この記事では、中古リノベーション住宅の流通プラットフォーム「カウカモ」を運営するツクルバの2024年7月期第3四半期決算説明資料を初心者にもわかりやすく解説します。

ツクルバは、テクノロジーとデザインを融合させて、中古住宅流通市場に新たな風を吹き込んでいる企業です。今回の決算では、売上高や利益が大幅に改善し、成長を加速させていることがわかりました。

この記事を読むことで、ツクルバのビジネスモデルや成長戦略、今後の展望について深く理解することができます。

【要約】好調な業績を背景に、さらなる成長を目指すツクルバ

ツクルバの2024年7月期第3四半期決算は、売上高、売上総利益、営業利益ともに過去最高を更新しました。好調の要因は、主力事業であるカウカモ事業の成長です。カウカモは、オンラインとオフラインを組み合わせた独自のサービスで、中古住宅の流通を変革しています。

今回の決算では、営業利益が大幅に改善したことも注目すべき点です。これは、全社的な生産性向上とコスト管理の成果です。

今後の展望としては、さらなる成長に向けて、カウカモ事業への投資を強化する方針です。また、M&Aなどの成長投資機会にも積極的に取り組む姿勢を示しています

【事業の特色】テクノロジーとデザインで中古住宅流通をアップデート

ツクルバは、テクノロジーとデザインの力を活用して、中古住宅の流通をよりスムーズで魅力的なものにしています。

カウカモ事業では、オンラインプラットフォームを通じて、物件探しから内見、購入、リノベーションまで、一連の流れをサポートしています。また、オフラインのエージェントが、顧客一人ひとりに寄り添った丁寧な接客を提供していることも強みです。

さらに、蓄積されたユーザーデータや空間データなどを活用し、顧客のニーズに合った物件提案やリノベーションプランの提供を行っています。

【会社概要】2011年創業の東証グロース上場企業

株式会社ツクルバ

  • 本社所在地:東京都渋谷区恵比寿
  • 設立:2011年8月
  • 代表取締役CEO:村上浩輝
  • 事業内容:中古・リノベーション住宅の流通プラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」事業
  • 従業員数:194名(2023年7月末時点)

【対象市場と競合】拡大する中古住宅市場で独自のポジションを確立

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【中古・リノベーション住宅市場】成長を続ける巨大市場

ツクルバが事業を展開する中古・リノベーション住宅市場は、20兆円規模への成長が見込まれる巨大市場です。

背景には、中古住宅の市場構造の変化があります。2025年には、築25年以上のいわゆる「築古」物件が中古マンション市場の約半分を占めると予想されています。それに伴い、リノベーションによって中古物件を自分好みにカスタマイズする需要も増加しています。

また、新築マンションの供給戸数と比較すると、中古マンションの成約件数は景気変動の影響を受けにくいという特徴があります。これは、住宅購入が結婚や出産、転勤といったライフイベントに左右されることが多いためです。新築物件は景気の影響を受けやすい一方で、中古物件は安定した需要が見込めるため、市場の成長は今後も継続すると考えられます。

【競合状況】不動産ポータルサイトや仲介事業者との競争

ツクルバの競合としては、不動産ポータルサイトや仲介事業者が挙げられます。不動産ポータルサイトは、物件情報の掲載数や検索機能などが強みですが、物件情報の質や顧客体験という点では課題が残ります。

仲介事業者は、物件探しから契約までをサポートする人的サービスを提供していますが、物件情報が少ない、営業担当者との相性が合わないなどの不満を抱える顧客も少なくありません。

【ツクルバのポジション】テクノロジーとデザインで差別化

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ツクルバは、テクノロジーとデザインを融合させた独自のサービスで、これらの競合との差別化を図っています。

カウカモでは、オンラインプラットフォーム上で物件探しから内見予約、さらにはAIを活用した物件価格査定まで、一連の流れをサポートしています。また、経験豊富なエージェントが、顧客一人ひとりに寄り添った丁寧な接客を提供していることも強みです。

