ジーニーは、急成長を遂げているアドテクノロジー企業です。最新のAI技術を活用した広告プラットフォームやマーケティングSaaS事業を展開しており、日本のみならずアジアへの貢献も目指しています。

この記事では、ジーニーの「事業計画及び成長可能性に関する事項」の資料を元に解説します。市場環境や競合との関係、財務状況、そして今後の経営戦略まで、余すところなく掘り下げていきます。

ジーニーの成長の秘訣や、今後の展望を知りたい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。この記事を読めば、ジーニーの過去から未来までを深く理解できるはずです。

ジーニーの成長戦略と今後の展望

ジーニーは、2024年3月期に売上高80億円を達成し、24%の成長を遂げたものの、利益面では課題が残りました。しかし、これは主に米国市場の金利上昇や人件費増加などの外的要因によるものです。

このような状況下でも、ジーニーは成長を止めません。むしろ、逆境をチャンスと捉え、さらなる飛躍を目指しています。そのために、広告プラットフォーム事業では動画領域やエンタープライズ領域の拡大に注力し、マーケティングSaaS事業ではエンタープライズ層へのさらなる浸透を図ります。また、海外事業においても、国内事業との連携を強化し、新たな市場開拓を進めていきます。

ジーニーの強みは、広告プラットフォーム事業とマーケティングSaaS事業の両輪で事業を展開している点にあります。これにより、多角的な視点から顧客のニーズに応え、高い顧客満足度を実現しています。さらに、最新のAI技術を活用したサービス開発にも積極的に取り組み、競合との差別化を図っています。

ジーニーは、「誰もがマーケティングで成功できる世界を創る」というビジョンを掲げ、今後も成長を続けていきます。そのために、2025年には売上高162億円~202億円、2030年には誰もがマーケティングで成功できる世界を国内で限定的に実現することを目指しています。

会社概要

ジーニーは、2010年に設立されたマーケティングテクノロジー・AI企業です。東京・新宿に本社を置き、従業員数は617名(2023年3月末時点)です。広告プラットフォーム事業、マーケティングSaaS事業、海外事業の3つの事業を柱としています。

ジーニーの株主には、代表取締役社長の工藤智昭氏をはじめ、ソフトバンク株式会社、個人投資家などが名を連ねています。

市場の概要と競合状況

ジーニーは、インターネット広告市場とマーケティングSaaS市場で事業を展開しています。

インターネット広告市場は、世界的に成長を続けており、特に動画広告市場は急速な拡大が見込まれています。しかし、競争も激化しており、GoogleやFacebookなどの巨大プラットフォーマーとの競争が激化しています。

マーケティングSaaS市場も、市場規模が拡大しており、様々な企業が参入しています。ジーニーは、この市場において、広告プラットフォーム事業と連携した独自のサービスを提供することで、競合との差別化を図っています。

ジーニーは、競合他社に対して、広告プラットフォームとマーケティングSaaSプロダクトを両方提供できるという点でユニークなポジションを確立しています。また、高い技術力を活かして、顧客企業のニーズを捉えた新しい価値を創出し、収益最大化に貢献しています。

事業概要

ジーニーは、広告プラットフォーム事業とマーケティングSaaS事業の2つの事業を展開しています。

1. 広告プラットフォーム事業

ジーニーの広告プラットフォーム事業は、SSP(サプライサイドプラットフォーム)とDSP(デマンドサイドプラットフォーム)の2つのサービスを提供しています。

SSPは、メディアが広告枠を販売するためのプラットフォームで、ジーニーは国内最大規模の広告在庫を保有しています。DSPは、広告主が広告枠を購入するためのプラットフォームで、ジーニーは高品質な視聴者を低単価で集客できるという強みを持っています。

2. マーケティングSaaS事業

ジーニーのマーケティングSaaS事業は、集客から販促、受注までを一貫して実行・管理できるプラットフォーム「GENIEE」を提供しています。GENIEEは、SFA/CRM、MA、CHAT、SEARCH、ANALYTICSなど、様々な機能を備えており、企業のマーケティング活動を総合的に支援します。

経営戦略

ジーニーは、2024年7月にソーシャルワイヤー社を子会社化する予定です。ソーシャルワイヤー社は、デジタルPR事業を中心に事業展開しており、リリース配信、インフルエンサーPR、クリッピング、リスクチェックなどのサービスを提供しています。

