Programmatic M&Aの活用

横浜ゴムが2024 年7月22日にタイヤ生産販売会社である The Goodyear Tire
& Rubber Company(以下、グッドイヤー社)の鉱山・建設用車両向けタイヤ(OTR=オフザロードタイヤ)事業を買収する契約を締結することを公表しました。

本開示では、横浜ゴムは「Programmatic M&A」を戦略的に行うことを明記しています。

本買収は「Hockey Stick Growth」を果たすための戦略投資の一環として実施するものです。「YX2026」では 成長ドライバーである OHT(オフハイウェイタイヤ)事業の成長戦略のひとつに「Programmatic M&A」(プログ ラマティック M&A)を掲げており、本買収により OHT 事業のさらなる成長を果たし、企業価値を高めていきます。

https://www.y-yokohama.com/release/pdf/2024072216mg002.pdf

横浜ゴムは、2024年2月に開示された2024-26年の中期経営計画において 、タイヤ生産財 OHT事業の成長戦略において、「Progmmatic M&A」を行うことを宣言しています。

画像
https://www.y-yokohama.com/ir/pdf/document/24_1Qmanagement.pdf

市場の残り約3分の1の建設用・鉱山用車両向けタイヤでは、当社はわずかなシェアしか ありませんが、さらなる「Hockey Stick Growth」を目指し「Programmatic M&A」を 行っていきます。 これはTrelleborg社が大小あわせたM&Aを継続的に行い、それを成長戦略としていた のを参考にしたもので、OHT市場全体の中で常にその探索をしていきます。

https://www.y-yokohama.com/ir/pdf/document/yx2026_script.pdf

「Programmatic M&A」については下記の記事で解説しています。今後成長戦略として、活用することを明示することが増えると思うので是非本件含めて知識として覚えていただければと思います。

Programmatic M&A

M&Aがよりトレンドとなる日本市場においても、概念としてより一般的になるであろう「Programmatic M&A」について、まとめます。 Programmatic M&Aとは何か Pr…


横浜ゴム、グッドイヤー社の鉱山・建設用車両向けタイヤ事業を買収

当事者

  • 買主:横浜ゴム(株)
  • 売主:The Goodyear Tire & Rubber Company(グッドイヤー社)
  • 対象企業:Goodyear Earthmover Pty Limited、日本ジャイアントタイヤ(株)

案件目的:

  • 横浜ゴムの中期経営計画「Yokohama Transformation 2026 (YX2026)」の成長戦略の一環として、オフハイウェイタイヤ(OHT)事業のさらなる成長を図り、企業価値を高めるための戦略的投資
  • グッドイヤー社のOTR事業を買収することで、横浜ゴムのOHT事業の商品ラインナップを拡充し、特に農業用途以外の分野での強化を目指す。
  • グッドイヤー社のOTR事業の強みである、世界的に認知された商品力、最先端の技術力、ブランド力を活用し、横浜ゴムのOHT事業の成長を加速させる。

案件概要

  • 横浜ゴムがグッドイヤー社の鉱山・建設用車両向けタイヤ(OTR)事業を買収する契約を締結。買収対象には、OTR専用工場である日本ジャイアントタイヤ(株)とGoodyear Earthmover Pty Limitedの全発行済み株式、および世界各国の生産拠点上のOTR資産が含まれる。

対象企業概要(事業概要含む):

  • グッドイヤー社のOTR事業は、鉱山用車両向けや建設用車両向けタイヤを展開しており、25インチ以下の小型タイヤから49インチ〜63インチの大型・超大型タイヤまで幅広いラインナップを有し、世界的に認知された商品力、最先端の技術力、ブランド力を誇る。
  • 2023年度の売上高が約6億7,800万USドルで、EBITDAは約1億2,900万USドル、EBITDAマージンは19.0%と安定した収益性を維持しています。

取得価額:

  • 9億500万USドル(約1,294億円)

会社(買主)概要

横浜ゴム株式会社は、タイヤ、ホース・コンベヤベルト等の工業用品、MB(Multiple Business:航空部品、ゴルフ用品、建築資材など)を製造・販売する企業です。2024年度第1四半期連結業績では、売上高2,524億円、事業利益249億円と過去最高を達成しています。

対象市場・競合状況

  • タイヤ事業:乗用車用タイヤ、トラック・バス用タイヤ、農業機械用タイヤ、建設車両用タイヤ、産業車両用タイヤなど幅広い種類のタイヤを製造・販売しています。世界的に自動車生産台数が減少傾向にある中、プレミアムタイヤの販売に注力することで、2024年度第1四半期は大幅増益を達成しました。北米市場では、新車用タイヤの販売減を補うため、メキシコに乗用車用タイヤの新工場を建設する予定です。
  • YOHT事業(オフハイウェイタイヤ事業):農業機械用タイヤ、建設車両用タイヤ、産業車両用タイヤなどを製造・販売しています。市販用タイヤの販売が好調で、2024年度第1四半期は大幅増益を達成しました。
  • Y-TWS事業:2023年10月に買収したTrelleborg Wheel Systems(TWS)の事業です。農業機械用、建設車両用、産業車両用などのオフハイウェイタイヤを製造・販売しています。買収により横浜ゴムのYOHT事業と統合され、シナジー効果を発揮しています。
  • MB事業:航空部品、ゴルフ用品、建築資材などを製造・販売しています。航空機需要の回復やゴルフ用品の販売好調により、2024年度第1四半期は増益となりました。

経営課題

  • 原材料価格の高騰:天然ゴムや合成ゴムなどの原材料価格が高騰しており、利益を圧迫しています。これに対し、製品価格への転嫁やコスト削減に取り組んでいます。
  • 為替変動リスク:海外売上高比率が高いことから、為替変動による影響を受けやすい状況です。為替ヘッジや海外での現地調達比率を高めることで、リスク軽減を図っています。
  • サプライチェーンの混乱:世界的な物流の混乱や半導体不足などにより、サプライチェーンが混乱し、生産や販売に影響が出ています。サプライヤーとの連携強化や在庫管理の最適化などにより、対応しています。

経営戦略

  • 高付加価値商品の販売強化:プレミアムタイヤ「ADVAN」や「GEOLANDAR」など、高付加価値商品の販売を強化することで、収益性の向上を図っています。新車用タイヤでは、プレミアムカー向けタイヤの販売比率を高めることで、OEMの減産影響を軽減しています。また、スポーツカー用タイヤの生産能力を増強し、高付加価値商品の販売拡大を目指しています。
  • M&Aや提携による事業拡大:M&Aや提携を通じて、事業領域を拡大し、収益基盤の強化を図っています。2023年10月には、TWSを買収し、YOHT事業と統合することで、オフハイウェイタイヤ事業を強化しました。また、2024年5月には、IR室を新設し、国内外の投資家とのコミュニケーションを強化しています。
  • サステナビリティへの取り組み:環境負荷の低減や社会貢献活動など、サステナビリティへの取り組みを強化しています。国際的な環境非営利団体CDPから、5回目の「Aリスト」に選定されました。また、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出削減を目指し、「Science Based Targets(SBT)」の認定取得を目指しています。

財務概要(2024年度通期見込み)

  • 売上収益:1兆600億円(前年比7.6%増)
  • 事業利益:1,150億円(前年比16.0%増)
  • 事業利益率:10.8%(前年比0.7ポイント増)

2024年度は、原材料価格の高騰や為替変動などの影響を受けるものの、高付加価値商品の販売強化やM&Aの効果などにより、増収増益を見込んでいます。