- 越境EC物流に登場するステークホルダーと物流会社の選定方法を理解する
- 越境物流における、梱包・返品等の注意点を理解する
はじめに
越境ECにおける、最も難易度が高く、ただ成功の鍵を握る国際物流。国境を越える物品の移動は、国内取引にはない複雑な手続き、法規制、そしてコストが伴います。越境ECを検討する際にまず第一に障壁を感じるのが、越境における物流の理解です。この理解できれば、越境ECの構想が具体的にイメージできるようになってきます。本稿では、越境ECを始めるにあたって、知っておくべき物流の全体像、モデルの選定、パートナー選びのポイント、そして関税・梱包といった実務上の注意点までを、解説します。
越境EC物流の全体像とステークホルダー
越境EC物流は、商品の注文から到着までに複数の国境とプレイヤーを通過する複雑なサプライチェーンです。その構造と関与者を理解することが、物流戦略構築の出発点となります。
越境物流とは、EC事業者が出荷国から販売先の国(輸入国)の消費者へ商品を届ける一連の流れを指します。そのプロセスは大きく7つのフェーズに分けられます。
- 集荷・倉庫作業(日本国内) : EC事業者または委託先倉庫での注文処理、ピッキング、梱包
- 国内輸送(日本国内) : 倉庫から輸出港(空港・港)までの輸送
- 輸出通関 : 税関への申告と検査
- 国際輸送 : 航空便(Air Freight)または船便(Ocean Freight)による国境を越えた輸送
- 輸入通関 : 輸入国側の税関での申告、関税・消費税の支払い、検査
- 現地国内輸送 : 港や空港から現地の配送拠点までの輸送
- ラストワンマイル配送 : 配送拠点から最終消費者への配達
越境ECにおいては、上記の中でも特に「輸出通関」以降の国際配送、輸入通関、現地国内輸送、ラストワンマイル配送まで一気通貫でになってくれる国際物流パートナーの選定が非常に重要になります。適切なパートナーを選定できれば、安価にかつ品質が高く、国際物流を任せることができます。具体的には、「国際宅配便」「国際郵便」が越境ECにおける選択肢になります。
| ステークホルダー | 役割と特徴 |
|---|---|
| 国際宅配便 | 国境を越えて、書類や小口の荷物・貨物を迅速かつ確実に、戸口から戸口(Door-to-Door)で運送する民間の国際輸送サービス。佐川急便国際飛脚便,ヤマト国際宅配便,FedEx, DHL, UPS, ECMSなど。通関手続き代行してくれる、一気通貫の物流が強み。国内では佐川急便が国際配送において、強みを持つ。 |
| 国際郵便 | EMS, eパケットなど。万国郵便連合ネットワーク利用。小口・軽量物に安価。 |
越境物流に業者選定とフルフィルメント
では、上で述べた「国際宅配便」「国際郵便」の中から、どのように適切な配送業者の選定していくと良いでしょうか。それぞれの越境物流業者の特徴をみてみましょう。
国際輸送業者の選択とメリット・デメリット
| 業者名 | サービス提供国 | サービス種別 | 主な特徴と強み | 選定のメリット | 選定のデメリット |
|---|---|---|---|---|---|
| FedEx (フェデックス) | アメリカ合衆国 | 国際宅配便 | 自社で大規模な航空機ネットワークを保有し、世界全域へ迅速かつ確実に配送。特に北米市場に強み | 1. 圧倒的な配送スピードと信頼性2. 詳細な貨物追跡機能。3. ドア・ツー・ドアの一貫サービス(通関代行含む) | 1. 料金が割高になりやすい2. 燃油サーチャージなどの変動コストが大きい3. 容積重量の影響を受けやすい |
| DHL | ドイツ | 国際宅配便 | ヨーロッパを拠点とする強力なグローバルネットワーク。特にヨーロッパやアジア市場での網羅性が高い | 1. ヨーロッパ・アジア向けで非常に迅速2. 通関サポート体制が充実している3. 法人契約による割引率が大きい | 1. 料金が高め2. 契約や利用開始に一定の出荷量が必要な場合がある3. 遠隔地配送料が発生する場合がある。 |