このM&Aにより、ジーニーはメディア連携やクロスセルなど、広告プラットフォーム事業とのシナジー効果が期待できます。また、ソーシャルワイヤー社のデジタルPR事業のノウハウを活用することで、ジーニーのマーケティングSaaS事業の強化にもつながると考えられます。

財務概要

FY2023の業績

2023年の通期業績は、売上収益が80.1億円と前年比24%増を達成しました。これは、既存事業が堅調に成長したおかげです。しかし、営業利益は15.3億円と前年比で減少しています。これは、アメリカ市場の金利上昇や人件費増加などの影響を受けたと考えられます。

セグメント別の業績

セグメント別に見てみると、広告プラットフォーム事業は堅調に成長し、目標を達成しました。特に、動画領域やエンタープライズ領域での成長が目立ちました。

一方、マーケティングSaaS事業と海外事業は、目標には届きませんでした。マーケティングSaaS事業では、エンタープライズ顧客の獲得に時間がかかったこと、海外事業では、北米の広告市況が改善しなかったことが要因として挙げられます。

費用面の動向

2023年は、人件費や外注費、広告宣伝費、支払手数料などの費用が増加しました。特に、人件費の増加は、Zelto社の子会社化による影響が大きいと考えられます。

FY2024の業績見通し

2024年の通期業績予想は、売上収益102億円、売上総利益80億円、営業利益23億円と、力強い成長を見込んでいます。

広告プラットフォーム事業では、大手代理店との取引拡大や動画領域、エンタープライズ領域の成長を見込んでいます。マーケティングSaaS事業では、CHAT、SFA/CRM、MAのエンタープライズ領域での成長が期待されています。海外事業では、国内事業とのクロスセル強化や新たなメディア開拓により、20%以上の売上成長を見込んでいます。

財務戦略

ジーニーは、Zelto社買収に伴う借入金の返済を営業キャッシュフローで行う計画です。また、ソフトバンク社から取得した自己株式については、プライム市場変更承認時の処分や利益による消却を検討しています。

ジーニーは、今後も事業投資やM&Aを積極的に行いながら、成長を加速させていく方針です。

財務指標

2023年のROEは10.9%、調整後営業利益率は7.2%でした。これは、目標としていた数値には届きませんでしたが、2024年にはこれらの指標も改善する見込みです。

ジーニーは、2020年から2023年にかけて売上総利益で年平均33%の成長を遂げており、今後も27%の成長を目指しています。

クロスSWOT分析

Strengths (強み)

  • 広告プラットフォーム事業とマーケティングSaaS事業の両輪で事業を展開
  • 高い技術力を活かしたサービス開発
  • 国内最大規模の広告在庫を保有
  • エンタープライズ層への高い浸透率
  • 顧客満足度の高いサービス提供

Weaknesses (弱み)

  • 利益率の改善
  • 海外事業の拡大

Opportunities (機会)

  • インターネット広告市場、特に動画広告市場の成長
  • マーケティングSaaS市場の拡大
  • ソーシャルワイヤー社とのシナジー効果による事業拡大
  • AI技術の活用によるサービスの高度化

Threats (脅威)

  • 競合の激しいインターネット広告市場における競争激化
  • Googleによるサードパーティークッキー規制による影響

ジーニーとの考えられるシナジー

ジーニーは、広告プラットフォーム事業とマーケティングSaaS事業という2つの異なる事業を展開しており、この2つの事業間のシナジーを活かすことで、以下のような具体的なメリットが考えられます。

