Bainから"The 10 Steps to Successful M&A Integration"と題してM&A後の統合に関するポイントを解説したレポートが公表されておりました。
今回はこのレポートを要約した上でポイントをまとめたいと思います。
The 10 Steps to Successful M&A IntegrationWhere winners focus to make a deal outperform.www.bain.com
ポイントは以下の通りまとめられています。
・Frequent acquirers are getting better, but when deals fail, integration is at the root 83% of the time.
https://www.bain.com/insights/10-steps-to-successful-ma-integration
・The best integrators recognize that each deal has unique needs, but they also bring repeatable skills that enhance value.
・They plan the integration during diligence and identify pivotal decisions.
・An increasingly important factor is the ability to use artificial intelligence and digital tools to gain an edge.
要するに「M&Aは統合がほぼ全てであり、頻度高くM&Aで成長を繰り返す企業は実践を通じて成功を掴んでいる」というようです。
なお、いわゆる「Programmatic M&A」がどういうものなのかについては下記で概要をまとめているので、是非ご一読ください。
ここでは上記レポートの内容をもう少し要約します。
M&A統合(=PMI)の現状
M&Aは、適切に計画・実行されれば、かつてないほどの価値を生み出す可能性を秘めています。特に景気回復の兆しが見られる今、M&Aは活発化しており、賢明な企業はすでに行動を起こしています。
M&Aが注目される理由の一つは、景気後退が資産価値に与える影響です。2001年から2002年の景気後退期または直後に成立した買収は、好景気時に行われた買収と比較して、約3倍もの超過リターンを生み出しています。
また、多くの企業がM&Aのスキルを向上させていることも理由として挙げられます。1995年から2005年にかけて、M&Aを成功させる企業が増加しました。これは、企業がコア事業に近い分野でのM&Aを追求するようになったことや、現金での支払いを選択するケースが増えたことなどが要因として考えられます。
しかし、多くの企業がM&Aにおいて多大な価値を逃しているのも事実です。その主な原因は、目標の未達成、主要な人材の喪失、そして本業のパフォーマンス低下です。
統合成功のための10のステップ
M&Aの潜在的な価値を実現し、リスクを回避するためには、統合の成功が不可欠です。統合は常に困難を伴いますが、以下の10のステップに従うことで、より管理しやすく、適切な結果へと導くことができます。
- 資金の流れを追う: M&Aには、それが企業のコア戦略をどのように強化するかを客観的に説明する、「ディールテーゼ」が必要です。ディールテーゼは、どこでお金を稼ぎ、どこでリスクを取るかを示し、成功のために取るべき行動を明確にします。
- M&Aの種類に合わせて行動を調整する: M&Aが規模の拡大を目的とする「スケールディール」なのか、それとも新市場や新製品への進出を目的とする「スコープディール」なのかを明確にする必要があります。この判断は、統合プロセスにおける多くの意思決定に影響を与えます。
- 権力と人材の問題を迅速に解決する: 新しい組織は、M&Aの目的と統合後の企業のビジョンに基づいて設計されるべきです。このビジョンに貢献できる人材を両社から選出し、迅速に新しいリーダーを決定することが重要です。
- M&A発表と同時に統合を開始する: 理想的には、M&A発表前に統合プロセスを開始すべきです。発表後は、クロージングまでに完了しなければならないことをすべて特定し、主要な決定をできるだけ多く行う必要があります。
- 「意思決定の鼓動」を通じて統合を管理する: 統合には、「意思決定管理室(DMO)」を設置し、統合リーダーが重要な意思決定に焦点を当てることが重要です。意思決定のロードマップを作成し、「意思決定の鼓動」に従って管理することで、各意思決定が適切なタイミングで、適切な人々によって、最良の情報に基づいて行われるようにします。
- 統合チームのリーダーを選抜する: DMOには強力なリーダーが必要です。戦略、コンテンツ、そしてプロセスに精通した人材、つまり企業のライジングスターを選ぶのが理想的です。
- 1つの文化にコミットする: 企業文化は、人々の行動や交流を支配する規範、価値観、前提の集合体です。M&Aにおける最大の課題の一つは、文化をどうするかを決めることです。統合後にどのような文化を形成したいのかを明確にし、その文化に沿った行動を促すような報酬制度や組織構造を設計する必要があります。
- 心を掴み、共感を得る: M&Aは、両社の社員を不安にさせます。M&Aが何を意味するのか、新しい組織にどのように適合するのか、彼らは疑問に思うでしょう。そのため、M&Aの目的を社内にも「売り込む」必要があります。
- 両社の事業の勢いを維持し、そのパフォーマンスを注意深く監視する: 統合プロセスに気を取られるあまり、本業がおろそかにならないように注意が必要です。CEOは本業に時間を割き、既存顧客への注力を維持すべきです。統合プロセス全体を通して、本業を注意深く監視し、主要業績評価指標を重視することが重要です。
- 繰り返し使える統合モデルを構築するために投資する: 統合が完了したら、プロセスを振り返り、次回どのように改善できるかを評価しましょう。統合の手順書や専門家のリストを作成することで、次回のM&Aをより効果的に、迅速に進めることができます。
まとめ
世界的な景気後退から脱却しつつある今、企業は魅力的な資産価値を活用し、M&Aを成功させるために準備すべきです。そのためには、統合に合わせたアプローチを取り、価値とリスクの源泉に常に注意を払いながら、ディールテーゼに合わせた戦略を調整することが重要です。経験豊富な企業は、これらの10のステップを理解し、M&Aを成功に導いています。