| 佐川急便 国際飛脚便 | 日本 | 国際宅配便 | 佐川急便の国内ネットワークと海外パートナー(SAGAWA EXPRESSなど)連携による国際輸送。アジア地域に比較的強み。日本の宅配便の中では、佐川が国際宅配便に最も特化している | 1. 日本国内の集荷・サポート体制が手厚い2. 日本語での問い合わせがスムーズ3. アジア向けでコストとスピードのバランスが良いルートがある | 1. 配送スピードは大手クーリエに及ばない場合がある2. 独自の海外ネットワークはDHLとFEDEXより限定的 |
| ヤマト国際宅急便 | 日本 | 国際宅配便 | ヤマト運輸の国内ネットワークと独自の国際輸送網を連携 | 1. 日本の消費者向けのきめ細やかなサービスを国際輸送にも活用2. 海外ヤマトグループによる現地サポート3. 個人や小口の利用にも比較的対応しやすい | 1. 大手クーリエに比べ、配送リードタイムが長くなる場合がある2. 独自のネットワークを持たない地域ではパートナー依存となる |
| EMS (国際スピード郵便) | 日本(日本郵便) | 国際郵便 | 万国郵便連合(UPU)加盟国の郵便ネットワークを利用する最速の国際郵便サービス | 1. 少量輸送でも、重量により金額が決まっており、物流費の計算がしやすい2. 日本全国どこでも郵便局から差出可能で手軽3. 20万円以下の貨物は通関手続きが簡素 | 1. クーリエより配送に日数がかかる2. 追跡が途切れる国がある3. 補償額に上限がある4. 近年の米国制度変更による混乱が大きい |
| ECMS | シンガポール | 越境EC特化型国際宅配便 | 国際物流のIT技術を活用し、越境ECの小口B2C輸送に特化したサービス | 1. 国際宅配便の中では低コスト(「物流業界のLCC」)2. 中国、東南アジアなどアジア圏への配送に強み3. 越境EC向けシステム連携が容易 | 1. 大手クーリエほどのスピードや柔軟性はない2. サービスエリアや対応貨物に制限がある場合がある3. 認知度やグローバルなサポート体制は大手クーリエに劣る |
上記が各配送業者の比較表になります。他国化展開を行い、世界中に幅広く対応する場合は、FEDEXやDHLが望ましいです。一方で、FEDEXやDHLとの契約は法人契約となり、物量が大きくない初期はコストが少し高くなる可能性もあります。
日本の配送業者を使いたい場合は、佐川急便、ヤマト、日本郵便が選択肢になります。日本郵便のEMSは誰でも簡単に使うことができ、重量による国際配送料の透明性も高いので、非常に使いやすいサービスになります。初期に少量を海外に配送する場合は、EMSを利用している会社も多いのではないでしょうか。越境物流の最初の立ち上げにおいてはEMSは便利です。
一方で、EMSは近年、デ・ミニミス制度の廃止(米国では長らく、輸入貨物の申告価格が**$800以下であれば、関税や通関手続きが免除・簡略化される「デ・ミニミス(少額免税)制度」**が適用されていました。近年の変更(混乱の核心): 2025年8月末に、米国政府は、越境ECによる輸入増加やコンプライアンス強化を理由に、消費目的の貨物に対するデ・ミニミス制度の適用を停止しました)により、「消費を目的とする販売品」= 越境EC販売品に関して、アメリカ国内への配送を停止しています。
このように、世の中の状況を受けやすいのもEMSの特徴です。このような状況に対応するために、配送業者は複数選定しておくことが望ましいでしょう。
国際配送に慣れてきて、コストを安くしていきたいと考えた場合には、ECMSが便利です。ECMSは「物流業界のLCC」と呼ばれ、安価なコストで、国際配送が可能です。
このように、自社の越境ECのフェーズに応じて、また大切にしたいことや物量に応じて、宅配業者を選定していけると良いでしょう。改めて、重要なことは配送業者は複数選定して、あらゆる外部環境変化のリスクに備えることです。物量を担保し、コストを下げるためには、ある程度の依存は仕方ないことですが、1社への依存は可能な限り避けながら、リスクを回避したビジネススキームを検討していきましょう。
越境ECにおけるフルフィルメントサービス(FBAなど)の活用
