M&A(企業の合併・買収)は、企業の成長戦略において非常に重要な役割を担います。しかし、M&Aは複雑なプロセスであり、経営企画部がどのように推進すべきか悩む企業も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では、経営企画部がM&Aを成功に導くためのポイントを分かりやすく解説します。事例を交えながら、M&Aの各段階における経営企画部の役割、そしてM&Aを成功させるための戦略について詳しく説明していきます。
なお、日本において経営企画部と呼ばれるような職種の中でも、特にM&Aなどのインオーガニックなアプローチを主導する部署である「Corporate Development」の役割についてはこちらでまとめています。
※日本語訳するとこちらも経営企画とも言えるのでややこしい
概要:経営企画部の戦略的役割がM&A成否の鍵を握る
M&Aは、単なる企業規模の拡大や事業ポートフォリオの再編にとどまらず、企業の競争力強化や新たな成長機会の創出に直結する戦略的活動です。経営企画部は、M&Aの全プロセスにおいて、戦略策定から実行、そしてPMI(Post Merger Integration:合併後統合)まで、多岐にわたる役割を担います。
M&Aを成功に導くためには、経営企画部がM&Aの目的を明確化し、適切な戦略を立案し、実行していくことが不可欠です。この記事では、M&Aにおける経営企画部の役割を詳細に解説することで、M&Aを成功に導くための具体的な道筋を示します。
経営企画部の基本的な役割
経営企画部の基本的な役割は、企業の長期的な成長と発展を支えるために、経営戦略の立案・実行、新規事業の開発、経営課題の解決など、多岐にわたります。具体的には、以下の3つの点が挙げられます。
1. 経営戦略の立案・実行
- 市場環境分析: PEST分析(政治・経済・社会・技術)やSWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)などを用いて、市場の動向や自社の競争優位性を分析し、経営戦略の方向性を決定します。
- 中期経営計画策定: 企業のビジョンやミッションに基づき、具体的な目標を設定し、達成するための戦略を策定します。
- KPI設定・モニタリング: 経営目標を達成するための具体的な指標(KPI)を設定し、定期的に進捗状況をモニタリングし、必要に応じて戦略を修正します。
2. 新規事業開発
- 新規事業アイデア創出: ブレーンストーミングやアイデアコンテストなどを通じて、新たな事業のアイデアを創出します。
- 事業性評価: 市場調査や競合分析などを行い、アイデアの実現可能性や収益性を評価します。
- 事業計画策定: 新規事業のコンセプト、ターゲット市場、マーケティング戦略、収支計画などを具体的に策定します。
3. 経営課題解決
- 課題特定: 経営層へのヒアリングやデータ分析などを通じて、企業が抱える課題を特定します。
- 解決策立案: 課題の原因を分析し、解決策を検討・立案します。
- 実行支援: 経営層と連携し、解決策の実行を支援します。
経営企画部の役割は企業によって異なりますが、共通して言えることは、経営層の参謀役として、企業の成長と発展に貢献する重要な役割を担っているということです。
経営企画部の役割から考えられるM&A推進の位置付け
経営企画部の基本的な役割は、企業の長期的な成長と発展を支えるために、経営戦略の立案・実行、新規事業の開発、経営課題の解決など、多岐にわたります。その中で、M&Aは経営戦略の一環として、以下の目的で位置付けられます。
- 成長戦略の加速:
- 新規市場への参入や製品ポートフォリオの拡充を迅速に実現し、成長を加速させる。
- 規模の経済を活かし、コスト削減や効率化を図る。
- 競争優位の強化:
- 競合他社を買収することで、市場シェアを拡大し、競争力を強化する。
- 技術やノウハウを持つ企業を買収することで、自社の技術力を向上させる。
- 経営資源の最適化:
- 不採算事業の売却や事業再編を通じて、経営資源を最適化し、収益性を向上させる。
- 優秀な人材やブランドを獲得することで、企業価値を高める。
経営企画部は、これらの目的を達成するために、M&A戦略の立案から実行、PMI(M&A後の統合プロセス)まで、一貫してM&Aを推進する役割を担います。M&Aは企業の成長に大きな影響を与えるため、経営企画部におけるM&Aは、経営戦略の中核を担う重要な業務として位置付けられます。
具体的には、経営企画部は、以下の業務を通じてM&Aを推進します。
- M&A戦略の策定: 企業のビジョンや経営目標に基づき、M&Aの目的、対象企業の選定基準、買収後のシナジー効果などを明確化する。
- M&A候補企業の探索・評価: M&Aアドバイザーや投資銀行と連携し、M&A候補企業の情報を収集・分析し、評価を行う。
- M&A交渉・デューデリジェンス: 候補企業との交渉を行い、デューデリジェンスを実施し、買収条件を決定する。
- M&A契約締結・クロージング: M&A契約を締結し、買収資金の支払いなどの手続きを行う。
- PMIの実施: 買収後の統合プロセスを計画・実行し、シナジー効果を最大化する。
経営企画部は、これらの業務を通じて、M&Aを成功に導き、企業の成長に貢献することが求められます。
コミュニケーションハブとしての経営企画部
M&Aにおいて、経営企画部は様々なステークホルダーとのコミュニケーションの中心に位置し、その役割は非常に重要です。円滑なコミュニケーションは、M&Aの成功に不可欠な要素と言えるでしょう。
1. 経営者とのコミュニケーション
