「トップ面談を行う」ステップは、M&Aの事前検討期間において、「取引の事前検討を行う」ステップの次に取り組みます。
取引の事前検討を行った後は、トップ面談を行い、基本条件の合意に向けてお互いの更なる理解と協議・交渉を進めます。
このステップのまとめ
M&Aにおけるトップ面談では、譲渡主と譲受主の経営者及び役員が相対し、お互いの理解をより深めるために協議を行います。トップ面談時のお互いの印象が、その相手方と検討を更に進めていく上での重要な決め手となります。
トップ面談に向けて、何を準備し、どういった心持ちで望むかを理解しておくことは重要です。トップ面談の目的、ポイントや流れを説明していきます。
各ポイントの解説
✔ トップ面談のポイントを理解する
M&Aにおけるトップ面談では、譲渡主と譲受主の経営者が直接相対し、お互いの理解をより深めるために協議を行います。トップ面談時のお互いの印象が、その相手方と検討を更に進めていく上での重要な決め手となります。
このタイミングでは、両社の経営者が直接お互いに理解を深め合うことで、今後の協議に向けた信頼関係を築くことが一番の目的です。
トップ面談の前に企業概要書(IM)等の提示を通じて、一定程度の情報が開示されています。このタイミングでの面談はデュー・ディリジェンス(DD)を行うことが目的ではありません。お互いがなぜこの場に臨んでいるのかを、理解し合えると後の会話がスムーズになります。
基本的に両者共通していることは次の通りです。基本的には一方のみが話す時間を割き過ぎず、バランスよく会話を行うことが重要です。
譲渡主は、今回の譲渡を検討している背景を伝えつつ、対象企業・事業の魅力をしっかりと伝えていくことが必要です。譲受主は、今回の譲受を検討している目的を伝えつつ、自社の紹介に加えて、対象企業・事業を特になぜ魅力に感じているかを伝えます。
譲受主は、自社のグループとなることで得られる具体的な利点やシナジー効果について想像が膨らむよう魅力を伝えることが重要です。企業の文化や事業の相性、親和性が高いと、譲渡主側の記憶に残る強いポイントになります。
また、譲渡主と対象企業の経営者が異なる場合には、対象企業の経営者にも出席してもらうことが有効に働く場合もあります。
質疑応答では特にお互いの今回の目的やストーリーを中心にした質疑を行うと、今回の事業承継、M&Aの輪郭がはっきりとして、今後のより詳細な質問・協議・交渉を行う際にも、ブレが生じにくくなります。
基本的な企業情報の理解を進めながら、お互いの経営理念と価値観、M&Aの動機と目的、M&A実行後のプラン、現存するリスクや課題など、大まかなポイントを決めた上で会話を深めることが重要です。
✔ トップ面談を行う
日程・場所はM&Aアドバイザーがいる場合には、間に入ってもらいながら確定をしていきます。目的、参加者及び役割、議題など、当日スムーズに進行できるよう事前の準備に努めます。
譲渡主側は、経営者、株主が参加します。経営者が株主でないケースや株主が複数存在するケースがあるため、意思決定が可能な株主が出席していると今後の進行も円滑に進みやすい場合があります。
その他、事業承継、M&Aの重要な関与者が適宜参加する形となります。
譲受主側は経営者含む経営陣や推進責任者が参加します。必要に応じて、その他営業や技術部門の責任者が参加することもありますが、このタイミングでは参加人数は不要に多くしないことが望ましいです。
場所に関しては決まりはありませんが、目的に応じて現地を視察してもらうための本社や工場付近、情報漏れを防ぐ目的を優先してM&Aアドバイザーのオフィス、ホテルの会議室や金融機関の応接室などで行われます。
当日は、下記のような流れで進行することが多いです。当日の進行はM&Aアドバイザーがいる場合には、M&Aアドバイザーが進行します。時間の明確な設定はありませんが、集中力が切れない程度の60〜120分が一つの目安となります。
トップ面談が終了したら、その場で合意できなかった事項を別途調整していきます。第二回以降の面談を行う形でも、書面での連絡でも、アドバイザーを介する形でも、相手方とのコミュニケーションに齟齬がない進め方で進行します。
概ね条件を合意できたら、それまでの合意事項を書面に落としたものとして、基本合意書を締結します。これにより今後の詳細な調査(デュー・ディリジェンス)を開始する上での一つの区切りとなります。
よくある失敗事例
よくある質問
トップ面談は必ず行う必要がありますか?
入札形式でM&Aを行うような場合には、この時点で経営者同士の面談が行われない形もあります。基本合意の前にトップ面談が可能な場合は、この場で相手方に気持ちを伝える絶好の機会であるとも考えられます。