越境ECを展開する際に、日本から個別で発送する負荷が大きい、また日本からの発送が、配送コスト及び、到着までのリードタイムの観点から競争優位性を阻害する可能性がある場合は、フルフィルメントサービスを利用するのも良いでしょう。例えば、モール型越境ECを展開する場合。アメリカ向け販売で、Amazon Globalを利用する際に、Amazonのアメリカ倉庫に商品を預け、国内から配送してもらうということを考えたり、韓国の配送スピードになれたCoupang(クーパン)で商品を販売する場合に、Coupangのフルフィルメントサービスを活用し、韓国に一括で納品して、商品を早期に届けてもらうなどです。
自社越境ECを展開する際にも、現地にフルフィルメントサービスをしてくれる優良なパートナーが見つかれば、フィルフィルメント委託を行い、現地から発送に切り替えることも一つの手になります。
フィルフィルメントサービスを利用する際は、具体的に下記の観点を意識しながら、サービスを選定します。
- 対応マーケットプレイス: Amazon、eBayなど、主要な販売チャネルとの連携実績があるか
- サービス範囲: 保管、ピッキング、梱包、発送だけでなく、現地での返品受付・再利用処理まで対応可能か
- 料金体系: 月額保管料、手数料、配送費が透明で、国際配送を1個ずつするよりもコストメリットが出るか
- 倉庫の立地: 配送リードタイム短縮のため、ターゲット国の主要都市圏に近いか
フィルフィルメントは初期の荷量が少ない時にはあまり検討する必要はないかもしれませんが、一つの物流の選択肢として、覚えておきましょう。
物流コストの構造と効率的な削減戦略
越境ECの成功において、物流会社との契約は単なる取引ではなく、コストと競争力を決定づける戦略的なパートナーシップです。契約においては、料金相場を理解し、賢く交渉し、そして隠れたコストを見落とさないことが極めて重要となります。
1. 越境EC物流の料金相場とコスト構造
越境ECの送料は、国内送料と比べて構造が複雑で、輸送距離、スピード、そして扱う貨物の特性によって大きく変動します。
(1) 基本料金と割引相場
国際宅配便(クーリエ)の料金は、航空会社の運賃、現地での集配費用、通関費用などがパッケージ化されていますが、その価格は基本的に出荷量に応じて決まります。
法人アカウントとして契約をすると、個人料金と比べ、EC事業者として法人アカウント(ビジネスアカウント)を契約するだけで、一般的に10%以上の大幅な割引運賃が適用されます。また、月間数百件以上の安定した出荷が見込まれる場合、さらに割引率は向上し、個別の優遇レート(カスタムレート)の交渉が可能になります。
(2) 容積重量(Volumetric Weight)の影響
国際輸送では、荷物の実重量ではなく、荷物のサイズ(体積)から計算される容積重量(チャージアブルウェイト)が料金の基礎となることがほとんどです。ほとんどの配送会社は「実重量」と「容積重量」を比較し、重い方を採用して送料を決定します。このため、軽くてかさばる商品(アパレル、ぬいぐるみなど)は、実際の重さよりも遥かに高額な容積重量で計算され、送料が跳ね上がるリスクがあります。梱包を工夫し、実重量を下げながら、容積重量も最小化するコツを見つけていきましょう。
2. 賢く契約を有利に進める交渉のコツ
物流会社との交渉では、単に「安くしてほしい」と伝えるのではなく、相手にとって魅力的な取引条件を提示することが鍵となります。
- 具体的な出荷量と成長予測の提示:物流会社は安定した物量を求めます。直近の実績だけでなく、「向こう1年で具体的な数量(例:月平均100件)を確約する」という姿勢を示すことで、より良い優遇レートを引き出せます
- 特定の重点ルートへの集中:すべての国で均一な割引を求めるのではなく、最も出荷量の多い国(例:アメリカ、台湾)を「重点ルート」として提示し、そのルートに特化した高い割引率を交渉します
- 相見積もりと競争の活用:複数のクーリエや物流代行業者から見積もりを取得し、それらを比較検討していることを伝えるのは有効な交渉手段です。ただし、価格だけでなくサービス品質やサポート体制も総合的に評価する姿勢を見せることが重要です。
3. 見落としがちな隠れコストと事前確認事項
基本の運賃だけでなく、契約書や見積書に隠れている付帯料金(サーチャージ)を把握しなければ、予期せぬコスト増に見舞われることになります。