さらに、蓄積されたユーザーデータや空間データなどを活用し、顧客のニーズに合った物件提案やリノベーションプランの提供を行っています。

このように、ツクルバは、オンラインとオフラインの融合、そしてテクノロジーとデザインの融合によって、独自のポジションを確立しています。

【事業概要】カウカモ事業が収益の柱

ツクルバの事業は、カウカモ事業が中心です。カウカモ事業は、以下の2つのサービスから構成されています。

  • カウカモプラットフォーム事業:中古・リノベーション住宅の物件情報を掲載するプラットフォームの運営
  • カウカモエージェントサービス事業:顧客の物件探しから購入、リノベーションまでをサポートするエージェントサービス

これらのサービスを通じて、ツクルバは、顧客に寄り添いながら、中古住宅の購入体験を向上させています。

【経営戦略】成長加速に向けた投資とM&Aも視野に

  1. カウカモ事業の成長
  2. 全社的な生産性向上
  3. 成長機会への投資

1.カウカモ事業の成長戦略
カウカモ事業の成長戦略は、「流通規模の拡大」と「付加価値獲得領域の拡大」という2つの側面からアプローチしています。

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  • 流通規模の拡大(GMVの拡大)
    • サービス改善によるGMVの拡大:接客サービスの改善やマーケティング強化を通じて、顧客獲得と成約率向上を目指しています。また、リノベーションサービス・商品の拡充もGMV拡大に貢献しています。
    • 売/買両サイドの好循環による成長サイクル:買主が増えれば取引が増え、それが売主の参加意欲を高め、さらに買主にとって魅力的な物件が増えるという好循環を生み出すことで、成長を加速させています。
  • 付加価値獲得領域の拡大(テイクレートの向上)
    • 構造的なテイクレート向上:中古不動産流通のバリューチェーン全体をカバーすることで、テイクレートの構造的な向上を目指しています。具体的には、個人売主仲介や自社企画商品の統合、ウルカモの収益化などを推進しています。

2.全社的な生産性向上
ツクルバは、全社的な生産性向上にも力を入れています。間接業務体制の効率化や主要事業活動における費用対効果の改善などを進めることで、持続的な収益成長を目指しています。

3.成長機会への投資
ツクルバは、成長機会への投資にも積極的です。

  • カウカモ事業への投資強化:マーケティング強化や営業組織の拡大など、カウカモ事業への投資を強化することで、さらなる成長を目指しています。
  • 新規事業やM&A:新規事業の立ち上げやM&Aなど、新たな成長機会を積極的に模索しています。

これらの戦略を通じて、ツクルバは中古住宅流通市場における存在感を高め、業界のリーダーとしての地位を確立することを目指しています。

【財務概要】過去最高益を達成し、今後の成長に期待

ツクルバの2024年7月期第3四半期累計(2月〜4月)の連結業績は、売上高37億6,700万円(前年同期比41%増)、営業利益1億7,400万円(前年同期比3億7,600万円増)と、大幅な増収増益を達成しました。

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好調の要因は、主力事業であるカウカモ事業の成長です。カウカモ事業の売上総利益は、前年同期比29%増と大きく伸長しました。これは、GMV(流通総額)が堅調に推移したことに加え、テイクレート(収益獲得率)が向上したことが主な要因です。テイクレート向上は、自社企画商品やリノベーションサービスの販売増が貢献しています。

また、営業利益の大幅な改善も注目すべき点です。これは、全社的な生産性向上とコスト管理の成果です。販管費を前年同期比で1%抑制し、売上総利益販管費率を19%改善しました。