経営企画部は、経営者に対してM&Aの戦略立案、候補企業の選定、交渉状況、PMI計画など、M&Aに関する情報を定期的に報告し、意思決定をサポートする役割を担います。また、経営者の意向を正確に把握し、M&A戦略に反映させることも重要です。
2. 事業部とのコミュニケーション
M&Aは事業部門に大きな影響を与えるため、経営企画部は、M&Aの目的や戦略を事業部門に丁寧に説明し、理解と協力を得ることが重要です。また、事業部門のニーズや意見をM&A戦略に反映させることで、M&A後の統合を円滑に進めることができます。
3. 他のコーポレートチームとのコミュニケーション
M&Aは、法務部、財務部、人事部など、他のコーポレート部門との連携が不可欠です。経営企画部は、各部門と連携し、M&Aに関する情報共有や意見交換を行い、M&Aプロセス全体をスムーズに進める役割を担います。
コミュニケーションにおける重要性
M&Aにおけるコミュニケーションの重要性は、以下の点に集約されます。
- M&Aの目的と戦略の共有: M&Aの目的や戦略を関係者全員で共有することで、M&Aに対する理解を深め、一体感を醸成することができます。
- リスクと課題の早期発見・解決: 関係者間の密なコミュニケーションを通じて、M&Aに伴うリスクや課題を早期に発見し、対応することができます。
- M&A後の統合の円滑化: M&A後の統合プロセスにおいて、関係者間のコミュニケーションを密にすることで、従業員の不安を解消し、統合を円滑に進めることができます。
具体的なコミュニケーション方法
- 定期的な会議: 経営層、事業部門、コーポレート部門との定期的な会議を開催し、M&Aに関する情報共有や意見交換を行う。
- 説明会: M&Aの目的や戦略、進捗状況などを説明する説明会を、従業員向けに開催する。
- 社内報やイントラネット: M&Aに関する情報を社内報やイントラネットに掲載し、従業員に周知する。
- 個別面談: 従業員の不安や疑問に答えるために、個別面談を実施する。
経営企画部は、これらのコミュニケーション方法を駆使し、M&Aに関する情報を積極的に発信し、関係者との信頼関係を構築することで、M&Aの成功に貢献することができます。
M&A戦略の策定
M&Aを成功させるためには、まず明確な戦略を策定することが重要です。経営企画部は、以下の3つのステップでM&A戦略を策定します。
1. M&Aの目的を明確にする
M&Aを行う目的は企業によって異なります。市場シェアの拡大、新技術の獲得、事業ポートフォリオの再編など、様々な目的が考えられます。経営企画部は、自社の経営戦略に基づき、M&Aの目的を明確にする必要があります。
2. M&Aのタイプを決定する
M&Aには、水平型M&A、垂直型M&A、コングロマリット型M&Aなど、様々なタイプがあります。経営企画部は、M&Aの目的に合わせて最適なタイプを決定する必要があります。
3. M&Aの対象企業を選定する
M&Aの対象企業を選定する際には、財務状況、事業内容、企業文化など、様々な要素を考慮する必要があります。経営企画部は、M&Aの目的に合致し、自社とのシナジー効果が見込める企業を選定する必要があります。
M&Aの実行
M&A戦略が策定されたら、次はM&Aの実行です。経営企画部は、以下の3つのステップでM&Aを実行します。
1. Due Diligence(デューデリジェンス)の実施
Due Diligenceとは、M&Aの対象企業の財務状況、法務状況、事業状況などを詳細に調査することです。経営企画部は、Due Diligenceを通じて、M&Aの対象企業のリスクを把握し、買収価格を決定するための情報を収集します。
2. 交渉の実施
M&Aの交渉は、買収価格、買収条件、PMI計画など、多岐にわたります。経営企画部は、自社の利益を最大限に確保できるよう、M&Aの対象企業と交渉を行います。
3. 契約の締結
交渉が成立したら、M&A契約を締結します。M&A契約には、買収価格、買収条件、PMI計画などが詳細に記載されます。経営企画部は、M&A契約の内容を慎重に確認し、契約を締結します。
PMI(Post Merger Integration)の実施
M&Aが完了したら、次はPMIの実施です。PMIとは、M&A後の2つの企業を統合し、シナジー効果を発揮させるための活動です。経営企画部は、PMI計画を策定し、PMIを実行します。
PMIは、M&Aの成否を左右する重要なプロセスです。PMIが失敗すると、M&Aの目的を達成できないだけでなく、企業価値を毀損する可能性もあります。経営企画部は、PMIを成功させるために、以下の3つのポイントに留意する必要があります。
1. 組織文化の統合
M&A後の2つの企業は、異なる組織文化を持っている可能性があります。経営企画部は、2つの企業の組織文化を統合し、新たな企業文化を醸成する必要があります。
2. 業務プロセスの統合
M&A後の2つの企業は、異なる業務プロセスを持っている可能性があります。経営企画部は、2つの企業の業務プロセスを統合し、効率的な業務プロセスを構築する必要があります。
3. 人材の統合
M&A後の2つの企業は、異なる人材を抱えている可能性があります。経営企画部は、2つの企業の人材を統合し、新たな組織体制を構築する必要があります。
まとめ:M&A成功のための経営企画部の役割
M&Aは、企業の成長戦略において非常に重要な役割を担います。経営企画部は、M&Aの全プロセスにおいて、戦略策定から実行、そしてPMIまで、多岐にわたる役割を担います。
M&Aを成功に導くためには、経営企画部がM&Aの目的を明確化し、適切な戦略を立案し、実行していくことが不可欠です。この記事で解説したポイントを参考に、経営企画部はM&Aを成功に導くための戦略を策定し、実行していくことを期待します。
M&Aのプロセスの全体の解説については、こちらのマガジンをご参照ください。