- 韓国で利用されているECやSNSの動向を理解する
- 韓国と日本におけるマーケティング手法の違いを学ぶ
- 韓国における越境ECで注意しないといけない重要事項と規制を学ぶ
韓国越境EC市場と日本ブランドの機会
韓国は、地理的な近さと文化的な親和性、そして人口規模(ソウルはアジアの中でも最上位の一つ)から、日本企業にとって、有望な越境EC市場の一つです。しかし、韓国を攻略するのは、他のアジア諸国と比較しても難易度が高いと言われています。その理由は、韓国独自の文化と特有のツールを理解しながら、韓国にあったマーケティングのローカライズが不可欠だからです。
本記事では、このような韓国で成功するための、韓国市場の理解と成功の鍵となる3つのポイントについて、開設します。
韓国の日本からの越境EC市場の動向
韓国市場は、国内企業の競争力の高さから、自国(韓国)製品が優勢な「自国コンテンツ優勢」の市場でした。K-POP、K-Beauty、K-Foodといった「韓流」コンテンツは世界を席巻し、その製品力は国内消費者の購買を強く促してきました。そのため、他国からの輸入、特に個人で海外から購入する動きはそれほど発達してきませんでした。
しかし、近年、この構図に大きな変化が生じ、海外商品ニーズが少しずつ高まってきています。
多様な消費ニーズの高まり
生活水準の向上、多様な消費ニーズ、そしてグローバル情報へのアクセス増加により、消費者は国境を問わず、自分に合う商品を探求し、積極的に海外製品を求めるようになりました。特にコロナ禍を経て、オンラインでの購買行動が定着し、海外から自分のニーズに合わせた商品を購入できる越境EC市場は段階的に成長を遂げています。
消費者の行動も「価値消費」への移行しており、単に安いものを求めるだけでなく、ユニークなデザイン、職人技、ブランドのストーリーといった付加価値に対し、韓国の消費者は高い対価を支払う傾向にあります。ここに、日本のニッチで高品質な製品が入り込む大きなチャンスがあります。
インバウンド体験のオンライン回帰
日本は、コロナ禍が明けた後、外国人訪問者数(インバウンド人口)で世界トップクラスとなっており、その中でも特に韓国からの訪問者数はNo.1となっています。国別訪日外国人数は「株式会社JTB総合研究所 インバウンド 訪日外国人動向」をご覧ください。
多くの韓国人旅行者は日本を訪れ、高品質な日本の医薬品、コスメ、雑貨、ファッション、食品などを実際に購入し、その品質を体験しています。その中で、帰国後、旅行中に試した商品のリピート購入や、買い逃した商品、日本での流行商品を探す際、その需要は自然とオンラインの越境ECへと移行します。この「オフラインでの実体験」が、「オンラインでのリピート購買」という形で越境ECの成長を力強く後押ししています。
では次に、韓国のEC市場動向や利用されているツールといった、韓国でマーケティングを行うために必要となる基礎的な情報を抑えていきましょう。
韓国におけるデジタルインフラを理解する
韓国市場を理解する上で、その極めて進んだデジタル環境と、独自のプラットフォームの構造を知ることは必須です。
韓国のEC化率とスマホ保有率
韓国は、世界でも類を見ないほどデジタル化とモバイル化が進行している国です。
| 指標 | 詳細 |
|---|---|
| EC化率 | 世界トップクラス (約30%超)と、非常に高いオンライン購買体験が定着しており、ECを利用したことのある消費者は91.9%と日本と比較しても、ECが普及しています。 |
| スマートフォン保有率 | ほぼ84.1%と日本と同じ水準です。あらゆるWebサービスはモバイルファーストであり、スマホに最適化された体験が求められます。 |
| 物流インフラ | ECにおいて重要になる物流インフラも日本同様に世界最高水準で、日本国内のAmazonと同じように、「今日の注文で明日届く(ロケット配送)」が標準になっており、配送スピードも重視されます。 |
韓国のECとSNS動向
韓国のECおよびデジタル市場は、韓国の国内プラットフォームがEC市場および、検索市場において圧倒的なシェアを占める、極めてユニークな構造を持っています。SNSに関しては、基本的なSNSは日本と大きく変わらないものの、その利用の仕方や重要なポイントは日本と異なります。
韓国におけるECプラットフォーム
韓国におけるEC市場は、日本のAmazonと楽天と同様に大きく分けて二つの巨頭によって形成されています。それは、配送スピードと安さを武器に戦うCoupangと検索エンジンを武器に戦うNaver Shoppingです。その他韓国市場の特徴として、上記の総合型プラットフォームとは別に日本でいうZOZOのような各専門ECが乱立していることが特徴的です。各専門ECはそのカテゴリの中で他プラットフォームにない在庫供給に特化し、独自のブランディングを際立たせることで、総合型プラットフォームと差別化を測っています。日本からモール型で越境EC展開する場合は、Coupangが第一の候補となりますが、配送スピードや商品数の多さから、国内出店者との競争が激しく、Coupangでの成功は至難の業となります。
