ソフトバンクグループは、2024年6月21日に開催された第44回定時株主総会において、同社の成長戦略と未来への展望を明らかにしました。

ソフトバンクグループ株式会社 第44回定時株主総会 アーカイブ動画(2024年6月21日開催) - YouTube

ソフトバンクグループ株式会社は、第44回定時株主総会を2024年6月21日(金)に開催しました。株主総会の全編アーカイブ動画をご覧いただけます。関連資料https://group.so…

この記事では、上記の株主総会を元に、経営戦略や方針を考える上で一つ参考になるポイントを抽出してまとめます。

ポイント

ソフトバンクグループのNAVと親子上場戦略の深い関係

NAV(Net Asset Value:純資産価値)とは、企業や投資ファンドが保有する資産の価値から負債の価値を差し引いたものです。ソフトバンクグループ(SBG)のように、様々な企業に投資を行う投資会社では、NAVは企業価値や投資パフォーマンスを評価する上で重要な指標となります。

SBGの場合、NAVは保有する株式の価値から純負債(有利子負債とリース債務の合計から現預金と保有有価証券を差し引いたもの)を差し引いて算出されます。このNAVは、SBGの投資ポートフォリオの価値を反映しており、投資の成功や失敗によって大きく変動します。

SBGは、NAVを経営の最重要指標と位置付けており、その最大化を目指しています。そのため、有望な企業への投資を積極的に行い、保有株式の価値を高める一方で、負債の削減にも取り組んでいます。

NAVは、投資家にとっても重要な情報です。SBGの株式に投資する際には、NAVの推移をチェックすることで、SBGの投資パフォーマンスや将来の成長性を見極めることができます。

親子上場:価値の可視化と資金調達

孫会長は、親子上場をすべきと明言したわけではありませんが、株主総会での発言から、親子上場を肯定的に捉えていることが読み取れます。
その理由は、主に以下の3点です。

  1. 価値の可視化: 子会社を上場することで、市場から客観的な評価を受け、その企業価値が明確になります。これは、ソフトバンクグループ全体のNAV(純資産価値)を正確に把握する上で重要です。
  2. 資金調達: 子会社の上場により、新たな資金を調達することができます。ソフトバンクグループは、この資金をさらなる投資や事業拡大に活用できます。
  3. 子会社の自律性向上: 上場することで、子会社は経営の独立性を高め、より迅速な意思決定や事業展開が可能になります。

孫会長は、大企業の経営者は投資家的な視点を持つべきだと考えており、親子上場は子会社の価値を最大化するための有効な手段であると認識しています。また、子会社が市場から直接評価を受けることで、より健全な経営体制を築けるとも考えています。

ただし、親子上場には、子会社の利益が親会社の利益に優先される可能性や、ガバナンスの問題などが指摘されることもあります。
孫会長はこれらの批判を認識しつつも、親子上場のメリットを重視し、ソフトバンクグループの成長戦略の一つとして活用しています。

ARMの上場:NAVを押し上げる起爆剤

市場による価値評価: ARMは、上場する前はSBGの子会社であり、その企業価値はSBGの財務諸表上では簿価で評価されていました。

しかし、上場によって、ARMの株式が公開市場で取引されるようになり、市場からの客観的な評価を受けることになりました。この市場評価額は、ARMの成長性や将来性などを反映し、簿価を大幅に上回るものでした。

  1. NAVの算出方法: SBGのNAVは、保有する株式の価値から純負債を差し引いて算出されます。ARMの上場により、ARMの株式価値が市場評価額に置き換えられたため、SBGのNAVもそれに応じて増加しました。
  2. ARMの成長性: ARMは、スマートフォンやコンピューターなどに搭載される半導体チップの設計で世界的に高いシェアを誇る企業です。AIやIoTなどの技術の発展に伴い、ARMのチップの需要はますます高まると予想されており、市場はARMの成長性を高く評価しています。この成長性への期待も、ARMの株式価値を押し上げ、結果としてSBGのNAV増加に貢献しました。

ARMの上場は、市場によるARMの価値評価を明確にし、その高い成長性への期待も相まって、SBGのNAVを大幅に押し上げる結果となりました。

ソフトバンクグループの事業戦略とAIの重要性

ソフトバンクグループは、創業以来「情報革命で人々を幸せに」という理念を掲げ、常に時代の変化を先取りし、新たな事業を創出し、拡大してきました。近年では、AI(人工知能)技術の進化に注目し、AI分野への投資を積極的に行っています。

