越境ECにおける中華圏マーケット攻略:中国本土・台湾・香港、地域特性に応じた越境戦略

この記事で抑えておくべきポイント
  • 中国本土(大陸)・台湾・香港それぞれで利用されるECやSNSの特徴を学ぶ
  • 地域特性に合わせたマーケティングをどう組み立てるべきか学ぶ

はじめに

中華圏は、その巨大な市場規模と旺盛な消費意欲、日本文化との親和性から、越境EC事業者にとって最も魅力的なターゲットの一つです。しかし、「中華圏」と一括りにすることはできません。中国(大陸)、台湾、香港の三つの地域は、それぞれ人口、EC普及率、商習慣、文化、そして利用されるデジタルプラットフォームが大きく異なります。成功するためには、この違いを深く理解し、地域ごとに最適な戦略を構築する必要があります。

本稿では、まず各地域の基本データを整理し、その上で、それぞれの市場を攻略するための具体的なEC進出・マーケティング戦略を詳述します。国別のマーケティング手法の違いを学ぶ意味で、韓国におけるマーケティング戦略を説明した下記の記事もぜひご参照ください。

韓国独自のマーケティング攻略とブランディングによる差別化の重要性

  • 韓国で利用されているECやSNSの動向を理解する
  • 韓国と日本におけるマーケティング手法の違いを学ぶ
  • 韓国における越境ECで注意しないといけない重要事項と規制を学ぶ

1. 中華圏の基本データとEC市場の現状

中国本土、台湾、香港は、同じ「中華圏」というくくりでありながら、その市場特性は大きく異なります。まずはその理解をすることが重要です。EC戦略を構築する上で不可欠な基本データを比較表にまとめました。

項目中国(大陸)台湾香港
人口(概算)約14億人約2,350万人約750万人
国土約960万 km²約3.6万 km²約1,100 km²
EC普及率(B2C)非常に高い(世界トップクラス)高い中程度
スマホ保有率非常に高い非常に高い非常に高い
主要利用SNS/コンテンツチャット:WeChat(微信)SNS:Douyin(抖音/中国版TikTok、Xiaohongshu(小紅書/RED)検索:百度 (Baidu)チャット:LINESNS:Facebook、Instagram掲示板:Dcard検索:Googleチャット:WhatsApp、SNS:Facebook, Instagram検索:Google
主要ECプラットフォームTaobao(淘宝), Tmall(天猫), JD.com(京東), Pinduoduo(拼多多)Shopee, Momo, PChome, RutenHKTVmall, Taobao, Tmall(国際)
越境ECへの慣れ海外ECへのアクセス規制あり/モール出店が主流非常に慣れている/積極的比較的慣れている
消費トレンドライブコマース、ショート動画、KOL/KOCマーケティングSNS発信、コミュニティ、品質・デザイン重視品質、利便性、グローバルブランド志向

この表が示すように、各地域で国土も人口も、そして利用されているツールも全く異なり、表を見るだけでも「戦い方」が全く異なることがわかります。中国の巨大な「モール型ECと動画・SNSの融合」に対し、台湾は「コミュニティとSNSを起点としたUGC(User Generated Content)戦略」、香港は「グローバルなEC利用と利便性」が鍵となります。

では、ここからそれぞれの国の具体的なマーケット攻略方法を考えていきましょう。

2. 中国大陸市場の攻略法:モール型ECとSNSの連携が鍵

人口14億を抱える中国大陸市場は、越境EC市場の中でもアメリカに次ぐ最大のポテンシャル市場です。ただし、中国は人口及び大陸が広大な故に様々な購買行動をする顧客がいるだけでなく、日本人が利用しないチャットツール、SNSが利用されるため、ゼロからツールを学び、戦略を検討する必要があります。どのように中国大陸市場で勝つかはこの記事で語れる分量ではありませんが、この記事では、どのように越境EC展開をすれば良いか、どのようにSNSを活用していけば良いかの概略を説明します。