- 輸送に関わる変動費 越境ECのコスト見積もりで最も変動しやすく、見落とされがちなのが、以下の変動費です。
- 燃油サーチャージ(Fuel Surcharge): 燃料価格の変動に応じて基本運賃に追加される費用で、毎月変動します。契約運賃に加えて、このサーチャージがどれだけ上乗せされるかを必ず確認しましょう。
- 戦争・危険地域サーチャージ: 特定の地域への配送に対して課される追加料金です。
- 配送・通関に関わる付帯費用:特に国際宅配便を利用する際に発生しやすい費用です。
- 遠隔地配達料(Out-of-Area Surcharge): 配送先住所が都市部から離れた「遠隔地」と指定されている場合に発生する追加料金。事前に自社の顧客の住所が該当しないか、チェックツールなどで確認が必要です。
- 通関手数料(ディスバースメント・フィー): 消費者(受取人)に関税を請求するDDU/DAP契約の場合、クーリエが現地の税関に立て替えた関税額に対し、徴収する手数料です。関税本体よりも、この手数料が高額になる場合があります。
- 住所訂正料: 顧客が入力した住所に誤りがあり、現地で配送業者が住所を訂正した場合に請求される手数料。
- 再配達料/保管料: 配達先に不在が続き、荷物が一定期間保管されたり、再配達を繰り返したりした際に発生する費用。
これらのコストが含まれているかも確認しつつ、最も安く、かつ品質よく送ってくれる国際配送業者を選定しましょう。また、上述の通り、1社だけを選定するのではなく、1社への依存リスクをなくし、複数社と契約することがリスク回避また、相見積もりによるコスト削減の観点でも重要です。
関税・通関の管理とリスク回避
関税・通関手続きのミスは、配送の遅延だけでなく、ペナルティや商品の没収にも繋がります。透明性の高い取引と、消費者への明確な告知が求められます。
関税の概要とDDP/DDUの選択
関税の徴収方法に関して、「インターコムズ」が定める重要な概念であるDDP、DAP(DDU)があります。DDP、DDU(DAP)は、いずれも仕向地(お客様の元)まで売り手が輸送責任を持つ条件ですが、「関税・消費税の支払い責任」が決定的に異なります。
- DDP (Delivered Duty Paid / 仕向地持込渡し・関税込み)
- 費用負担: 売り手(越境EC事業者)が輸送費、保険料、輸入関税・消費税の全てを負担
- 顧客体験: 注文時に支払総額が確定し、追加費用が一切発生しない、シームレスな購入体験を提供
- DAP (Delivered At Place / 仕向地持込渡し)
- 費用負担: 売り手が輸送費、保険料を負担します。輸入関税・消費税はお客様(買い手)が負担
- 顧客体験: 商品受け取り時、またはその前後に、お客様が運送業者から関税・税金の支払いを請求される
補足:DDUはインコタームズ2010で廃止され、DAPがその役割を引き継いでいますが、物流現場では「関税抜き」という意味でDDUという名称も慣習的に使われ続けています。
越境EC事業者と購入者視点から見たDDPとDAP(DDU)のメリット・デメリット
DDPとDAP(DDU)を越境EC事業者の視点と購入者の視点それぞれで比較すると、以下のメリット・デメリットが挙げられます。
DDPのメリット・デメリット
| DDP | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 事業者視点 | 売上・コンバージョン率の向上: 最終価格が明確なため、お客様の安心感が高まり、カゴ落ち率が大幅に減少安心感の向上: スムーズな配送は顧客満足度を大幅に向上させ、リピート購入に繋がる | 初期コスト・業務負荷増: 複雑な関税・税率を事前に把握し、計算・徴収・納税するためのシステム投資やオペレーション構築が必要 商品の価格が高く見える: 関税や納税代行の手数料が事前に商品価格に上乗せされているため、見た目の商品価格はDAPよりも高く見える |
| 購入者視点 | 安心・快適な購入体験: 注文時に支払総額が確定し、追加費用・手続きが一切不要なため、迅速かつ快適に商品を受け取れる | -(特にないので、DDPが理想) |
DAP(DDU)のメリット・デメリット