  1. データ連携によるマーケティング効果の最大化:
    • 広告プラットフォーム事業で得られた膨大な量のユーザーデータ(広告接触情報、興味関心、デモグラフィック情報など)を、マーケティングSaaS事業の顧客管理システムやMAツールに連携させることで、顧客セグメントの精緻化やパーソナライズされたマーケティング施策の実施が可能になります。
    • 逆に、マーケティングSaaS事業で蓄積された顧客の行動データや属性データなどを広告プラットフォーム事業に活用することで、より効果的なターゲティング広告配信や広告クリエイティブの最適化を実現できます。
  2. ワンストップでのマーケティングソリューション提供:
    • 広告プラットフォーム事業とマーケティングSaaS事業をワンストップで提供することで、顧客企業はそれぞれのサービスを個別に導入・運用する手間やコストを削減できます。
    • また、ジーニーは、顧客企業のマーケティング課題に対して、広告配信だけでなく、顧客管理、データ分析、営業支援など、包括的なソリューションを提供できます。
  3. クロスセルによる収益拡大:
    • 広告プラットフォーム事業の顧客に対して、マーケティングSaaS事業のサービスをクロスセルすることで、顧客単価の向上や解約率の低下に貢献できます。
    • 同様に、マーケティングSaaS事業の顧客に対して、広告プラットフォーム事業のサービスをクロスセルすることで、新たな収益源の確保に繋がります。
  4. 事業間のノウハウ共有によるサービス向上:
    • 広告プラットフォーム事業で培った広告配信やターゲティングのノウハウをマーケティングSaaS事業に活かすことで、より効果的なマーケティングオートメーションや顧客コミュニケーションを実現できます。
    • また、マーケティングSaaS事業で得られた顧客の行動データやニーズを広告プラットフォーム事業にフィードバックすることで、広告配信システムの改善や新機能の開発に繋げられます。
  5. ブランド価値向上:
    • 広告プラットフォーム事業とマーケティングSaaS事業の両方を手掛ける企業として、ジーニーはマーケティング領域における総合的な専門性をアピールできます。
    • これにより、顧客企業からの信頼感やブランド認知度を高め、より多くの顧客獲得に繋がると期待されます。

このように、ジーニーは、広告プラットフォーム事業とマーケティングSaaS事業を連携させることで、様々なシナジー効果を生み出し、競争優位性を高めています。これらのシナジー効果は、顧客企業にとっての価値向上だけでなく、ジーニー自身の事業成長にも大きく貢献すると考えられます。

ジーニーが「買収企業」及び「対象企業」になるM&Aや資本業務提携について、資料の内容を踏まえて検討します。

考えられるM&Aや資本業務提携のアイディア

買収企業として考えられるM&Aや資本業務提携

ジーニーは広告プラットフォーム事業とマーケティングSaaS事業を主力としており、AI技術に強みを持つ企業です。また、M&Aによって事業を拡大してきた経緯もあります。

これらの情報を踏まえると、ジーニーが買収する可能性のある企業としては、以下のような企業が考えられます。

  1. データ分析・解析ツールを提供する企業: ジーニーは、マーケティングSaaS事業において、顧客データの分析・活用を支援するサービスを提供しています。データ分析・解析ツールを持つ企業を買収することで、ジーニーのデータ分析機能を強化し、より高度なマーケティングソリューションを提供できる可能性があります。例えば、株式会社ユーザーローカルのような企業が挙げられます。
  2. コンテンツマーケティング支援ツールを提供する企業: ジーニーは、マーケティングSaaS事業において、顧客管理(CRM)やマーケティングオートメーション(MA)ツールを提供しています。コンテンツマーケティング支援ツールを持つ企業を買収することで、ジーニーはコンテンツマーケティング領域にも進出し、より包括的なマーケティングソリューションを提供できる可能性があります。例えば、株式会社WACULのような企業が挙げられます。
  3. チャットボット等のコミュニケーションツールを提供する企業: ジーニーは、マーケティングSaaS事業において、チャットボットを活用した顧客コミュニケーション支援ツールを提供しています。チャットボット等のコミュニケーションツールを持つ企業を買収することで、ジーニーはコミュニケーション領域におけるサービスを拡充し、顧客接点の強化を図る可能性があります。例えば、株式会社BEDOREのような企業が挙げられます。

対象企業として考えられるM&Aや資本業務提携

ジーニーは、GoogleやFacebookなどの巨大プラットフォーマーとの競争が激化しているインターネット広告市場で事業を展開しています。また、資金調達コストを抑えつつ、安定的なキャッシュポジションを確保したいという意向も読み取れます。

  • 大手広告代理店: ジーニーは、広告プラットフォーム事業において、広告主や広告代理店に対してサービスを提供しています。大手広告代理店に買収されることで、ジーニーはより多くの顧客基盤を獲得し、事業を拡大できる可能性があります。例えば、株式会社サイバーエージェントのような企業が挙げられます。