M&Aがどういうものか概要を理解したら、次にM&Aの取引の特徴を理解しましょう。取引の特徴を理解すると、なぜM&Aがこのような全体の流れと各ステップで進行するかが見えてきます。
このステップのまとめ
M&Aは他に代替ができず、基本的に高額で、契約や運用などが複雑に絡み合った会社や事業というものを取引の対象とします。そのため、基本的にはそれらの要素が強いほど、慎重な検討を要し、取引検討の期間も長くなることが多いです。
取引検討の始まりとして、まずは各自で事前の準備・検討を行います。次に譲受主・譲渡主が双方を認識し基本的な情報を開示した上で、M&Aの目的や基本的な取引条件のすり合わせを実施、これまでに得た情報や協議内容に基づき、一旦の合意を行い、本格的な検討を行っていきます。
本格的な検討期間では、会社や事業全体の調査を譲受主が実施します。その際に弁護士、会計士・税理士等の専門家を活用し詳細な調査を行うことも一般的です。
その後、更に詳細な条件を協議し、最終契約書を締結、取引を実際に実行し(代金の支払い、株式譲渡など)、M&Aの取引自体は完了します。譲受後は、譲受主(買主)のもと、会社や事業が運営されていくこととなります。
各ポイントの解説
✔ M&Aの取引の特徴を理解する
M&Aは会社や事業を譲り渡す、譲り受ける取引のことを指します。そのため、他に存在しない「一点物」の企業や事業を取引の対象とします。
そのため、取引対象の企業や事業をより理解し価値を確認するため、譲受主は各側面から多面的に調査するためのデュー・ディリジェンス(DD)と呼ばれる手続きを実施することが通常です。
また、取引額が高額となることが通常であり、商品・サービスの個別取引とは異なり、一度完了した取引の解消は困難です。取引に伴って発生する費用や補償責任も大きくなるため、適切なリスク管理と契約対応が不可欠です。
そして、企業や事業という複雑に絡みあったものを取引するため、取引価格決定のための価値評価、取引ストラクチャーの検討、各種契約書におけるその他取引条件など、専門知識や経験に基づく検討が必要となります。
✔ M&Aの全体の流れを理解する
M&Aには、多様な取引の方法があり、必ずしも同じステップで進むとは限らないですが、一般的には事前検討を行い相手方と基本条件を合意した上で、本格的な検討フェーズに移ります。
本格検討フェーズでは、対象企業・事業の更なる調査(DD)及び価値評価を実施します。調査や評価を踏まえ、取引価格及びストラクチャー含む諸条件を交渉・決定した後は最終契約を締結し、取引が完了(クロージング)します。クロージングのM&Aプロセス完了後は実際の統合を推進していきます。
M&Aを通じて、会社や事業を譲り渡す、譲り受けるための一連の流れは、基本的には多くの時間を要し、理解するべきことも難解で複雑です。
外部専門家やM&Aアドバイザーの発言や内容の前提となる考え方、全体感とポイントを理解するだけでも、有効かつ効率的なコミュニケーションとなり、円滑にM&Aを推進し、目的を達成する一助となるので、最低限の知識やイメージを付けた上で取り組むことが望ましいです。
なお、これらのM&Aプロセスをサポートする仲介・アドバイザリー会社や専門家が数多く存在しているので、細かい部分や一連の支援を依頼することができます。支援を外部専門家やM&Aアドバイザーに依頼することで、安心感の確保や手間の削減は可能になります。一方、支援に対する報酬は発生することとなるので、プロジェクトの難しさと予算に見合った体制を構築することが肝要です。
よくある失敗事例
よくある質問
M&Aはどのくらい大変ですか?
多くの方にとって会社を譲渡する、譲り受けるということは一般的なものではありません。自身が手掛けてきた企業・事業を取引するための判断が都度必要となり、取引金額も基本的には高額であることが多いです。加えて、M&A特有の用語や考え方、進め方など慣れないことの連続です。
まとめると、M&Aは大変なプロセスですが、大事なポイントを理解し、必要に応じアドバイザーを起用するなど、上手い進め方は存在します。
M&Aはどの取引でも全て同じプロセスで行われるものと理解して良いですか?
どの取引でも全て同じ、というわけではありません。個別のM&Aに応じて必要とされる、あるいは有効・効率的なプロセスは異なります。上記のイメージは多くのM&Aに共通する一般的なプロセスとして、理解しておくと良いです。
先のステップで検討する事柄を、先んじて検討しても良いですか?
もちろん大丈夫です。M&Aは基本的には短い期間に多くのことを検討することが必要になるプロセスです。時間の許す限り先んじて検討することで、その後のステップの進行を有効かつ効率的に進めることが可能となります。 一方で、一つ一つの検討事項がそれぞれ重要となるので、優先度を都度判断した上で、検討を進めましょう。