2.1. 中国越境ECは、モール型進出が基本戦略

まずはどのように越境ECを展開すれば良いか、越境EC展開モデルを見てみましょう。まず、国への越境EC進出において、自社越境ECサイトでの展開は避けるべきです。中国はIPアクセス制限グレート・ファイアウォールと呼ばれる独自のインターネット規制が存在し、海外サーバーにある自社サイトは、中国ユーザーが接続できない、あるいは極端に表示速度が遅くなる可能性が高く、海外のサイトでは購入者に届かなkことが多いからです。

したがって、基本的な進出方法は、中国政府の認可を得た「モール型越境EC」が基本となります。具体的には、Tmall国際(Tmall Global)と京東国際(JD Worldwide)の2大プラットフォームです。

2.2. 中国の二大プラットフォーム、Tmall国際(Tmall Global)と京東国際(JD Worldwide)を知る

中国の越境EC市場における二大巨頭は、Alibabaグループの「Tmall国際(Tmall Global)」と、JD.comが運営する「京東国際(JD Worldwide)」です。どちらも、中国のECを代表し、膨大なユーザーを抱え、強力なインフラを提供しています。では、どちらのモールに出店できると良いでしょうか。理想的には両モールに出店することですが、出店するモールが増えるとその分労力も2倍になります。その中でどのようにどちらか一方に出店するという意思決定をすれば良いでしょうか。

Tmall国際(Tmall Global)と京東国際(京東全球)それぞれの特徴と強みを理解し、自社の商品と戦略に最適なモールを選ぶことが、中国市場攻略の第一歩となります。

Tmall国際(天猫国際/Tmall Global)

中国最大企業Alibabaグループが運営するB2CプラットフォームであるTmallの越境EC版です。海外ブランドが中国本土に法人を持たなくても、中国の消費者向けに商品を販売できます。

Tmall国際に相性が良い商材は、

  • 化粧品・美容品
  • 食品・健康食品(日本の高品質な食品やサプリメントへの需要)
  • 日用品・ベビー用品
  • アパレル・ファッション( 特定のニッチなブランドや、高品質なアパレル製品)

です。中国EC市場の約50%のシェアを持つAlibabaエコシステムの中核を成し、数億人のアクティブユーザーを抱えているため、集客力に強みがあります。特に女性ユーザーが多く、購買決定においては、友人やインフルエンサー(KOL/KOC)の口コミをTikTokやREDなどでみた上で、Tmallで購入するという購買行動が主流です。そのため、TmallはライブコマースやSNS連携(REDなど)を通じた「コンテンツEC」化を目指して運用されています。

また、越境ECとして出店する際に、Tmall Global Flagship Storeという機能を活用し、自社ブランド公式旗艦店を構築することもでき、中国でブランド知名度が上がってきている商品に関して、ブランド公式旗艦店を開設し、ブランドイメージを確立するような取組みにも適しています。

京東国際(JD Worldwide)

中国の二大モールのもう一つである京東国際は、Tmall国際同様に数億人のアクティブユーザーを抱えています。特に、男性ユーザーや、品質・配送速度を重視する層からの支持が厚いプラットフォームになります。

京東国際に相性が良い商材は、

  • 家電・デジタル製品
  • 高級ブランド品
  • 自動車関連用品
  • 趣味系商品(スポーツ用品など)

です。京東国際の強みは、自社物流による配送の速さと正確性で、国内に巨大な自社物流を保有し、最短当日・翌日配送を実現する「京東物流」は、顧客満足度が非常に高く、すぐに商品を手にしたい顧客を獲得しています。

