- 海外に目を向けると事業成長のポテンシャルが非常に大きいことを理解する
- 各国において、越境EC市場規模、スマホ・EC普及率などが大きく異なり、展開アプローチが異なることを理解する
はじめに:なぜ今、世界の越境ECポテンシャルに注目すべきか
日本国内のEC市場は、CAGR(2023年-2033年)で7.5%*1と依然として成長段階にあり、スマホの普及率は85.3%、EC利用人口は83.8%と日本企業にとって、引き続き有望なメイン市場であることは間違いありません。一方で、今後の情勢として、人口減少と少子高齢化が進むことで、成長の鈍化が避けられない状況にあります。各国の成長率と比較すると、アジア太平洋のB2C EC市場規模成長率はCAGR(2023年-2033年)で8%*1と日本以上に成長し、越境ECのCAGR(2023年-2033年)は10%*1と日本市場を大きく超える成長を遂げています。
前記事の通り、越境ECの難易度が非常に高い中で、この成長市場に早期参入できるかどうかが競争力となり、企業の命運を左右すると言っても過言ではありません。
本記事は、越境ECのポテンシャルを肌身で感じていただきたく、世界のEC市場全体を俯瞰し、具体的な市場データに基づいたポテンシャルを解説します。
この記事を通じて、「なんとなく大きい」と思っていた越境EC市場のポテンシャルを、具体的でかつ魅力的な事業機会として捉えらられるようになっていただけると嬉しいです。
*1. Statistaデータを活用
世界のEC市場と越境ECの現状
世界のEC市場は、パンデミックを契機としたデジタルシフトの加速により、今も力強い成長を続けています。2023年度には、その市場規模は6兆3,433億ドル(日本円で約920兆円、1ドル145円換算)に達し、年平均成長率(CAGR)8.3%という驚異的なペースで拡大しています。この成長は、決して遠い国の話ではありません。なぜなら、世界のEC市場の成長が、越境EC市場の拡大に直結しているからです。
越境ECの普及に伴い、消費者にとって海外から直接商品を購入することへの抵抗感は薄れてきています。
日本の物販EC市場規模は、中国、アメリカに次いで世界第3位に位置しており、世界的に見ても大きな市場です。しかし、その規模は世界のEC市場全体と比較すると4%程度と小さく、今後も拡大が見込まれるグローバル市場に目を向けることでより大きな市場への挑戦をしていくことが可能になります。
市場が大きい世界の中でも、越境EC化率が高いのは、北米や欧州です。北米では約20%が、欧州では約25%が越境ECの市場になっており、成長率も高いのが特徴です。
近年、アメリカでは「デミニマス関税」の撤廃が話題となり、800ドル(約11.6万円)以下の少額商品にも最大15%の関税がかかるようになりました。そのため、一時的に越境ECは苦境に立たされるかもしれません。今後、欧州などでも関税規制が変更になる可能性はゼロではありません。しかし、中長期で見れば、これらの市場は依然として高い消費能力とECへの親和性を持ち、成長が期待されます。
地理的な近さと文化的な親和性、そして市場の大きさを考慮すると、アジア太平洋市場は越境ECの最初の選択肢になります。例えば、中国、台湾、香港は文化的にも日本文化が浸透しやすい傾向にあり、地理的にも視察等にいきやすいため、最初に展開するにはおすすめです。
一方で、市場の大きさや消費ポテンシャルを考慮すると、北米や欧州に目線を向けた事業推進が、将来的な成功にとって非常に重要になります。将来的な展開国数を見据えた事業ロードマップ策定と実行体制構築が重要になります。

各国のスマホ・EC普及率から市場の成熟度を測る
次に、越境EC市場をさらに理解するために、越境ECを届けるために必須となる各国のスマホ・EC普及率を見ていきましょう。
下記のデータを見ると、世界主要国のEC市場の成熟度が明確に浮かび上がってきます。多くの国でスマートフォンの普及率は85%を超えており、EC利用率も平均して70〜80%に達しています。これは、ECがもはや特別なものではなく、世界各国で広く受け入れられていることを示しています。
さらに、注目すべきは成長率(CAGR)です。各国のEC市場は年間5%以上の成長を続けていますが、特にアジアの先進国やEUでは、EC自体の成長率は他国に比べて相対的に低くなっています。これは、これらの市場がすでに成熟段階にあるためです。しかし、これは越境ECが成長していないことを意味するものではなく、越境EC自体は依然として右肩上がりの成長を続けています。
最もEC市場が成長しているのは東南アジア諸国です。この地域では、人口増加に加え、モバイル決済インフラの普及に伴い、ECの成長が顕著になっています。東南アジアの「Amazon」とも称されるLazadaのようなプラットフォームを通じての越境販売も、日本企業の間で徐々に浸透しており、大きなチャンスが拡大しているのです。
一つ興味深い話で、実はアジアの中でも香港のEC普及率は他アジア諸国と比べると低いものになっています。香港は街が小さな土地の中に集中しており、少し歩くとなんでも購入できるという土地柄からこれまでECの普及が遅れていたのです。ただ、現在はECが普及しており、非常に高い成長率で成長しています。さらに香港はなんと、関税がかからないという特別区域であり、越境チャンスの大きい国なのです。
主要各国のスマホ・EC普及率比較