| プラットフォーム | 特徴 |
|---|---|
| Coupang(クーパン) | 韓国最大の総合ECモール。生鮮食品や日用品など、生活に密着した商品が活発に取引される。自社物流網による「ロケット配送」が最大の特徴。日本のAmazon的な存在 日本からの越境ECにも対応しており、Coupang(クーパン)は日本から韓国に出店する場合は最大のモールになルガ、Coupang(クーパン)の配送スピードになれた消費者に対して、越境ECという一定時間のかかる戦い方をする必要があるので、戦いは非常に難しくなります。ただ、Coupang(クーパン)もフルフィルメントサービスは提供しており、韓国に一括で納品すれば、「ロケット配送」で届けられるサービスもあるので、合わせて検討できると良い。 |
| Naver Shopping | 韓国最大手検索エンジンNaverのエコシステム内にあるEC機能。日本における、Google Shoppingが近いサービスになる。検索結果と密接に連動した「ショッピング検索」により、購入者が求めるものをロングテールに提供 |
| 専門EC | MUSINSA(ファッション)、Oliive Young(コスメ)など、特定のカテゴリに特化したプラットフォーム。日本のZOZOのようなサービス |
韓国における検索エンジンの動向
韓国において、情報検索の中心はGoogleではありません。近年Googleも台頭してきておりますが、利用割合は約30%程度と言われており、韓国の検索エンジンのシェアはNaverが圧倒的な首位です。消費者は、商品やブランド名を検索する際、ほぼ必ずNaverを利用します。
そして、Naverは日本のYahoo!のように様々な機能を保有しており、ニュース、ブログ、カフェ(コミュニティ)、地図、ショッピング、ウェブトゥーンなどが一体化した「ポータルサイト」として、国民のデジタル生活の中心に位置しています。Naverといえば、日本人に馴染みのあるLINEであり、元々LINEはNaverの子会社が日本で開発したサービスです。一方で、韓国では、後述の通り、LINEは全く利用されておらず、KakaoTalk(カカオトーク)が主流となっています。
韓国におけるSNSの動向
次に、韓国で利用されるSNSを見ていきましょう。まず、ほとんどの消費者が利用するメッセージアプリは、上述の通り「KakaoTalk(カカオトーク)」というサービスが利用されます。このKakaoTalk(カカオトーク)を軸に、日本のLINE同様に、送金機能やギフト機能が提供されています。国内でマーケティングをする際にLINEマーケティングに力を入れている企業も多いかと思いますが、同じように韓国においては、KakaoTalk(カカオトーク)を利用した顧客接点構築が重要となります。
KakaoTalk以外のSNSは日本とほとんど同様で、「Facebook」「Instagram」「Youtube」「TikTok」が利用されています。日本と比較をすると、「Facebook」「Instagram」の利用率が高いのが特徴的です。SNSマーケティングで勝負する場合、後述の通り、「Instagram」をどううまく活用するかが重要になります。
一つ韓国SNSの特徴として、オンラインコミュニティ機能が日本以上に発達していることが挙げられます。韓国ではNaverのポータルサイト機能内で提供される「Naver Cafe」というオンラインコミュニティにて、UGC(ユーザー生成コンテンツ)が作られ、特定の商品を購入する前や、複雑な情報を知りたいときに消費者が、Naver検索を通じてNaver Cafeの具体的なレビューや質問を探し、意思決定に大きく影響します。そのため、ECを展開する際に、Naver Cafeで話題になることが、ブランドの信頼性向上に直結します。
| SNS | 特徴 | マーケティング上の役割 |
|---|---|---|
| KakaoTalk(カカオトーク) | 韓国の国民的メッセージアプリ。 日本のLINEにあたる。老若男女問わず、コミュニケーション、決済(Kakao Pay)、送金、ギフト(Kakao Gift)などに利用される生活インフラ | 顧客との個別コミュニケーション、CS、ライブコマース(Kakao Shopping Live)、CRMに必須 |
