この記事では、弁護士ドットコム株式会社が2024年6月21日に公表した「事業計画及び成長可能性に関する事項」を元に、事業内容やM&A戦略についてまとめます。
概要
弁護士ドットコム株式会社は、「リーガルテック」と呼ばれる法律分野のテクノロジー企業です。弁護士と依頼者をつなぐプラットフォーム「弁護士ドットコム」の運営で知られていますが、近年は電子契約サービス「クラウドサイン」の成長が著しく、2024年3月期の売上高は113億円に達しています。
同社はM&Aにも積極的で、2023年10月には判例データベース「判例秘書」を提供する株式会社エル・アイ・シーを子会社化し、2024年5月にはデジタル文書整理ツール「弁護革命」を提供する株式会社弁護革命をグループジョインしています。これらのM&Aは、弁護士向けのサービスを強化し、事業領域を拡大する戦略の一環と見られます。
会社概要
- 設立:2005年7月
- 代表者:代表取締役社長 元榮 太一郎
- 所在地:東京都港区六本木4-1-4 黒崎ビル 5階
- 事業内容:
- メディア事業:「弁護士ドットコム」「税理士ドットコム」「ビジネスロイヤーズ」などのポータルサイト運営、「弁護士ドットコムニュース」などのニュースメディア運営
- IT・ソリューション事業:電子契約サービス「クラウドサイン」、Web完結型クラウド契約サービス、弁護士向け業務支援サービスなど
対象市場・競合状況
弁護士ドットコム株式会社がサービスを提供する市場は、法律サービスとテクノロジーを融合させた新しい市場である「リーガルテック」です。
リーガルテック市場において、弁護士ドットコム株式会社は複数のサービスを提供しており、それぞれの競合は下記の通りです。
- 法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」:競合は「法律相談広場」など。
- 電子契約サービス「クラウドサイン」:競合は「GMOサイン」や「ドキュサイン」など。
- 税務相談ポータルサイト「税理士ドットコム」:競合は少ない。
- 企業法務ポータルサイト「ビジネスロイヤーズ」:競合は少ない。
「弁護士ドットコム」は法律相談ポータルサイトとしては国内最大級であり、「税理士ドットコム」や「ビジネスロイヤーズ」は競合が少ないことから、これらの分野では優位なポジションを確立していると考えられます。
一方、「クラウドサイン」は競合が多いものの、同社資料によると業界のスタンダードサービスとして普及していると記載されており、シェアが高いと考えられます
事業概要
弁護士ドットコム株式会社は、次の3つの事業を柱としています。
特に近年は、電子契約サービス「クラウドサイン」が急成長しており、同社の主力事業になりつつあります。
- メディア事業
- 「弁護士ドットコム」「税理士ドットコム」「ビジネスロイヤーズ」といった専門家と相談者を繋ぐポータルサイトを運営しています。
- 「弁護士ドットコムニュース」などのニュースメディアも運営しており、月間1,344万人が訪れています。
- IT・ソリューション事業
- クラウド上で契約締結ができる電子契約サービス「クラウドサイン」を提供しています。
- Web完結型のクラウド契約サービスも提供しています。
- 弁護士向けの業務支援サービスも提供しています。
- その他事業
- 弁護士や税理士の人材紹介サービスを行っています。
経営戦略
弁護士ドットコム株式会社は、「リーガルテック」のリーディングカンパニーとして、テクノロジーを活用した法律サービスの提供を目指しています。
- 弁護士ドットコム: 総合法律相談サイトに加え、法律分野別の専門サイトを展開し、メディアトラフィックの強化を図る。
- クラウドサイン: 大企業の獲得強化、SMBCクラウドサインとの連携強化、契約ライフサイクルマネジメントサービスの提供を通じて、早期の売上高100億円を目指す。
- 税理士ドットコム: 集客支援、業務支援、中小企業支援の3つの軸でサービスを強化し、税理士事務所の成長を支援する。
- ビジネスロイヤーズ: メディアを中心とする会員の拡大、ビジネスロイヤーズライブラリーの拡販、リーガルブレイン商材のアップセルを図る。
- リーガルブレイン構想: 弁護士業務のDXを推進するため、AIを活用したリーガルデータベース「リーガルブレイン」を構築し、法律相談、契約業務、コンプライアンスチェック業務などを支援するサービスを提供する。
財務概要
2024年3月期
2024年3月期は113億円を達成(前年同期比28.0%増)。クラウドサインが急成長しており、2023年10月に子会社化した株式会社エル・アイ・シーの弁護士支援サービスも増加しています。
