M&Aの解説をする
「まーくん」

まずはM&Aの中身の検討を進める前に、M&Aとはどういうものなのか、日本国内及び中小企業で活用されている意義及びその状況について理解しましょう。

この記事で押さえるポイント

  • M&Aの概要を理解する
  • 日本国内のM&Aの活用状況について理解する
  • 中小企業M&Aの意義を理解する

このステップのまとめ

M&Aとは、企業の合併や買収を通じた成長戦略の一つの方法です。特に日本においては中小企業の事業承継問題への解決策としても注目されています。経営者の高齢化や後継者不足に直面している中小企業が多く、M&Aにより経営資源の流出を防ぎ、生産性を向上させることが可能になります。

また、新市場への進出や技術獲得、製品ラインナップの拡充など、企業の競争力強化と収益性向上のためにも活用されています。政府もM&Aを支援する政策を展開し、事業承継や成長戦略の一環としてM&Aの重要性が高まっています。

各ポイントの解説

✔ M&Aの概要を理解する

M&Aは「Mergers and Acquisitions」の略称で、合併(Merger)と買収(Acquisition)を指します。この用語は、一方の企業が別の企業を合併する場合、または一方の企業が他方の企業の株式や事業を取得することを含む、企業間の資本的な結合や取得の方法を表します​​​​。

買収は、 ある企業が他の企業の経営権を取得し、企業が特定の市場に迅速に進出、特定の技術や専門知識を獲得したりする効果的な手段となります。

合併は、ある企業が他の企業を法人ごと吸収し、リソースを統合することで、市場での競争力を高めることが期待されます。

M&Aは、企業の成長戦略、市場シェアの拡大、製品ポートフォリオの強化、効率性の向上、または事業承継計画の一環として行われます。近年では、グローバル化や技術革新の進展に伴い、多様な産業でM&Aが活発に行われています

✔ 日本国内のM&Aの活用状況について理解する

日本国内のM&Aの市場規模は拡大傾向にあります。1990年代はバブル崩壊後の不良債権処理に伴う事業売却が増加し、それに伴って投資ファンドも台頭する形となり、M&Aに関連する制度の整備も進みました。

特に2010年代に入ってからは件数が増加し、国内企業同士のM&Aだけでなく、海外企業が関与するM&Aも増えています。2017年にはM&A件数が3千件を記録し、2019年のM&A件数は4千件を突破、コロナウイルス感染症の影響で減少に転じた後の2022年には4,304件に達し、過去最多を記録しました​​。2023年の件数は4,015件と減少しましたが、依然高いペースを維持しています。

M&A市場の活性化には、複数の背景があります。一つは、日本国内の経済環境の変化です。多くの中小企業やベンチャー企業がM&Aを成長戦略の一つとして利用しており、かつては大手企業や海外企業の独壇場だったM&A市場が、より多様な企業によって活用されるようになっています​​。

また、事業承継問題もM&Aの増加に寄与しています。後継者不足に直面している多くの中小企業が、M&Aを通じて事業を継続する道を選んでいます。国内・中小企業のM&A件数の推移を見ると、増加の背景には中小企業の事業承継が要因となっている側面も存在していると考えられます。

✔ 中小企業のM&Aの意義を理解する

中小企業庁によると、2025年には中小・個人企業の経営者の約245万人、全体の約6割以上の経営者が70歳を超えると推定されています。

また、中小企業127万社で後継者が不在になると試算されています。廃業予定の企業は約5割が経常黒字であり、日本全体で経営資源の有効活用には余地があると考えられています。

その結果、2025年までに650万人の雇用、22兆円のGDPが失われる可能性があると発表されています。後継者問題・廃業が構造的に増えていく時代においては、M&Aは事業承継の手段として重要な機能を果たすと考えられます。

中小企業庁によると中小企業M&Aには、下記の意義があるとまとめられています。

  • 経営資源の散逸の回避: 経営者の高齢化や感染症の影響等による廃業に伴って経営資源が散逸する事態を回避する
  • 生産性向上等の実現: 規模拡大等による生産性向上や、新たな日常に対応するための事業再構築等を実現する
  • リスクやコストを抑えた創業: 他者の経営資源を引き継いで行う、リスクやコストを抑えた創業を促す