自己資本比率は37%と、健全な水準を維持しています。しかし、当四半期においては、主に自社企画商品の拡大により、短期有利子負債が増加しました。

【通期業績予想】大幅な増収増益を見込む

2024年7月期の通期連結業績予想は、売上高52億円、営業利益1億5,000万円と、前期比で大幅な増収増益を見込んでいます。

ただし、第4四半期においては、来期に向けた先行投資として、営業組織の拡大やマーケティング費用を増やす計画であるため、利益は横ばいになると予想されています。

【クロスSWOT分析】強みを生かし、弱みを克服

ツクルバの強み、弱み、機会、脅威を分析し、それぞれの組み合わせからどのような戦略が考えられるのかを検討します。

1. 強み×機会

  • 独自のサービス×中古・リノベーション住宅市場の拡大
    • ツクルバは、テクノロジーとデザインを融合させた独自のサービスを強みとしています。中古・リノベーション住宅市場が拡大している機会を捉え、この強みを生かして市場シェアを拡大していく戦略が考えられます。具体的には、オンラインとオフラインの連携をさらに強化し、顧客体験を向上させることで、より多くの顧客を獲得できます。
  • 蓄積されたデータ×テクノロジーの進化
    • ツクルバは、豊富なユーザーデータや空間データを保有しています。テクノロジーの進化に合わせて、これらのデータを活用した新たなサービス開発が期待できます。例えば、AIを活用した物件提案やリノベーションプランの自動生成などが考えられます。

2. 強み×脅威

  • 独自のサービス×競合他社の台頭
    • 競合他社の台頭という脅威に対しては、ツクルバは独自のサービスをさらに磨き上げ、差別化を図る必要があります。具体的には、テクノロジーを活用した新たなサービス開発や、顧客とのエンゲージメントを高めるためのコミュニティ形成などが考えられます。
  • 蓄積されたデータ×不動産市場の変動
    • 不動産市場の変動リスクに対しては、蓄積されたデータを活用して市場予測を行い、事業戦略に反映させることが重要です。また、市場の変動に左右されない安定的な収益源を確保することも必要です。

3. 弱み×機会

  • 認知度が低い×中古・リノベーション住宅市場の拡大
    • 中古・リノベーション住宅市場の拡大は、ツクルバの認知度向上のための大きな機会です。市場の成長に合わせて、積極的にマーケティング活動を行い、認知度を高めていく戦略が考えられます。
  • 認知度が低い×地方都市への展開
    • 地方都市への展開は、新たな顧客層を獲得する機会ですが、同時に認知度の低さが課題となります。地方都市でのマーケティング戦略を強化し、地域に根差したサービス展開を行うことが重要です。

4. 弱み×脅威

  • 認知度が低い×競合他社の台頭
    1. 競合他社が台頭する中で、認知度が低いことは大きな脅威です。認知度向上のためのマーケティング戦略を強化し、競合との差別化を図ることが急務です。
  • 中古住宅市場の競争激化×不動産市場の変動
    1. 中古住宅市場の競争激化と不動産市場の変動という複合的な脅威に対しては、市場の動向を注視しながら、柔軟な事業戦略を展開することが求められます。例えば、市場のニーズに合わせたサービスの開発や、新たな事業領域への進出などが考えられます。

【考えられるシナジー】他社との連携で新たな価値を創出

ツクルバとのシナジー創出の可能性について、以下の3つの企業タイプを想定し、それぞれのシナジーを深掘りします。

1. 不動産デベロッパー

  • シナジー:
    • 物件情報の相互活用: ツクルバが持つ中古住宅の流通プラットフォーム「カウカモ」と、デベロッパーの新築物件情報を連携させることで、顧客にとってより幅広い選択肢を提供できます。
    • リノベーション連携: デベロッパーが手掛ける新築物件に、ツクルバのリノベーションノウハウを組み合わせることで、付加価値の高い物件を開発できます。
    • データ活用: ツクルバが蓄積した顧客データや空間データを活用し、デベロッパーは顧客ニーズに合致した物件開発やマーケティング戦略を展開できます。
  • 具体的な連携例:
    • 新築マンション購入検討者に対して、カウカモのリノベーション済み中古物件を提案する
    • デベロッパーのモデルルームに、ツクルバのリノベーション事例を展示する
    • 共同で、新たなライフスタイルを提案する住宅ブランドを立ち上げる

2. 金融機関

  • シナジー:
    • 住宅ローン連携: ツクルバの顧客基盤と金融機関の住宅ローン商品を連携させることで、顧客にとってよりスムーズな住宅購入体験を提供できます。
    • リノベーションローン連携: ツクルバのリノベーションサービスと金融機関のリノベーションローンを連携させることで、顧客のリノベーション資金調達を支援できます。
    • データ活用: ツクルバが蓄積した顧客データや不動産データを活用し、金融機関はより精度の高い融資審査やリスク管理を行えます。
  • 具体的な連携例:
    • カウカモ上で、金融機関の住宅ローン事前審査を受けられるようにする
    • ツクルバのリノベーションプランに合わせた、金融機関のリノベーションローン商品を開発する
    • 共同で、住宅購入者向けの資産運用セミナーを開催する