ソフトバンクグループのAI戦略の中核を担うのが、子会社であるARMです。ARMは、スマートフォンやコンピューターなどに搭載される半導体チップの設計で世界的に高いシェアを誇る企業であり、AIの処理に不可欠な存在です。ARMのチップは、その高い電力効率と設計能力により、AIの進化を加速させる可能性を秘めています。

ソフトバンクグループは、ARMの技術力を最大限に活用し、AI時代のリーダーシップを握ることを目指しています。具体的には、AIデータセンターの構築やAIロボットの開発など、AI関連事業に積極的に投資しています。

また、ソフトバンクグループは、AGI(汎用人工知能)からASI(超知能)への進化を見据え、その実現に貢献することを目指しています。ASIは、人間の知能をはるかに超える超知能であり、社会の様々な問題を解決する可能性を秘めています。

AIの進化:AGIとASI

AGI(Artificial General Intelligence)

AGIは、人間と同等またはそれ以上の知的能力を持つAIを指します。人間のように、様々なタスクを理解し、学習し、実行することができます。例えば、言語理解、問題解決、創造性など、人間が持つ多様な能力をAGIも持つことができるとされています。AGIはまだ実現されていませんが、AI研究における大きな目標の一つであり、実現すれば、社会に大きな変革をもたらすと期待されています。

ASI(Artificial Super Intelligence)

ASIは、AGIがさらに進化したもので、人間の知能をはるかに超える知能を持つAIを指します。ASIは、AGIよりもはるかに高度な問題解決能力や創造性を持ち、科学、技術、芸術など、あらゆる分野で人間を凌駕する可能性があります。ASIの実現時期については様々な意見がありますが、孫正義社長は10年以内、あるいは3年以内にAGIが実現し、そこからASIへと進化すると予測しています

ARMの重要性

ソフトバンクグループは、AI技術の進化を事業戦略の中核に据えています。その中心となるのが、子会社であるARMです。ARMは、スマートフォンからデータセンター、自動運転車、ロボットまで、あらゆるAI関連機器に搭載される半導体チップを設計しており、AI時代の基盤技術を提供しています。

ソフトバンクグループは、ARMの技術力を最大限に活用し、AI分野でのリーダーシップを握ることを目指しています。具体的には、AIデータセンターの構築やAIロボットの開発など、AI関連事業に積極的に投資しています。

また、ソフトバンクグループは、AGIからASIへの進化を見据え、その実現に貢献することを目指しています。ASIは、人間の知能をはるかに超える超知能であり、社会の様々な問題を解決する可能性を秘めています。

ARMの技術力とAIへの投資を通じて、ASIの実現を目指しています。単なるビジネスの成功を超えた、人類の未来に対する挑戦であり、ソフトバンクグループは、AI技術の進化を牽引することで、企業価値の向上と社会への貢献を目指しています。

まとめ

SBGのNAVと親子上場戦略は、深く結びついています。子会社を上場させることで、その企業価値を明確にし、資金調達を容易にするだけでなく、子会社の自律性向上にもつながります。

ARMの上場は、SBGのNAVを大幅に増加させ、その投資戦略の成功を示すものでした。今後も、SBGは親子上場戦略を積極的に活用し、NAVの最大化と将来の成長を目指していくと考えられます。


一部抜粋(抄訳)