| 若年層を中心に最も活発なSNS。写真・動画ベースのフィードが購買に直結する | 視覚的なブランディング、インフルエンサーマーケティング、流行の発信地 | |
| YouTube | 全世代にわたるコンテンツ消費の主流 | 製品の深いレビュー、ハウツー動画、ブランドストーリーテリング |
| Naver Cafe | Naverが提供する大規模なオンラインコミュニティ機能。 特定の関心事や趣味、居住地域、製品などに関する専門的な情報交換の場として利用される | 購買意思決定に影響力の高い情報源。口コミや詳細なレビューがNaver検索結果にも強く反映される |
各SNSの日本との利用割合比較
| 国・地域 | 日本 | 韓国 |
|---|---|---|
| チャットツール | LINE | Kakao |
| 検索エンジン | Google/Yahoo | Naver |
| 28% | 41% | |
| 55% | 66% | |
| Youtube | 81% | 74% |
| TikTok | 25% | 14% |
韓国市場を攻略するための3つの戦略
日本とは異なるこの韓国市場を攻略するのは非常に難易度が高く、また利用するツールも異なるため、世界汎用的なマーケティングが通用しない特殊な市場ですが、地理的な近さと文化的な親和性、そして人口規模(ソウルはアジアの中でも最上位の一つ)から、日本企業にとって、有望な越境EC市場の一つであり、越境ECを展開する際には外せない市場の一つです。
その韓国を攻めるためには、大きく3つの戦略が重要となると考えています。
- Naverエコシステムをハックし、信頼を構築する
- Instagramでのブランドの最大化
- 自国コンテンツに負けない差別化の必要性
1. Naverエコシステムをハックし、信頼を構築する
上述の通り、韓国の検索エンジンはNaverが圧倒的なシェアを誇ると述べました。いくら良い商品を提供しても、消費者がその商品に到達しないことには意味がありません。消費者に適切に商品の情報を届けるためには、検索エンジンの有効な活用が重要です。詳細は割愛しますが、NaverのアルゴリズムはGoogleとは根本的に異なる特徴を持つと言われています。このNaverの検索エンジンを正しく理解し、検索による流入を増やすことが重要です。
また、Naverで検索上位にくるためにもう一つ重要なのが、ブログやカフェといったUGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)を消費者にいかに作ってもらえるかです。Naverの検索結果は、広告、ショッピング、ブログ、カフェ(コミュニティ)、ニュースが混在して表示される「統合検索」です。このうち、ユーザーが最も信頼し、クリックするのはブログやカフェといったUGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)です。
UGCは認知だけでなく、購入意思決定のタイミングでも非常に重要になります。Naver検索エンジン対策を行う際には、同時にNaver Cafeなどで自社商品が話題になっているかも定期的に確認を行い、自社が意図するような広がり方がされているかを確認する必要があります。
2. Instagramでのブランドの最大化
韓国市場では、日本以上にInstagramを有効に活用できるかが重要になります。韓国の消費者は製品の機能性以上に、その製品が提供する「情緒的な価値」や「ライフスタイル」が重要視され、そのブランドの背景にあるかっこよさが購買意思決定の決め手になることも多々あります。
そんな中で、自社のブランドを視覚的に表現できるのが「Instagram」です。サイトや広告クリエイティブは、洗練されたデザイン、統一感のあるトーン&マナーで一貫したブランドイメージを構築する必要があります。
Instagramによるブランド構築はすぐに効果が見えにくく、費用対効果で測れない部分もあり、地道な施策となります。一方で、韓国市場においては、この地道な施策を徹底的に実行している企業がブランディングに成功し、選ばれるようになってきています。
Instagramを活用する際には、インフルエンサーマーケティングも重要です。単にフォロワーが多いマクロインフルエンサーだけでなく、特定のニッチ層に強い影響力を持つマイクロインフルエンサー(フォロワー数千~数万)とのタイアップをしながら、コストを抑えつつ、少しずつ認知度向上をしていくことができると良いでしょう。また、インフルエンサーが生成するリアルで説得力のある使用レビュー動画や写真は、Instagram内だけでなく、Naver BlogやECサイトのレビューとしても再利用され、購買の確信度を高める二重の効果をもたらします。
