M&Aの解説をする
「まーくん」

「目的と方針を明確にする」ステップは、M&Aの事前検討期間において、最初のステップとして行います。

時間の経過と相手方との協議・検討に伴い、目的や方針を徐々に見失うことも多々あるため、何のために行うかを立ち返って考えられるようにしましょう。

この記事で押さえるポイント

  • M&Aの目的と方針を明確化する意義を理解する
  • M&Aの目的と方針を整理する

このステップのまとめ

M&Aを成功させるためには、初めに目的と方針の明確化が不可欠です。今後の検討において、直面する可能性のある問題解決の指針となり、希望する成果を達成するための基礎となります。

M&Aプロセスは、基本的には長期間の検討が必要となり、進行中に目的や方針が見失われがちなため、定期的に立ち返って確認することで、目的の達成に向けたスムーズな進行と有利な交渉を促します。

譲渡主は、承継問題解決、財務基盤強化、不採算事業切り離しなどの目的でM&Aを活用する場合が多いです。譲受主は、新規事業進出、既存事業とのシナジー、許認可取得の効率化など様々な目的でM&Aを活用します。

必ずしも一つに限らず様々な目的を兼ねることが多いですが、出来うる限りの優先順位を付けた上で、目的や方針が設定できると、M&Aプロセスにおける難しい比較判断に遭遇した場面で、有効に働きます。

各ポイントの解説

✔ 目的や方針を明確化する意義を理解する

M&Aを行うに際しては、そもそもの実施目的と方針の明確化から始めます。なぜM&Aという方法を採るのか、それにより何を実現するのか、譲受主、譲渡主のどちらの立場になるとしても、事前に考えておくことが重要です。

事前検討にあたっては、最初から難しく考えすぎず、何を最も得たいか、そのために何を優先事項とするかを考えましょう。M&Aの検討において、悩んだ際の判断のより所となる重要な指針とするためです。

時間の経過と相手方との協議・検討に伴い、目的や方針を徐々に見失うことも多々あるため、何のために行うかを立ち返って考えられるようにしましょう。

目的の確認と共に、トップやチームの本気度を確認することで、M&Aプロセスにおける推進の円滑化や優位な形で交渉を進めることにも繋がります。

譲渡主、譲受主が各自で目的を確認した後は、両者が双方にとって成功となるようなM&Aとは何なのかを考えることも重要です。

M&Aは取引が完了したら終了するものではなく、そこからスタートとなるからです。両者が想定していたような運営が行われない、効果が発現されないとなった場合には、お互いにとって望ましくない状況となります。

そのような状況を回避するために、取引条件や遵守事項を規定し契約書に入れ込むことを通じたリスク回避も行いますが、その前にまずは両者がお互いに信頼できるパートナーでありそうか、バトンをタッチできる相手方でありそうかを考えることが大事になります。

そのためにお互いが相手に対して、大事にしたい想いを明確に伝えることも重要です。協議・交渉の中では、お互いの利益が相反する内容の交渉もありますが、お互いの想いを双方で推察することで、最後には話の方向性が見えることもあります。

✔ M&Aの目的と方針を整理する

M&Aを行う目的は企業によって様々ですが、基本的には下表のようにまとめられることが多いです。

譲渡主としては、承継問題を解決できる手法として活用する目的以外にも、会社の財務基盤強化のために行う場合や、自身の退任に伴い資金を回収するなど、一つの目的というよりは多様な目的の中から、自身として何を最も優先するかを検討します。

一方で、必ずしも最適な相手先が見つからない、売却の条件が望ましいものとならない、経営者や企業との関係が変わることによる従業員や関係取引先から反発が生じる可能性あ、慎重な検討・協議と丁寧な説明が必要となるなど、M&Aを行うことによるリスクを理解しておくこととも重要です。

また譲受主としては、経営権の取得に伴う新規事業や市場進出としての活用、既に運営している事業とのシナジー発現や社員の経営登用など様々な目的で活用が考えられます。他にも許認可を持つ企業を取得したり、自社でゼロから立ち上げるより効率的という趣旨で、M&Aを実務的に考える企業も多く存在します。

一方で、リスクとしては同様に、相手先が見つからない・条件が合わないことに加えて、譲受後に投資採算が合わない、想定していた効果が得られないということもあります。

よくある失敗事例

よくある失敗事例

  • 目的を途中で見失う

    時間の経過と相手方との協議・検討に伴い、目的を徐々に見失ってしまい、当初の目的を達成できない可能性を残したまま、M&Aの検討だけ進行しているような場合があります。
  • 誰も目的を理解してない

    M&Aの検討メンバーに追加された担当者が、今回のM&Aの検討目的を既存メンバーや上席者に確認すると、明確な目的が無いといった場合があります。意思決定の場面やPMIなど、重要な局面で目的が合意されていない影響は大きいので、常に立ち戻って確認するようにしましょう。

よくある質問

目的を達成するために、M&Aしか方法がないのでしょうか?

必ずしもそうとも限らないという前提で考えておくことが重要です。M&Aに踏み切らずとも、目的を達成できる方法は他にもあるかもしれません。提携なら業務提携・資本提携も一つの方法です。一方で、M&Aを通じて達成できる目的があるのも事実です。

「最初からM&Aだけを考える」「M&Aは絶対にやらない」という見方だけでなく、「なぜM&Aの検討を進めるか」ということを考え続けることが重要です。

M&A仲介会社におすすめの案件を紹介されたが、そこから目的を検討する形でも間に合うのか?

必ずしも間に合わないといったことはありません。一方で、魅力的な企業や事業の譲渡には、譲り受けたいと手を挙げる企業は多く存在するはずです。他の候補企業と並べて検討される際に、自社がなぜその対象企業・事業を魅力に感じるかの説明が出来ることが望ましいです。

それが検討のスムーズさ、相手への信頼度、取引価格等様々な部分で見える形になることも多く、事前に検討ができると、いざという時の動きが統一され、目的を達成できる可能性を上げることに繋がります。