大怪我をしたり、反省しきりだったんですけれども、去年の総会の時には、ARMはまだ上場前でしたから、ほとんど買った時の値段でしか評価されていませんでした。去年のこの総会の時のソフトバンクの株主価値は、持っている大半がもう上場会社ですから、毎日値洗いされています。その価値から借入を引いたものが、ここで言うNAV、ネットアセットバリューです。ソフトバンクは借金がたくさんあるだろうとよく言われますが、その借金を勘案して差し引いて、純粋に残っているソフトバンクの価値が去年は14兆円だったんです。1年経った今日はどうかというと、34兆円なんです。
1年間で14兆円が34兆円になったわけです。ですから、さっき長々ビデオがありましたが、3000億円の黒字赤字なのか、6兆円の売上なのか、もうわけわからないけど、一言で言うと、このページなんです。全ての損益計算書、バランスシート、財務会計、監査法人の言うこと、全て忘れて、この1ページだけ見れば答えがわかります。この1ページを僕は毎朝チェックしています。しかも、自動計算で、生成AIで自動的に処理されて計算されて、日報が朝8時に届くんです。全て分析されているんです。ですから、この1ページだけ見れば、もう毎日、我が社がどれだけ元気なのか、苦しいのかがわかるわけです。皆さんも10個ぐらい株を持っていたら、毎日気になるでしょう。寝る前に、「今日は私は儲かったのか、損したのか」と気になって、結構頭を使っていると思います。
そんな時にいちいちそれぞれの会社の細かい財務計算書をチェックしますか?しませんよね。
伸びている会社は「お、元気だ」、減っている会社は「これ、やばいぞ」、もうちょっとやばいのは調べてみよう、となるわけです。でも、要は毎日チェックするのは、自分が持っている株の価値の上がり下がりです。これを僕も毎日チェックしているんです。
全らく大企業の社長というのは、本来、自分の事業部門ごとにあるいは子会社ごとに毎日値洗いして見るべきだと僕は思います。親子上場を避難する人もいますが、ちょっと頭が古いんじゃないかと思います。本当は、我々、国内だけでも数百社、海外で経つと1000社以上あるわけです。それぞれが上場していなくて未上場だったら、価値がわからないですよ。
自分の子会社でも上場していれば、価値が毎日値洗いされるわけです。財務会計諸表は毎日値洗いされません。ですから、僕はなるべくなら何百社もなったら片っ端から上場して、それぞれの社長が市場から毎日チェックされている方が、本当は健全なんじゃないかと思います。ということで、20兆円増えましたが、この1年間で20兆円増えた理由は何か。一言で言うと、ARMです。
ですから、僕は2年ぐらい前から、「もうARM1本に専念する。ごく君がもう決算発表とかやっといてくれ」と。「お客さんに会うのももう君とか他のものに任す。僕はもうお客さんにも会わない。細かい計算もしない。全て俺には持ってこないで、ARMのことだけ持ってきてくれ」ということで、毎日、今日レネがそこにいますが、今日も朝から、昨日も夜もそうですが、大体1日に5本から10本、レネとコミュニケーションして、「What's up?」だとか、電話だとかZOOMだとかいうことで、ほぼ毎日やっています。うちの会社の中で1番僕が密にやっているのはレネなんですけど、まあレネがCEOになってから非常にピッタリのコンビでやれているんで、非常に幸せでございます。
ARMを我々、3.3兆円で買収したんですね。当時は上場会社でした、イギリスで。40%プレミアムを払ったんですね。ですから、2兆円のものを3兆円で買ったんですけど、「プレミアム払いすぎだ。上場会社でもう毎日値がついているのに、さらに4割値上げして買うバカがどこにいるんだ?私は3000億でも買わんぞ」とか言って、永守さんにこの何年か前に言われて、株総会のこの場で言われて、永守さんと大の前で僕が買ったので、「十分の1でも私は買わん」と言う言うわと。「勘弁してくださいよ」と言って言ってたんですけど、笑いながらですけどね、お互いに。
でも、結果的には3兆円で買ったものが24兆円になったわけです。その時に借入れをしました。みずほさんに中心になっていただいて、当時みずほの佐藤さんが、「孫さんとそんなにARMが素晴らしいっていうなら、中途半端に買わなくて、もう100%行ったらどうですか?」という風に背中を押してくれた。というのは、ほとんど当時、社内の役員も反対していました。内部の幹部もですね。「社長、やりすぎだ。高すぎるぞ」と。「金どうするんですか?」と。「いや、金か。金は何とかなんだろう」と、こういう話で、佐藤さんとか言って、みずほにお願いしたんですけど、まあ異例の速さで承諾いただいて、そして即買ったんですけど、そこからエンジニアの数をいきなり倍にしたわけです。業績は下がりました。というのは、売上は急に伸びないですから、経費だけが嵩んで、売上は同じだったら当然利益は下がります。
いっぱい心配されました。でも、その時に増やしたエンジニアが手に手につけた新しい材料が、どんどん今、花開いてきて、パソコンでもサーバーでも、クラウド、自動車、ありとあらゆるもの、それからハイエンドのIoTだとか、AI関連のもののチップが出てきたということです。まあ、本当にやって良かったと。借入れを1/3入れているから、借入れは絶対値は増えないですね。ですから、株式、エクイティとして入れた株式の方は1.5倍、伸び率としては大きくなるわけですね。これをテコの原理というんですけど、まあ、そういうことを我々は得意としております。
ということで、前半戦ですけど、株主価値を大きくしていくというのは、結局、進化と増大。この40年間、色々積み重なってきましたね。あれは全て進化をさせていったと。今振り返ってみたら大したことないかもしれませんが、当時はみんな冒険いっぱいのことだったんですね。当時は毎回悩んで、苦しんだりもしましたけど、でも結果見ていただいたら、プラスされていったものが大半だと。もちろん、正しい失敗もしていますよ。でも、それは進化の過程の中には失敗もたくさんして、でも生き残ったから、これだけ伸びたと。700倍ぐらいになったんですけどね。ということであります。