株式会社テンポスホールディングスは、中古厨房機器販売を主力事業としつつ、飲食店の開業から経営までを総合的に支援する企業です。飲食業界は、新型コロナウイルス感染症の影響からの回復途上にあり、中小飲食店を中心に集客や人材確保などの課題を抱えています。

本記事は、2024年4月期の通期決算説明資料をもとに、同社の事業内容、経営戦略、財務状況などを把握することができます。資料からは、同社が中古厨房機器販売事業で国内最大手としての地位を確立していること、また、飲食店支援事業に注力し、飲食店の開業から経営までを総合的にサポートする体制を構築していることなどが読み取れます。

株式会社テンポスホールディングスの概要

会社概要

株式会社テンポスホールディングスは、1997年に設立され、中古厨房機器販売を主力事業としつつ、飲食店の開業から経営までを総合的に支援する企業です。東京証券取引所スタンダード市場に上場しており(証券コード2751)、2023年9月末には年商約70億円の飲食企業であるヤマトサカナ株式会社を買収しています。

対象市場・競合状況

中古厨房機器販売事業においては国内最大手であり、1強100弱の圧倒的なシェアを誇ります。競合は中小企業が中心です。飲食店経営支援事業においては競合が多いですが、中古厨房機器販売事業で培った顧客基盤とノウハウを活かして独自のサービスを提供することで差別化を図っています。

事業概要

同社の事業は、物販事業、情報・サービス事業、飲食事業の3つのセグメントで構成されています。

  1. 物販事業:
    • 中古厨房機器の販売を主力とする事業です。
    • テンポスバスターズ、テンポスドットコム、キッチンテクノの3社が事業を展開しています。
    • 2024年4月期の売上高は242億4100万円、営業利益は25億500万円でした。
  2. 情報・サービス事業:
    • 飲食店の開業・経営を支援するサービスを提供する事業です。
    • スタジオテンポス、テンポス情報館、テンポスフィナンシャルトラスト、ディースパーク、テンポスフードプレイスの5社が事業を展開しています。
    • 2024年4月期の売上高は41億3700万円、営業利益は2億800万円でした。
  3. 飲食事業:
    • ステーキレストラン「あさくま」や回転寿司「やまと寿司」などを運営しています。
    • あさくまグループとヤマトサカナの2社が事業を展開しています。
    • 2024年4月期の売上高は94億9400万円、営業利益は2億3100万円でした。

経営戦略

同社の経営戦略は、「Dr.テンポス」と称する飲食店経営支援サービスを中核に据え、以下の3つの柱で構成されています。

  1. 出店拡大: テンポスバスターズの店舗数を現在の67店舗から120店舗に倍増させる計画です。
  2. 全国メンテナンス網戦略: 中古厨房機器の修理・再生拠点を全国に拡大し、顧客との接点を増やすことで、新たなサービス提供や商品の販売につなげる戦略です。
  3. 従業員の育成: 社員の研修制度を充実させ、専門知識やスキルを向上させることで、顧客へのサービス品質を高める戦略です。

財務概要

2024年4月期の連結業績は、売上高370億7400万円(前期比118.5%増)、営業利益28億2400万円(前期比127.2%増)、経常利益30億6900万円(前期比132.8%増)、親会社株主に帰属する当期純利益19億7200万円(前期比138.2%増)と大幅な増収増益を達成しました。

2025年4月期の連結業績予想は、売上高467億円(前期比26.0%増)、営業利益36億6000万円(前期比29.6%増)、経常利益38億5000万円(前期比25.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益24億7000万円(前期比25.4%増)と引き続き増収増益を見込んでいます。

まとめ

テンポスホールディングスは、中古厨房機器販売事業で確固たる地位を築き、その強みを活かして飲食店経営支援事業を多角的に展開しています。2024年4月期は大幅な増収増益を達成し、2025年4月期も引き続き成長が見込まれています。

今後の成長戦略として、テンポスバスターズの更なる出店拡大、全国メンテナンス網の構築、従業員育成などが挙げられます。これらの戦略を成功させることで、同社は「飲食店の5年後の生存率を45%から90%にする」という目標を達成し、持続的な成長を遂げることが期待されます。

テンポスホールディングスが買収企業となるM&Aや資本業務提携のアイデアを検討するにあたっては、同社の強みである中古厨房機器販売事業とシナジーが見込めること、また、飲食店経営支援事業の成長戦略に合致することが重要です。