後継者不在で廃業を検討している企業にとって、M&Aは事業を継続させる機会を提供します。新たな経営者や企業が事業を引き継ぐことで、従業員の雇用や顧客サービスの継続が可能になります​​​​。

事業承継型M&Aは、譲受主企業が新しい経営資源や技術、市場アクセスを獲得することで、更なる成長を遂げるチャンスを提供します。これを通じ、譲り受けされる企業や事業にとっても競争力を強化し、新たな市場での機会を探ることが可能になります​​。

また、事業承継は多くの不確実性やリスクを伴いますが、M&Aを通じた承継では、譲受主企業の経験やリソースを活用することで、これらのリスクを軽減することにも寄与すると考えられます。

M&Aを通じた事業承継はオーナーである経営者にとっても、メリットが存在します。つまり、事業の価値を正確に評価し、適正な価格で取引を行い、自身の企業や事業を譲り渡すことにより、適切な対価を得ることが可能になります​​​​。

加えて、事前に詳細な移行計画を立てることを通じて、事業のスムーズな移行の実現にも寄与します。これにより、顧客や従業員に対する影響を最小限に抑えつつ、事業の継続を図ることができます

また、事業承継目的だけでなく、中長期的な市場規模の縮小や人口減少等の状況下で、新たな市場への進出や新技術の獲得、製品ラインナップの拡充など事業の成長と拡大を目的としたM&Aが行われています。これにより、競争力の向上や収益性の増大を図ることができます。

その他、新たな創業の形としても活用されています。

このように後継者問題の進展により、事業承継におけるM&Aの意義が一層重みを増す中で、売上高1億円超の中小企業を対象とする事業承継を含む国内M&Aの潜在市場規模は約13兆5千億円と、調査会社のレポートでは推定されています。

成長戦略型を含めた中小M&A全体(約20万社)のうち、社長年齢が60歳以上の事業承継型M&Aが約9万3千社と約47%を占める計算になり、事業承継型M&Aは2022年の約8万6千社から、2035年に約9万5千社まで増加し、事業承継型の市場規模は、約6兆3千億円となる計算とされています。

また政府も、事業承継問題の解決策の一つとして、M&Aを有効活用するために、特定の条件下でのM&Aなど、政府の規制緩和措置や税制優遇を活用できるパターンを増やしています。

そのため、事業承継を考えるオーナー経営者の視点としても、今後更なる成長を遂げたい企業にとっても、M&Aの活用を一つの選択肢として入れることは益々重要になっていくことが予想されます。

よくある失敗事例

よくある失敗事例

  • Copilotが利用できるツールや言語を理解せず、期待してしまう

    Microsoft ProやCopilot Proを活用する際には、その機能の限定性や言語サポートの範囲を理解しておくことが重要です。特に、Excel上での日本語サポートが限定的である点や、PowerPointで実用レベルのプレゼン資料が生成できない場合がある点に留意しましょう​​。

よくある質問

M&Aを活用する企業が増えているのはなぜですか?

事業承継を検討する経営者の増加、投資資金回収手段としてM&Aを用いる経営者の増加、選択と集中に向けた企業再編手段として活用する企業の増加など譲渡主(売主)側での活用手段に関する認知が高まっていることに加え、譲受主(買主)側となる立場の企業においても成長戦略実現の手段として活用する機会が増えていることが要因と考えられます。

また、それらを支えるために政府においても規制緩和や税制優遇など取り巻く環境が徐々に変化していることが下支えしているとも考えられます。

M&Aは資金に余裕のある大企業が行うものと理解していたのですが、違うのですか?

もちろん大企業はM&Aを有効活用しているケースも多いです。一方で、上記の通り、中小企業の事業承継や特に最近では個人における新たな創業の形としてM&Aを行う人も増えています。