| DAP(DDU) | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 事業者視点 | オペレーションの簡易化: 関税計算・納税業務が不要で、初期の越境EC立ち上げが容易 | クレーム増大、信頼低下: お客様が予期せぬ費用を請求され、受け取り拒否やクレームにつながる最大の要因となる |
| 購入者視点 | 追加費用・不快感: 配送時に配送業者から関税や高額な手数料を請求されるため、不快感や「不当な二重請求」という印象を受ける 配送遅延リスク: 関税支払いのための連絡や手続きで、貨物が税関や配送業者の倉庫で足止めされ、配送が遅延する可能性 |
以上が、DDPとDAP(DDU)を比較したメリット、デメリットです。結論、どの越境EC事業者もDDP対策を行っていく必要があります。では、DDPにどのように対応していけば良いでしょうか。具体的なDDPへの対応方法については、別記事にまとめておりますので、ぜひご覧ください。
関税の検討にあたってのその他注意点
HSコードの正確な特定と申告
関税率や規制を決定づける国際的な品目分類コードがHSコード(Harmonized System Code)です。例えば、「革製(表面がプラスチック)のハンドバッグ」が4202.22というHSコードが設定されており、このコードによって、関税が決まります。
このHSコードにより、関税が決まるため、正確なHSコードの申告は、通関を円滑に進める上で不可欠です。誤ったHSコードを使用すると、本来よりも高い関税率が適用されたり、税関での審査が長期化し配送が大幅に遅延したり、最悪の場合、罰則や輸入拒否により、返却がある場合があります。扱う商品(素材、用途、機能など)に基づき、正確な6桁または10桁のHSコードを特定する必要があります。自社での判断が難しい場合は、通関業者や貿易コンサルタントといった専門家の助言を受けながら、正しいHSコードを理解すると良いでしょう。
輸入国のVAT/GST(消費税)制度への対応
関税だけでなく、輸入国が定める消費税(EUのVAT、オーストラリアのGSTなど)の徴収義務が、EC事業者側に課されるケースが増えています。EUのIOSSや、英国、オーストラリアなどで導入されている制度では、一定額以下の輸入取引について、EC事業者が販売時に現地の消費税を顧客から徴収し、輸入国に納税することが義務付けられています。DDPモデルを採用する場合、関税だけでなく、現地の消費税も正確に計算し、徴収・納税するシステムを構築しなければなりません。そして、対象国の税務当局への登録や、定期的な税金の振り込みが必要になります。
VAT/GST(消費税)制度については、別の記事で改めて、詳しくお伝えします。
購入者への明確な事前告知
DAP(DDU)モデルを選択する場合、関税に関するトラブルを避けるために、以下の点を購入手続きの明確な段階で告知する必要があります。
- 「商品価格には、輸入国の関税・消費税は含まれておりません。」
- 「商品到着時に、お客様ご自身で関税・消費税をお支払いいただく必要があります。」
- 「支払い拒否をされた場合、商品が日本へ返送される際の往復送料、または破棄費用はお客様のご負担となります。」
などの告知を、ECサイトのカート画面、チェックアウト画面、利用規約など、複数箇所にわかりやすく記載することで購入者と関税に対する期待値を合わせて、商品を届けることができます。関税に関して、明確に伝えることで、購入者の購入意欲に影響があるのではと感じることもありますが、トラブルを回避するためにも、DAP(DDU)を選択した場合は、必ず、明確に注意書きをしておきましょう。
越境ECでの商品梱包のポイントと返品物流の仕組み作り
越境ECでの商品梱包のポイント:通関要件と破損リスクの回避
国際輸送における梱包は、破損リスクを回避し、返品コストを抑える、購入者の満足度を最大限に高めるために、自社商品に合わせて、工夫ができることが望ましいです。また、ラベルの貼り付け等を適切に行うことで、関税を円滑に通るような工夫を凝らしておくことも重要です。
| 梱包要件 | 詳細 | 目的 |
|---|---|---|