テンポスホールディングスのM&Aの活用

  1. 事業拡大: 2023年9月末に、魚介類の買参権を持ち、外食・卸売り・観光・小売事業を展開するヤマトサカナ株式会社を買収しました。これにより、飲食事業を強化し、新たな収益源を確保しています。
  2. 店舗網の拡大: 中古厨房機器販売事業において、全国の中古厨房機器販売企業を買収または資本業務提携することで、店舗網を拡大し、市場シェアをさらに高めることを目指しています。
  3. 新技術・ノウハウの獲得: 飲食店向けPOSシステム開発会社や飲食店向けコンサルティング会社を買収することで、新たな技術やノウハウを獲得し、既存事業とのシナジー効果を生み出すことを目指しています。

これらのM&Aを通じて、テンポスホールディングスは事業の多角化と成長を加速させています。

考えられるM&Aや資本業務提携のアイデア

買収企業となり得るM&Aや資本業務提携のアイデア

  1. 地方の中小厨房機器販売業者を買収:
    • シナジー: テンポスバスターズの店舗網を地方に拡大し、中古厨房機器販売事業のシェアをさらに拡大することができます。地方の中小厨房機器販売業者は、地域に密着した営業活動を行っていることが多く、テンポスバスターズにとっては、新たな顧客獲得や既存顧客との関係強化につながることが期待できます。
    • 具体的な企業名: 厨房屋(北海道)、厨房市場(東北)、厨房魂(北陸)、厨房本舗(中部)、厨房キング(関西)、厨房侍(中国)、厨房道(四国)、厨房一番(九州)など、地域に根差した中小厨房機器販売業者が考えられます。
  2. 飲食店向けPOSシステム開発会社を買収:
    • シナジー: テンポス情報館が提供するPOSレジ販売事業とのシナジーが見込めます。POSシステム開発会社を買収することで、自社開発のPOSシステムを開発・提供できるようになり、顧客ニーズに合わせた機能やサービスを提供することが可能になります。また、POSシステムの販売だけでなく、導入支援や保守・メンテナンスなどのサービスも提供することで、顧客との関係を強化し、収益拡大につなげることが期待できます。
    • 具体的な企業名: 株式会社ユビレジ、株式会社トレタ、株式会社エビソルなど、飲食店向けPOSシステム開発会社が考えられます。
  3. 飲食店向けコンサルティング会社を買収:
    • シナジー: Dr.テンポスと称する飲食店経営支援サービスとのシナジーが見込めます。飲食店向けコンサルティング会社を買収することで、より専門性の高いコンサルティングサービスを提供できるようになり、顧客の経営課題解決に貢献することができます。また、コンサルティングサービスを通じて、テンポスグループの他のサービスや商品のクロスセルにつなげることも期待できます。
    • 提携先: 株式会社船井総合研究所、株式会社飲食店繁盛会、株式会社フードビジネス総合研究所など、飲食店向けコンサルティング会社が考えられます。

対象企業となり得るM&Aや資本業務提携のアイデア

  1. 大手飲食チェーンとの資本業務提携:
    • シナジー: 大手飲食チェーンとの提携により、テンポスグループの認知度向上や、中古厨房機器の安定的な仕入れが見込めます。また、大手飲食チェーンの店舗運営ノウハウを学ぶことで、テンポスグループの飲食事業の強化にもつながることが期待できます。
    • 提携先: 株式会社ワタミ、株式会社コロワイド、株式会社すかいらーくホールディングスなど、全国展開している大手飲食チェーンが考えられます。
  2. ECサイト運営会社との資本業務提携:
    • シナジー: テンポスドットコムの運営ノウハウを持つECサイト運営会社との提携により、テンポスドットコムの更なる成長が期待できます。ECサイト運営会社は、Webマーケティングや物流などのノウハウを有しており、テンポスドットコムの課題解決に貢献することができます。
    • 提携先: 株式会社楽天、Amazon Japan合同会社、ヤフー株式会社など、ECサイト運営会社が考えられます。
  3. 食材卸売会社との資本業務提携:
    • シナジー: ヤマトサカナ株式会社との連携を強化し、食材の仕入れコスト削減や、新たな食材の仕入れルートの開拓につなげることが期待できます。また、食材卸売会社が持つ飲食店とのネットワークを活用することで、テンポスグループのサービスや商品の販路拡大にもつながります。
    • 提携先: 株式会社国分グループ本社、三菱食品株式会社、株式会社加藤産業など、大手食材卸売会社が考えられます。