なぜQuality Growthが重要なのか
近年、多くの企業が成長を追い求める中で、単なる規模の拡大だけでなく、その成長の質にも注目が集まっています。これは、持続可能な成長を達成し、企業価値を長期的に高めるためには、収益性やキャッシュフローの改善が不可欠であるという認識が広まっているためです。
Quality Growthとは、まさにこの成長の質を重視する考え方であり、売上や利益だけでなく、キャッシュフローの創出も重視することで、持続可能な成長を実現することを目指します。
この記事では、株式会社ラクスルの公表内容をもとに、Quality Growthの具体的な取り組みについて解説します。
ラクスルのQuality Growth戦略の概要
ラクスルはQuality Growthを達成するための戦略を掲げています。Quality Growthとは、単なる成長ではなく、利益とキャッシュフローの創出を伴った質の高い成長を指します。
中期の成長モメンタムは継続しながらも、より一層利益とCF創出を伴った成長モード (Quality Growth)に移行
https://ssl4.eir-parts.net/doc/4384/ir_material_for_fiscal_ym/119420/00.pdf
ラクスルは、中期的な成長モメンタムを維持しながら、収益性とキャッシュフローの改善を重視する方針を明確に打ち出しています。これは、短期的な業績だけでなく、長期的な企業価値の向上を目指す姿勢を示しています。
Quality Growthの具体的な目標
ラクスルはQuality Growthの具体的な目標として、2025年7月期における売上総利益175億円から200億円、ROE(自己資本利益率)およびROIC(投下資本利益率)20%以上を掲げています。
売上総利益は、売上高から売上原価を差し引いたものであり、企業の収益力を示す重要な指標です。ROEとROICは、企業が自己資本や投下資本をどれだけ効率的に活用して利益を上げているかを示す指標であり、投資家にとって重要な投資判断材料となります。
ラクスルは、これらの目標を達成することで、Quality Growthを実現し、企業価値を向上させることを目指しています。
Quality Growthに向けた取り組み
ラクスルはQuality Growthを実現するために、以下の3つの側面から具体的な取り組みを行っています。
- 事業面: 既存事業であるラクスル、ノバセルの顧客価値向上と利益拡大に注力しています。具体的には、顧客体験の向上、CRM(顧客関係管理)の強化、クロスセルの拡大、マーケティング施策の改善、事業領域の拡大、プライシングの最適化などが挙げられます。
- 財務・投資面: 既存事業への投資に加え、M&A(企業合併・買収)による領域拡張と顧客シナジーの創出にも積極的に取り組んでいます。また、高いROEの実現と長期的な企業価値の向上を目指し、規律のある経営を徹底しています。
- 組織面: 会社と社員、社員間の相互信頼を高め、高い生産性とリテンション(従業員の定着率)を実現するための施策を展開しています。具体的には、競争力のある報酬設計、事業間の顧客シナジー創出などが挙げられます。
M&Aの取り組み
ラクスルは、M&Aを成長戦略の柱の一つとして位置付けており、オーガニック成長を補完する形で、継続的にM&Aを実施しています。M&Aの目的は、「近接領域への拡張」「サプライの強化」「新規ビジネスモデルの獲得」の3つに分類され、2024年7月期は6社を新たに連結しています。
個別のM&A事例
株式会社ペライチ: ホームページ作成SaaS「ペライチ」を運営。2020年10月に新規領域として出資。
ネットスクウェア株式会社: デジタル印刷サービスを展開。2021年9月に買収し、2023年8月にラクスル向け事業を分社化した株式会社ラクスルファクトリーを完全子会社化。
株式会社ダンボールワン: ダンボール・梱包材の受発注プラットフォーム「ダンボールワン」を運営。2022年2月に買収し、ラクスル事業の一部門としてグループイン。
株式会社AmidAホールディングス: 印鑑のECサイト「ハンコヤドットコム」を運営。2023年11月に買収し、ラクスル事業の一部門としてグループイン。
株式会社Wild Side: メディアバイイング事業、ブランディング事業を展開。2024年3月にノバセル株式会社の機能拡充の一環としてグループイン
株式会社Antoo: 2024年6月に映像制作事業のAntoo(東京都港区)の全株式を取得し、子会社化した(取得はノバセルが実施)。Antooは短納期で高品質な動画制作サービスを得意とする。ノバセルは同社を取り込み、マーケティングソリューションサービスの拡充を図る。
エーリンク株式会社: 2024年6月にラクスルはトートバッグ・エコバッグのオリジナルプリントに特化したECサイトとして業界トップクラスの売上を誇る「トートバッグ工房」を運営するエーリンクサービスの株式取得を取得し
EV/EBITDAマルチプルは連結初年度の利益に対して5倍以下(2025年7月期 以降フルに業績貢献する予定)
Quality Growthの成果
ラクスルは、Quality Growth戦略の成果として、2024年7月期において、売上高507億円(YoY+23.6%)、売上総利益170億円(YoY+38.3%)を見込んでいます。
2027年7月期には売上総利益300億円、EBITDA100億円を目標として現状は置いています。
これは、既存事業の成長に加え、売上総利益率の改善と販管費の効率化が貢献しています。また、ダンボールワン社の連結効果や、オーガニック成長も寄与しています。
まとめ
この記事では、株式会社ラクスルのQuality Growth戦略について解説しました。ラクスルは、中長期的な成長モメンタムを維持しながら、収益性とキャッシュフローの改善を重視するQuality Growthを掲げ、具体的な目標と取り組みを推進しています。
ラクスルは、これらの取り組みを通じて、持続可能な成長を実現し、企業価値を向上させることを目指しています。今後のラクスルの成長に注目していきましょう。