クラウドサイン事業の黒字化、弁護士ドットコム事業で得た利益のクラウドサイン事業への積極投資などにより、2024年3月期は過去最高の12億円を達成。売上高の成長と利益の創出を両立しています。
事業拡大に伴い人件費と広告宣伝費が増加。連結決算開始に伴い、のれん償却費を含む子会社関連費用やその他費用も増加しています。
貸借対照表
- 純資産: 利益剰余金の増加により、990百万円増加。
- 自己資本比率: M&Aの実施等により40.3%となっています。
今後の見通し
2024年3月期は過去最高益を達成しましたが、成長戦略の一環として、国内外を問わずM&Aや合弁会社設立、アライアンスなどの投資を実施する可能性があります。 これらの投資は、投資先の事業状況によっては、弁護士ドットコム株式会社の業績や財政状態に影響を与える可能性も考慮しておく必要があります。
しかし、同社は「リーガルテック」のリーディングカンパニーとして、テクノロジーを活用した法律サービスの提供を目指しており、今後も積極的な事業展開とM&Aによる成長が期待されます。
弁護士ドットコム株式会社が「買収企業」となるM&Aや資本業務提携
弁護士事務所向け業務効率化ソフトウェア企業の買収
弁護士ドットコム株式会社は、弁護士向けのサービスを強化しており、業務効率化ソフトウェア企業を買収することで、弁護士の業務効率化をさらに支援し、顧客基盤を拡大することができます。 例えば、弁護士向け顧客管理システムや法律文書作成支援ツールを提供する企業を買収することで、弁護士の業務効率化を支援し、弁護士ドットコムのプラットフォームとの連携を強化することができます。 具体的な企業としては、弁護士向け業務管理システムを提供している株式会社アシロなどが挙げられます。
法律特化型AI開発企業の買収
弁護士ドットコム株式会社は、AIを活用したリーガルデータベース「リーガルブレイン」を構築しており、AI開発企業を買収することで、AI技術の開発を加速させることができます。 例えば、契約書レビューAIや法律相談チャットボットなどを開発している企業を買収することで、リーガルブレインの機能を強化し、競争力を高めることができます。 具体的な企業としては、AI契約書レビューサービスを提供している株式会社LegalForceなどが挙げられます。
法律系メディア企業との資本業務提携
弁護士ドットコム株式会社は、法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」やニュースメディア「弁護士ドットコムニュース」を運営しており、法律系メディア企業と資本業務提携することで、コンテンツの拡充や相互送客を図ることができます。 例えば、法律専門雑誌やWebメディアを運営している企業と提携することで、コンテンツの幅を広げ、より多くのユーザーを獲得することができます。 具体的な企業としては、法律専門雑誌を発行している株式会社商事法務などが挙げられます。
考えられるM&Aや資本業務提携のアイディア
法律事務所向け業務効率化ソフトウェア企業の買収
弁護士ドットコム株式会社は、弁護士向けのサービスを強化しており、業務効率化ソフトウェア企業を買収することで、弁護士の業務効率化をさらに支援し、顧客基盤を拡大することができます。
例えば、弁護士向け顧客管理システムや法律文書作成支援ツールを提供する企業を買収することで、弁護士の業務効率化を支援し、弁護士ドットコムのプラットフォームとの連携を強化することができます。
弁護士向け業務管理システムを提供しているリーガルテック株式会社などが挙げられます。
法律特化型AI開発企業の買収
弁護士ドットコム株式会社は、AIを活用したリーガルデータベース「リーガルブレイン」を構築しており、AI開発企業を買収することで、AI技術の開発を加速させることができます。
例えば、契約書レビューAIや法律相談チャットボットなどを開発している企業を買収することで、リーガルブレインの機能を強化し、競争力を高めることができます。 具体的な企業としては、AI契約書レビューサービスを提供している株式会社MNTSQなどが挙げられます。
法律系メディア企業との資本業務提携
弁護士ドットコム株式会社は、法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」やニュースメディア「弁護士ドットコムニュース」を運営しており、法律系メディア企業と資本業務提携することで、コンテンツの拡充や相互送客を図ることができます。 例えば、法律専門雑誌やWebメディアを運営している企業と提携することで、コンテンツの幅を広げ、より多くのユーザーを獲得することができます。 具体的な企業としては、企業法務に特化したニュースサイトを運営する株式会社One Legalなどが挙げられます。