このように2つのモールで利用する購入者属性も相性の良い商材も全く異なることがわかります。

比較項目Tmall国際 (天猫国際)JD.com国際 (京東国際)
相性の良い商材・化粧品、スキンケア・食品、サプリメント・アパレル、ファッション雑貨・ベビー用品・日用品、生活雑貨・日本の伝統工芸品や文化関連商品・家電製品、デジタルガジェット・PC、スマートフォン・自動車関連用品・趣味性の高い商品(アウトドア用品、スポーツ用品など)・高品質なブランド品、ラグジュアリー品
利用者の属性・女性ユーザーが中心(特に20代〜40代のトレンドに敏感な層)・ライフスタイル重視、SNSでの情報収集に積極的・品質やブランドだけでなく、デザイン性や話題性を重視する傾向・比較検討を行うが、口コミやインフルエンサーの影響を受けやすい・男性ユーザーの割合が比較的高い・30代〜50代の購買力のある層が中心・商品の機能性やスペック、価格の信頼性(正規品であること)を重視・スピード配送を重視する傾向・企業の購買担当者なども利用
強み・豊富な商品ラインナップとブランド数・Alibabaグループの巨大なエコシステム・ソーシャルコマースとの親和性・ファッションや美容に関するトレンド発信力が高い・ブランドイメージの構築に適している・自社倉庫・自社物流網による迅速かつ高品質な配送(翌日配送が強み)・商品の信頼性と品質保証へのこだわりが強い(偽造品対策が厳格)・正規ルートでの仕入れを重視し、家電などの高額商品の購入に安心感がある・充実したカスタマーサービス(購入後のサポートも手厚い)・男性向け商品や耐久消費財に強い

理想は両モールへの出店ですが、まずは自社商材や購入者属性のイメージとの相性が良いと思われるモールに集中し、成功事例を積み重ねてから他モールへの展開を検討するのが賢明な戦略です。具体的にどのようにこの2大プラットフォームに出店するかは別記事で説明しているので、ここでは割愛します。ぜひ参考にしてみてください。

2.2. 中国におけるSNS活用戦略:REDとTiktok(Douyin)の運用

越境EC展開モデルができたら、次に集客面をみてみましょう。モールへの出店は「販売チャネル」の確保ですが、「集客」はSNSが担います。中国の集客の鍵は、Xiaohongshu(小紅書、通称RED)とDouyin(抖音、中国版TikTok)の活用です。

2.2.1. RED(小紅書)とDouyin(抖音/中国版TikTok)の比較と活用戦略

中国の2大SNSはRED(小紅書)とDouyin(抖音/中国版TikTok)ですが、それぞれのSNSは日本のInstagramとTiktokのように異なる目的で利用されます。具体的には、Douyin(抖音/中国版TikTok)が、「刈り取り」メディア(目的は、認知拡大)に対して、RED(小紅書)は、「種まき」メディア(目的:UGC、レビュー、口コミ創出)という違いです。

RED(小紅書)は、UGC(口コミ)の創出と検索対策に利用します。KOL/KOCマーケティング: 影響力の高いKOL(Key Opinion Leader)だけでなく、一般消費者としての発言力が強いKOC(Key Opinion Consumer)に商品をサンプリングし、自然なレビュー投稿を依頼し、UGCによる拡散をしながら、信頼性を高めていきます。

ある程度の信頼とUGCができ始めたら、Douyin(抖音/中国版TikTok)でバズを狙い拡散するとともに、ライブコマースでの売上最大化を狙います。日本でもTiktok shopができつつありますが、いまだにTiktokは認知度向上の武器に留まっています。一方で、中国では、協力な販売ツールとしてDouyin(抖音/中国版TikTok)が機能します。

戦略としては、まずRED(小紅書)でKOL(Key Opinion Leader)やKOC(Key Opinion Consumer)を活用し、商品に対する信頼できるレビューと話題性を創出(種まき)します。その上で、Douyin(抖音/中国版TikTok)でライブコマースやバズ動画を展開し、爆発的な売上に繋げる(刈り取り)のが王道パターンです。

