レバテック」を運営する「レバテック株式会社」や、クリエイター専門の人材紹介サービス「マイナビクリエイター」を運営する「株式会社マイナビ」
- コンテンツ制作企業の買収: アドテク・コンテンツ事業のコンテンツ事業を強化するため、Webメディアや動画コンテンツなどを制作している企業を買収する。特に、若年層や特定の趣味・関心を持つ層にリーチできるコンテンツを持つ企業が魅力的です。
- 具体例: 若年層向けWebメディア「ハウコレ」を運営する「株式会社Wondershake」や、アニメ・ゲーム関連のニュースサイト「アニメ!アニメ!」を運営する「株式会社イード」
ユナイテッド株式会社が「対象企業」になる場合
- 大手IT企業による買収: ユナイテッド株式会社のデジタル人材育成事業やスタートアップ投資事業は、大手IT企業にとって魅力的な資産となり得ます。大手IT企業の傘下に入ることで、資金調達や事業提携の機会が拡大し、さらなる成長が期待できます。
- 具体例: 「株式会社NTTデータ」や「SCSK株式会社」といったシステムインテグレーター
まとめ
ユナイテッド株式会社は、デジタル化社会における様々な課題を解決するために、多岐にわたる事業を展開しています。2024年3月期は減収減益となりましたが、2025年3月期には新たな成長戦略を打ち出し、今後の成長が期待されます。M&Aや戦略的出資を通じた事業領域の拡大も積極的に行っており、今後も目が離せない企業です。