セイノーHDといえば、独自のノウハウで大型貨物輸送を手がける「特積みのセイノー」として知られています。一方、三菱電機ロジスティクスは、家電製品などの輸送に強みを持ちます。この2社が手を組むことで、一体どんなシナジーが生まれるのでしょうか。
この記事では今回の買収と提携の狙いをまとめていきます。
当事者
- 買主: セイノーホールディングス株式会社
- 売主: 三菱電機株式会社
- 対象企業: 三菱電機ロジスティクス株式会社
案件に関する概要
- 案件目的:
- 物流業界における「運べないリスク」やサプライチェーン分断リスクへの対応
- セイノーHD:「特積みのセイノーからロジのセイノーへ」の重点戦略を掲げ、ロジスティクス事業を強化
- セイノーHD は三菱電機ロジスティクスのノウハウや資産を活用し、エレクトロニクス領域における対応力を強化
- 三菱電機:国内物流2024年問題への対応や国際間輸送入札の集約等の課題解決
- 三菱電機はセイノーHDの国内外の輸送インフラやネットワークを活用し、物流効率化と安定供給網の確立を目指す
- 三菱電機ロジスティクスはセイノーHDの顧客基盤を活用し、三菱電機グループ外へのサービス提供を拡大
- 案件概要:
- セイノーHDが三菱電機ロジスティクスの株式の66.6%を取得し、子会社化。三菱電機は33.4%の株式を保有し、持分法適用会社とする
- 株式譲渡実行予定日: 2024 年 10 月 1 日
- 財務概要:
- 三菱電機ロジスティクスは子会社を有しているが、連結経営指標を作成していないため、 下記は個別経営指標で、括弧書きにて子会社の財務指標との単純合算
- 対象企業概要:
- 名称: 三菱電機ロジスティクス株式会社
- 事業内容: ロジスティクス事業、輸配送事業、工場・事務所等の移転・引越事業、倉庫業、物流拠点(配送センター等)運営、国際物流事業、物流コンサルティング業、その他物流に係る付帯業務
- 取得価額: 約572億円(最終的な取得価額は、株式譲渡契約に定める価値調整を実施した金額となる予定)
パートナーシップ戦略による企業価値向上
背景
- 社会課題へのコミットメント: 少子高齢化や環境問題等の社会課題に対し、持続可能な物流ネットワークの構築を目指します。
- 成長戦略: 三菱電機ロジスティクスの物流ノウハウとセイノーグループの輸送ネットワーク、システム群を掛け合わせることで、エレクトロニクス業界に対し、大きな価値提供を図ります。
- Team Green Logistics: 企業や業界の垣根を超えた共創による持続可能な社会の実現を目指します。
ロードマップ2028における成長戦略
- お客様に成り代わるロジスティクスサービスの提供: 物流の川上から川下、すべての領域においてお客様の繁栄に貢献します。
- オープン・パブリック・プラットフォーム(O.P.P.)の拡大: 輸送効率の向上を図ります。
- デジタルプラットフォームの活用: 貸切拡大など、自社の物理的限界に左右されないサービスを提供します。
- CVC投資: 生産性向上(省人化・効率化)につながる新しいイノベーションを推進します。
三菱電機/三菱電機ロジスティクスとのパートナーシップ戦略
- 三菱電機ロジスティクスの強み: 長年にわたり三菱電機グループの物流を担い、エレクトロニクス分野における製品知識や、専門性の高い物流ノウハウを有しています。
- セイノーグループの強み: 国内トップクラスの車両供給力、強固な国際ネットワーク、全世界をカバーする物流ITソリューションを保有しています。
- シナジー効果: 両社の強みを掛け合わせることで、三菱電機様ひいてはエレクトロニクス業界に対し、更なる価値提供を目指します。
セイノーHDにおける成長の道筋
- 三菱電機へのサービス拡大: 三菱電機ロジスティクスの機能にセイノーグループの物流ソリューションを組み込み、三菱電機の物流を最適化します。
- 更なる成長へ: セイノーグループの顧客基盤を活用した新たな販路を開拓し、エレクトロニクス領域を中心に更なる成長を目指します。
セイノーHD概要
セイノーホールディングス(HD)は、国内外の物流サービスを提供する持株会社です。傘下に西濃運輸などを持ち、貨物自動車運送事業、倉庫業、航空貨物運送事業、引越事業、国際複合一貫輸送事業などを展開しています。2024年3月期の連結売上高は6,428億円、営業利益は234億円です。
対象市場・競合状況
セイノーホールディングスが属する物流業界は、eコマースの成長やグローバル化の進展により拡大傾向にあります。一方で、「2024年問題」とされる労働力不足や環境問題への対応が課題となっています。
経営課題
2024年3月期は、国内の輸送物量の低迷が続き、営業利益は前年比約18%減と減益となりました。特に、主力の特積み事業において物量減少の影響が大きく、運賃の適正化を進めているものの、業績回復は道半ばです。
経営戦略
2024年5月に発表された中期経営計画「ロードマップ2028」では、3~5年以内にROE8.0%達成を目標に掲げています。重点施策として、以下の5つを挙げています。
- 特積み事業の効率化: 共同輸配送(O.P.P.)の拡大や、不採算荷主の明確化と改善による運賃の適正化を進めます。
- ロジスティクス事業の成長: 全国パートナーの空き坪情報共有ツール「見つカル倉庫」を活用した倉庫拡充や、保管効率向上による坪当たり生産性向上を図ります。
- 貸切事業の成長: ハコベル社との連携によるプラットフォームの利用拡大や、デジタルマーケティングによる認知度向上、積載効率向上に取り組みます。
- M&A・オープンイノベーション: 成長を加速させるためのM&Aや、新たな技術やサービスの導入を積極的に進めます。
- 資本政策: DOE4.0%以上の配当と継続的な自己株式取得を行い、株主還元を強化します。
財務概要
2024年3月期の連結業績は、売上高6,428億円(前期比1.8%増)、営業利益234億円(前期比17.9%減)、当期純利益146億円(前期比23.4%減)となりました。
2025年3月期の連結業績予想は、売上高6,587億円(前期比2.5%増)、営業利益309億円(前期比32.0%増)、当期純利益194億円(前期比33.2%増)を見込んでいます。