特徴RED(小紅書)Douyin(抖音/中国版TikTok)
コンテンツ画像/テキスト中心のブログ型SNS、短尺動画ショート動画、ライブコマース
日本の類似SNSInstagramTiktok
ユーザー層都市部の若い女性が中心、購買意欲が高く、情報収集・検索に利用幅広い層(若年層中心)、暇つぶし、エンタメ、購買行動に利用
活用戦略「種まき」メディア:UGC、レビュー、口コミ創出
商品の具体的な使い方やレビューを発信し、購買意欲を喚起
「刈り取り」メディア:認知拡大
ライブコマースで一気に販売する。
目的認知度向上、信頼性構築、検索対策瞬発的な売上、大量のトラフィック獲得

2.2.2. RED(小紅書)運用上の注意点:海外発信のリスク回避策

RED(小紅書)は、海外IPからの投稿に対して非常に厳しく、特に企業アカウントでない場合、AIが「海外からの不正な宣伝」とみなし、アカウント凍結(バン)されるリスクがあります。これは、中国国内のコンテンツ品質を保つための措置です。

このリスクを回避し、安定した運用を行うには、以下の具体的なステップが必要です。

  1. 企業アカウント化(公式認証):RED(小紅書)は企業アカウント登録制度があります。
  1. 中国国内の現地メンバーによる本人確認:企業アカウントの開設が難しい場合、中国国内に在住するメンバー(中国人または中国の在留資格を持つ外国人)「運用責任者」とし、その人物の中国国内での本人確認書類(身分証など)を登録することで、「中国国内からの発信」とシステムに認識させることが可能です。
  1. 中国国内のIPアドレスからの運用:最も簡単な方法ですが、常に中国国内のVPNやプロキシを経由して投稿・運用することで、海外IPの検出を避けます。ただし、VPNは突然使用できなくなるリスクもあります。

現実的な方法は1か2になりますが、基本的には1の方法が望ましいです。1を実施するには、日本の法人の登記簿謄本などを中国語化し、現地RED(小紅書)に申請して手続きを行います。何度か手戻りが発生することもあるので、登録には2-3ヶ月要することを想像して、スケジュールを立てることが望ましいです。

2.2.3. Douyin(抖音/中国版TikTok)の運用:中国と日本の運用の違い

Douyin(抖音)は、単なるショート動画SNSではなく、「興味EC(インタレストコマース)」を推進する強力な販売プラットフォームです。Douyin内で商品の発見から購入、決済まで完結する機能が整っており、巨大なライブコマース市場の牽引役です。

ユーザーの興味関心に基づき、動画や商品を正確にレコメンドすることで、潜在的な購買意欲を喚起し、購入に繋げることができます。具体的な運用方針として、自社での運営と、インフルエンサーマーケティングの2つの方法で、利用していきます。

  • 自社運用:認知拡大のために、エンタメ性の高いショート動画を大量に投稿し、AIのレコメンドに乗せることでトラフィックを獲得します。最初の数秒でユーザーを惹きつけるクリエイティブを工夫し、クリエイティブのPDCAを回します。
  • インフルエンサー活用:獲得した視聴者をプロフェッショナルなライバーによるライブ配信に誘導します。ライブ限定の割引や特典を設け、「今すぐ買う」という衝動的な購買行動を促し、売上を最大化します。

RED(小紅書)で構築した信頼性の高い口コミを背景に、Douyin(抖音/中国版TikTok)で爆発的なトラフィックと販売を実現するといった、立体的なSNSの運用方法で、販売を最大化できると望ましいです。

Douyin(抖音/中国版TikTok)の具体的な運用方法は別記事に記載しておりますので、ぜひ参考にしてみてください。

TikTok/REDを活用したグローバル・ソーシャルコマース戦略

  • 世界で台頭している「発見型コマース」とは何かを学ぶ
  • 中国におけるDouyin(抖音、TikTok中国版)とRED(小紅書)の活用方法を学ぶ
  • アメリカにおけるTikTokの有効性を学ぶ