| 耐久性の確保 | ダブルウォール(二重構造)の段ボール、適切な緩衝材で、中の商品が揺れないようにすることが重要 また、割やすい商品の場合には、段ボールの角に角あてを設置し、角からの衝撃をおさせることが重要 | 長距離・多段積載による破損リスク回避 |
| 防水性の確保 | 商品をビニールで個包装、または防水性の高いテープで密封 | 輸送中の湿気、結露、雨濡れによるカビ・品質劣化の回避。水滴がついていることで、配送時のの滑りを防止 |
| 適切なマーキング | 「FRAGILE(壊れ物)」「UP(天地無用)」などの明確な表記 | 取り扱い注意を促すことで、配達員が注意してくれる可能性も。ただし、国際輸送では過信は禁物 |
| ラベルの貼付 | 住所ラベル、インボイス、その他通関書類は剥がれないよう二重に貼付 | 通関要件を記載した伝票が剥がれないようにして、配送遅延を避ける |
| 原産国の明記 | 商品または梱包に「Made in Japan」など原産国を明記 | 通関時の原産地規則適用のため |
越境ECにおける返品物流の仕組み作りとコスト削減
上記で梱包について述べましたが、購入者満足度を高めていくために、もうひとつ「返品」は越境ECにおいて避けられない国際物流における対策であり、返品物流が重要になります。
返品に関して、国内ECでは返品率がそれほど高くなくても、海外だと30-40%が返品されるプラットフォームも存在し、日本より返品に慣れてしまっています。また、韓国のクーリングオフ制度は、商品を受け取った日または、契約内容を記載した書面を受け取った日から7日以内であれば、理由を問わず契約を解除できるとなっており、返品がしやすい仕組みになっています。
それゆえ、返品ということが起こる想定をしながら、返品物流を作っておくことが重要です。まず基礎的な対策としては、下記2点が購入者向けの配慮として、重要になります。
- 返品ポリシーの明確化: 「返品期間」「送料負担者」「返品不可の条件」を各国の消費者保護法に合わせてECサイトに明記
- 破損による返品の最小化: 返品率が高い商品を特定し、商品情報や梱包を見直し、破損を防止
次に、返品物流に関してですが、国内に返品をすると、購入者が国際配送で返品しないといけないという負担の増加につながり、また、国際配送料を負担する必要が越境EC事業者にも出るため、コストが増大します。そのため、下記のような対策により、返品を簡単にできる仕組みづくりができると良いでしょう。
- 現地返品受付拠点の設置:お客様からの返品を直接日本に戻すのではなく、現地に返品受付窓口(現地3PL倉庫など)を設ける。そうすることでお客様の国際返品送料負担が不要になり、顧客満足度が向上。日本に送り返す時は、多数の返品をまとめて日本に送り返すことで、国際輸送費の単価を下げられる
- 返品商品の現地リサイクル・転売:返品された商品が軽微な不良品であれば、現地で検品・修理を行い、現地で再販することで、日本への国際返品コストと再輸入関税を削減する
- 一定金額以下の「返品不要」オプション:商品代金が国際返品送料を下回る場合、「商品代金を返金するが、返品は不要」とするオプションを提供し、物流コストをゼロにする
越境EC物流は「攻め」の戦略
越境ECの成功は、単に良い商品を開発するだけでなく、それを効率的かつ確実に世界中に届ける「物流インフラ」の構築にかかっています。本記事で解説したように、物流を戦略的に捉え、以下のロードマップを実行に移してください。
- 国際物流の理解: 物流の全体像を理解し、必要な検討事項を抑える
- 賢明な業者選定: 料金相場、隠れコスト、サポート体制を見極め、国際宅配便、郵便などを組み合わせる
- コストの最適化: 梱包を見直し、容積重量を削減する努力を継続する
- コンプライアンスの徹底: HSコード、インボイスを正確にし、DDP/DDUを戦略的に選択して、関税対策を適切に行う
- 顧客体験の向上: あらゆるケースを想定し、返品物流などの仕組み化し、顧客の利便性を高める
物流を「コストセンター」ではなく「競争優位性の源泉」と捉え、戦略的なパートナーシップと効率化を追求することが、グローバル市場での持続的な成長を可能にします。競合優位性、成功の鍵として越境EC物流を理解し、検討を進めていってください。