各国のSNS利用率から見る各国の違い
海外市場を理解し、効果的なマーケティングを行う上で、各国のユーザーがどのSNSをどのように使っているかを把握することは不可欠です。世界的に見ると、Googleが検索エンジンとして広く使われ、Instagram、Facebook、TikTok、YouTubeが主要なSNSとして利用されているため、日本の事業者はこれらのツールに慣れ親しんでおり、比較的マーケティングのイメージはしやすいでしょう。この点において、日本は越境ECにおいてアドバンテージを持っていると言えます。
一方で、我々が最も日常的に利用しているであろうLINEは、実は世界的に見ると非常に特殊な存在です。主要な利用国は日本、台湾、タイの3カ国に限定されており、その他の国ではほとんど使われていません。世界的に見ると、WhatsApp(欧米、東南アジアの一部)、中国のWeChat、韓国のKakaoTalkといったように、メッセージコミュニケーションツールが各国で分散しています。このため、メッセージアプリを通じたマーケティング手法も国ごとに大きく異なります。韓国では、検索エンジンも独自のNaverが主流であるため、マーケティングの難易度がさらに高まります。
そして、越境ECにおける最大の課題の一つが中国市場です。中国ではGoogle検索が存在せず、SNSも独自のものが発展しています。最も利用されるのはTikTokの中国版である**Dǒuyīn(抖音)ですが、女性ユーザーを中心にREDbook(小紅書)というSNSも非常に大きな影響力を持っています。中国市場でのマーケティングは、これらのローカルツールをいかにうまく活用するかが勝因を左右します。
このように、各国で利用されるツールは大きく異なります。マーケティングの経験が少ない場合は、日本と近いツールを活用している市場が狙いやすいでしょう。
その点で、地理的にも文化的にも近い台湾は、大きな越境チャンスのある国と言えます。多くの日系企業が台湾に現地店舗を構え、進出していることからも、その魅力がうかがえます。

まとめ
国内市場が成熟し、成長が鈍化する中で、越境ECは日本企業にとって新たな成長のフロンティアです。しかし、成功を収めるには、その複雑な構造を深く理解することが不可欠です。本記事では、越境EC市場のポテンシャルをデータで読み解き、事業推進のヒントを提示しました。
越境ECは「勘」ではなく「データ」で戦う時代です。世界のEC市場は力強く成長を続けており、越境ECはその中でも特に高い成長率を誇ります。日本の物販EC市場規模は世界第3位であるものの、その規模は世界のわずか4%に過ぎず、グローバル市場に挑戦する価値は非常に大きいと言えます。
また、各国のEC市場の成熟度も異なります。スマホ普及率は多くの国で85%を超え、EC利用も広く受け入れられています。しかし、EC市場の成長率は東南アジアが特に顕著であり、人口増加とインフラの整備に伴い、大きなチャンスが拡大しています。一方で、香港のように地理的な制約からEC普及が遅れていた市場でも、現在は高い成長率を見せており、関税がかからないという特性も相まって、越境ECの有望なターゲットとなり得ます。
そして、各国のSNS利用状況も把握することが不可欠です。日本の事業者が慣れ親しんだGoogleやFacebook、Instagram、TikTok、YouTubeが世界的に利用されていることはアドバンテージですが、LINEのように特定の国でしか使われないツールも存在します。特に、中国市場ではGoogleや一般的なSNSが利用できず、独自のプラットフォーム(DǒuyīnやREDbookなど)が主流であるため、マーケティングの難易度が上がります。
これらの客観的なデータと事実を捉えた上で、越境展開の戦略を描くことで着実に事業を拡大していくことができます。あなたの越境EC事業を成功に導くための第一歩となることを願っています。