3. 台湾市場の攻略法:越境ECへの慣れとコミュニティ戦略

次に台湾市場を見ていきましょう。台湾市場は、人口は少ないものの、越境ECサービスが普及しており、人々が越境ECの利用に慣れています。また、日本から距離的にも近く、越境ECを始めるには最適な市場です。では、その台湾について、見ていきましょう。

3.1. 越境ECに慣れた台湾ユーザーの特性

台湾の消費者は、ECサイトを問わず、海外から直接商品を購入することに慣れており、日本の商品に対する信頼度も非常に高いのが特徴的です。しかし、越境ECに慣れているからこそ、消費者が越境ECの品質を要求し、他社サービス比較を伸長に行う傾向があり、より一層サービス品質を高めていく必要がある市場です。具体的には、下記2点は

  • 関税・送料の透明性:海外からの購入経験が豊富であるため、表示価格に輸入関税、送料、消費税がどこまで含まれているかを非常に細かくチェックします。透明性がなく、DAP(DDU)の場合、関税がかからない範囲である単回 2,000台湾ドル(約8,000円)購入を躊躇したりする傾向にあります。
  • 物流の品質と価格:物流スピードに関しても他国ECサイトとの比較対象が多いため、配送の遅延や追跡情報の不備に対して非常に厳しい目を持ちます。また、配送価格に対して、非常に価格にシビアに捉える習慣があり、国際配送料が越境ECにおける一つの差別化ポイントになります。

台湾での越境EC成功は、サイト・決済の利便性と、ロジスティクスにおける透明性・信頼性が生命線となります。

3.2. 台湾の越境マーケティング戦略

台湾のマーケティングは、InstagramとFacebookの「二大SNS」が中心となりますが、これに加えて、「Dcard(ディーカード)」という独自の大学コミュニティを活用したUGC創出が極めて重要です。また、台湾のマーケティングがしやすい理由として、台湾は日本同様にチャットツールとして「LINE」が利用されており、LINEを通じたコミュニケーションが定番になっています。LINEを使って日本同様にマーケティングができるのは台湾とタイだけです。

SNSがこれほどに同じだからこそ、台湾は越境ECとしても攻めやすい市場なのです。その中で、台湾のみの特徴的なサービスである「Dcard(ディーカード)」について、次に見ていきましょう。

DcardでのUGC創造戦略

Dcardは、元々大学生限定の匿名掲示板としてスタートしましたが、現在では若年層全般の「口コミ・情報収集」の場となっています。ユーザーはDcardで商品やブランドのレビューを探し、購買するかを検討します。ここでポジティブなUGCが生まれると、一気に購買行動につながります。

Dcardの一つの活用戦略として、KOC(Key Opinion Consumer)、つまり影響力のある一般ユーザーに商品をサンプリングし、Dcardの適切な掲示板(例:美容板、ファッション板など)で「匿名ユーザーのレビュー」という体裁で投稿してもらう戦略が有効です。露骨な企業宣伝は厳しく嫌われるため、投稿内容はあくまで「ユーザーのリアルな体験談」として、自然な形で行いながら、UGCを増やしながら、

  • 自社宣伝 :Instagram,Facebook
  • UGC :Dcard

の組み合わせて、認知を拡大していけると良いでしょう。

上述の通り、台湾市場のマーケティング戦略は極めてシンプルであり、

  • 日本同様にLINE、Instagram、Facebookを活用しながら、
  • DcardでUCGを構築し、
  • サービス品質を物流の観点を中心に磨き込んでいく

という3つの方針で市場展開ができると良いでしょう。

4. 香港市場の攻略法:グローバルECと利便性の追求

最後に香港エリアを見ていきましょう。香港は、自由貿易港であり、グローバルブランドの参入も活発なため、海外からのものの輸入は非常に活発に行われており、非常に購買力が高いだけでなく、土地も狭いため、認知浸透が早いという特徴があり、越境ECにとって魅力的な市場です。まず、香港のEC市場の特徴を見ていきましょう。