3. リノベーション事業者

  • シナジー:
    • 集客強化: ツクルバの集客力とリノベーション事業者の施工力を組み合わせることで、より多くの顧客にリノベーションサービスを提供できます。
    • ワンストップサービス: カウカモのプラットフォーム上で、物件探しからリノベーションまでをワンストップで提供することで、顧客の利便性を向上させられます。
    • 品質向上: ツクルバの品質管理基準とリノベーション事業者の施工技術を組み合わせることで、より高品質なリノベーションサービスを提供できます。
  • 具体的な連携例:
    • カウカモ上で、リノベーション事業者の施工事例を紹介する
    • ツクルバの物件情報とリノベーション事業者のプランを組み合わせた、パッケージ商品を開発する
    • 共同で、リノベーションに関するワークショップやイベントを開催する

これらのシナジーは、ツクルバが目指す「中古住宅流通のバリューチェーン全体をカバーする」という戦略とも合致しています。 ツクルバは、これらのシナジーを最大限に活用することで、中古住宅市場におけるプレゼンスをさらに高め、業界のリーダーとしての地位を確立していくことが期待されます。

【考えられるM&Aや資本業務提携のアイディア】

買収企業になる場合

  • 地方の中小不動産会社:ツクルバは現在、首都圏を中心に事業を展開していますが、地方都市への進出を成長戦略の一つとして掲げています。地方の中小不動産会社を買収することで、地域における顧客基盤や物件情報を一気に獲得できます。また、ツクルバが持つオンラインプラットフォームやテクノロジーを活用することで、地方の中小不動産会社の業務効率化やサービス向上を支援できます。
  • リノベーション事業者:ツクルバは、中古住宅のリノベーションに力を入れています。リノベーション事業者を買収することで、より質の高いリノベーションサービスをワンストップで提供できるようになります。また、リノベーション事業者の持つノウハウや技術を活かして、新たなリノベーションプランを開発することも可能です。
  • インテリア・家具販売会社:ツクルバは、中古住宅の購入者に対して、インテリアや家具の販売も行っています。インテリア・家具販売会社を買収することで、商品のラインナップを拡充したり、オリジナル商品の開発を進めたりすることができます。また、ツクルバが持つ顧客基盤を活用して、インテリア・家具販売会社の販路を拡大することも可能です。

対象企業になる場合

  • 大手不動産会社:大手不動産会社は、全国に広がる営業網や豊富な物件情報を持っています。ツクルバと資本業務提携することで、カウカモの認知度を向上させ、顧客基盤を拡大できます。また、ツクルバのテクノロジーを活用して、大手不動産会社のDXを推進することも可能です。
  • 大手金融機関:ツクルバは、住宅ローンの提供やリノベーションローンの仲介を行っています。大手金融機関と資本業務提携することで、より幅広い金融商品を提供できるようになります。また、ツクルバが持つ顧客データや不動産データを活用して、新たな金融商品の開発につなげることも可能です。
  • 大手住宅設備メーカー:ツクルバは、リノベーション事業者やインテリア・家具販売会社と連携しています。大手住宅設備メーカーと資本業務提携することで、住宅設備の販売チャネルを拡大できます。また、ツクルバが持つ顧客データや空間データを活用して、新たな住宅設備の開発につなげることも可能です。

これらの企業とのM&Aや資本業務提携は、ツクルバの成長をさらに加速させる可能性を秘めています。今後の展開に注目していきましょう。

【まとめ】中古住宅市場の成長を牽引するツクルバの未来に期待

ツクルバは、テクノロジーとデザインの力を駆使して、中古住宅市場に新たな価値を提供しています。

今回の決算では、好調な業績と今後の成長に向けた積極的な姿勢が伺えました。M&Aなどの成長投資機会にも積極的に取り組む姿勢を示しており、今後の展開から目が離せません。

中古住宅市場の成長とともに、ツクルバがどのような進化を遂げるのか、注目していきましょう。