3. 自国コンテンツに負けない差別化の必要性
3つ目はSNSの有効活用ではなく、根本的なポイントである商品の差別化です。上述の通り、韓国は「自国コンテンツ優勢」の市場です。市場トレンドの変化も著しく早い市場であり、様々な商品が次々と発売される市場の中で受け入れられるには、商品自体に差別化ポイントや価値が大前提必要になります。
2. で述べたようにブランディングにより、日本の文化的背景や技術を伝えることは可能ですが、「なぜ日本から買うのか」という点を機能面からも明確にし、尖ったユニークセリングプロポジション(USP)を作る必要があります。
まずは、自社の商品が韓国市場でどの程度受け入れられる可能性があるかについて市場調査をするところから始め、受け入れられる可能性が見えた場合に、次にどのようにブランディングを進めていくかを検討できると良いでしょう。
市場調査の方法については、別記事で記載していますので、ぜひ参考にしてみてください。
越境EC展開における重要事項と法規制
最後に文脈を変えて、韓国市場に参入する上で、特有の法規制についても簡単にみておきましょう。ここでは関税・VATの制度及び、消費者保護の制度という2つのポイントを説明します。この2つ以外にも韓国で越境ECを展開する場合において気をつける点は多々あるため、詳細は専門家を交えて、検討することが望ましいでしょう。
韓国の関税、VAT(付加価値税)
韓国では、個人が海外から商品を購入する際、商品カテゴリごとに異なる関税と、金額に応じて発生する付加価値税の支払いが義務付けられています。一方で、越境ECにおいては、一定額以下であれば関税(Customs Duty)と付加価値税(VAT)が免除される制度があります。2025年10月現在は、原則150米ドル以下は免税となっております(一部カテゴリは特別な基準が設けられていることもあり、商品カテゴリごとに確認が必要)。
また、韓国の個人輸入では、購入者が個人通関固有符号(PCC)を取得し、個人輸入であっても、その内容を申告、税金の支払いを要求される制度があります。それゆえ、韓国ではDAP(DDU)により購入者が関税や付加価値税を払うことに慣れています。
一方で、顧客が商品到着後に予期せぬ関税やVATを請求されると、顧客体験は著しく低下します。これを避けるため、販売者がすべての関税・税金を負担し、商品価格に含めて表示・決済するDDP(Delivered Duty Paid)方式の採用が、顧客満足度を高める上で理想的であるのは他の国同様に変わりありません。
返品・クーリングオフ制度について:厳格な消費者保護法
韓国の消費者保護法は非常に厳格であり、越境EC事業者はこれに準拠する必要があります。消費者保護の中でも特に日本と異なり、注意しないといけないのが、クーリングオフ制度です。韓国では、「電子商取引等における消費者保護に関する法律」に基づき、原則として消費者は商品受領後7日以内であれば、単純な心変わり(単純変心)による契約解除(返品)を申し出ることができます。それゆえ、韓国の消費者は日本以上に返品に慣れている可能性があります。
それゆえ、返品に関するポリシーについては、韓国語で明確に、かつわかりやすい場所に記載し、消費者がすぐに確認できるようにしておく必要があります。また、化粧品や食品など、一部の製品では開封後の返品に制限がある場合があるため、その条件も正確に明記する必要があります。そして、返品物流に関しても検討しておく必要があります。
返品物流に関しては、別記事で簡単に解説しておりますので、ぜひ参考にしてみてください。
韓国市場での成功は「韓国のデジタルエコシステムの中で信頼と共感を築く」こと
韓国市場での成功は、単に「商品を売る」ことではなく、「韓国のデジタルエコシステムの中で信頼と共感を築く」ことにあります。
- Naverエコシステムをハックし、信頼を構築する: 検索エンジンとしての地位を活用し、良質なUGCとショッピング検索を通じて「製品の信頼性」を浸透させる
- Instagramでのブランドの最大化: 洗練されたビジュアルとストーリーを通じて「ブランドの情緒的な価値」を醸成する
- 自社製品の負けない魅力と信頼のある越境販売: 韓国コンテンツに負けない機能的価値とストーリーを明確にし、越境ECならではの法規制にも対応しながら、購入者の負担が極限まで少ない流通を構築する
これらを土台に、厳格な法規制をクリアし、日本製品独自の価値を戦略的に訴求することで、韓国越境EC市場における確固たる地位を築くことができるでしょう。難易度が高い市場ですが、将来的な越境ECポテンシャルの高い市場であることは間違いありません。地道な戦略策定と実行によってこそ、韓国市場を攻略できるでしょう。