4.1. 香港のEC市場特性

港は都市がコンパクトで、店舗へのアクセスが容易なため、実店舗での購買文化が根強く、EC普及率が抑えられています。しかし、EC市場自体は着実に成長しています。

香港の国内EC市場は、長らく利便性物流スピードを軸に進化してきました。物理的な距離の近さや、商品の品質を直接確認したいというニーズから、消費者は伝統的に実店舗での買い物を好む傾向にあり、元々ECの普及は遅れ、現在においてもEC利用率は63.0%と他国が85%を超える中で、低い状況です。一方で、近年は、パンデミックの影響や若い世代のデジタルリテラシー向上により、オンラインでの購入が増加し、特に食料品や日用品のEC化が進んでいます。主要なローカルECプラットフォームとしては、スーパーマーケット系列のECや、HKTVmallなどが存在感を増しています。

香港における越境ECの浸透は、国内EC市場の成長を上回るペースで進んでいます。購入者は、国内では手に入らない日本の美容品やファッション、欧米のガジェットなどを求めて、積極的に海外ECを利用します。これは、香港が自由貿易港であり、関税がかかりません。中国大陸のようなアクセス制限もありません。

それ故、香港における越境ECモデルにおいては、あえてTmall国際などに出店せず、自社の越境ECサイトを「香港ユーザー向けに最適化」することで勝機を見出すことも可能です。その際には、多言語(英語、繁体字)対応、香港ドル表示に対応した上で、香港で最も主流な荷物の受け取り手段である、ロッカーで宅配受け取りサービスを提供するなど、利便性の高いサービスに対応することが重要です。

4.2 香港の越境マーケティング戦略

香港のEC集客における主要なプラットフォームは、欧米の影響を受けたSNSが中心です。

  • FacebookとInstagram: 情報収集、商品発見、ブランドエンゲージメントの主要なチャネルです。特にInstagramは視覚的な商品紹介に適しており、インフルエンサーマーケティングの中心地です。
  • WhatsApp: 台湾のLINEに近い位置づけで、家族や友人との連絡手段として圧倒的に利用されています。ビジネスにおいては、カスタマーサービス(CS)や個別プロモーションに活用され、顧客との直接的な信頼関係構築に不可欠です。
  • YouTube: 動画コンテンツやレビューの視聴に広く利用されています。

マーケティングについては、普段利用しているプラットフォームを中心に運用すれば良いため、難易度は高くありません。利便性の高い自社越境ECで展開しながら、狭い土地の利を生かした認知度の最大化を早期に行い、売上を上げることができると良いでしょう。

5. まとめ:中華圏攻略の鍵は「差別化」と「現地化」

中華圏の越境ECは、「巨大で単一の市場」ではなく、「三つの独立した、個性豊かな市場の集合体」として捉えることが成功の絶対条件です。中国では巨大なトラフィックの活用方法を、台湾では高い越境ECリテラシーへの対応とコミュニティ戦略を、香港では利便性の高い越境EC展開と認知の垂直立ち上げを、意識し、地域特性に応じた「差別化」と「現地化」を徹底することで、中華圏での越境EC成功の道は開けてきます。

上記のような特徴も踏まえながら、どの国を選定するのが望ましいかを選択していきましょう。

国の選定方法に関しては、別の記事に記載しておりますので、参考にしてみてください。

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地域最重要戦略プラットフォームの鍵
中国(大陸)モール型ECへの進出とSNS(RED/Douyin)での集客連携Tmall国際/京東 + RED/Douyin
台湾日本同様にLINE、Instagram、Facebookを活用しながら、DcardでUCGを構築し、サービス品質を物流の観点を中心に磨き込む自社EC/Shopee + Dcard/FB/IG
香港利便性の高い自社越境ECで展開しながら、狭い土地の利を生かした認知度の最大化自社EC + FB/IG/WhatsApp

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