RobloxのCorporate Development

今回はRobloxのCorporate Development担当のインタビューを元に、「Corporate Development」が成功するために必要なことをまとめます。

ポイントは下記の通りです。

成功のポイント

製品ロードマップとの整合性: 買収はロードマップ加速の手段であり、戦略的意義を明確にする。
人材と技術の獲得重視: 商業ビジネスよりも、技術リーダーやエンジニアの獲得を優先する。
厳格な選定プロセス: 採用と同様、多数の候補者と接触し、厳選する。創業者との「採用面接」も重要。
統合計画の事前準備: 買収前からブレインストーミングを行い、技術や組織への理解を深める。
ビジネスリーダーとの連携: ビジネスリーダーの状況を理解し、提案内容との整合性を確認する。
多角的な情報収集: 社内外のネットワークを活用し、候補企業を発掘する。
M&Aプロセスの明確化: ディールプロセスに関わる各担当者の役割を明確にする。
パイプライン活動のモニタリング: パイプラインの活動レベルを定期的に確認し、改善を図る。

これらのポイントを踏まえ、M&Aを戦略的に活用することで、製品ロードマップの加速と企業成長を促進しています。

まず、Robloxは下記のようなアメリカの企業です。

Robloxの概要

会社概要

社名: Roblox Corporation
設立: 2004年
本社: アメリカ合衆国カリフォルニア州サンマテオ
上場: ニューヨーク証券取引所（NYSE: RBLX）
創業者: David Baszucki（CEO）, Erik Cassel
従業員数: 約2,200人（2023年12月時点）

事業概要

Robloxは、ユーザーがゲームを作成・共有し、他のユーザーがプレイできるオンラインゲームプラットフォームおよびゲーム制作システムです。プラットフォーム内で使用される仮想通貨「Robux」を通じて、開発者は収益を得ることができます。

主な事業内容

Robloxプラットフォームの提供: ユーザーがゲームを作成・共有・プレイできる環境を提供
Roblox Studioの提供: ゲーム開発ツールを提供
Robuxの販売: プラットフォーム内で使用される仮想通貨を販売
広告事業: プラットフォーム内で広告を表示
開発者向けサービス: 開発者支援プログラムやイベントなどを提供

経営戦略

Robloxの経営戦略は、以下の3つの柱に基づいています。

プラットフォームの成長: ユーザーベースの拡大、エンゲージメントの向上、コンテンツの多様化
収益化の強化: Robuxの販売促進、広告事業の拡大、開発者向けサービスの拡充
技術革新: プラットフォームの機能強化、ゲーム開発ツールの改善、新しい技術の導入

M&Aの歴史

Robloxは、例えば以下の企業を買収しています。

Loom.ai: リアルタイムの顔アニメーション技術を持つ企業（2020年12月）
Guilded: ゲーマー向けチャットプラットフォーム（2022年8月）

今後の展望

Robloxは、メタバースのリーディングカンパニーとしての地位を確立し、さらなる成長を目指しています。プラットフォームの拡大、収益化の強化、技術革新を通じて、世界中のユーザーに新しいエンターテインメント体験を提供していくことが期待されます。

RobloxのM&A戦略

ここからセッションの内容をまとめます。

1. M&Aの旅の始まり

私(Kyle Price氏)は、Robloxのチーフ・オブ・スタッフ兼コーポレート・ディベロップメント責任者です。Robloxは、ユーザーがゲームをプログラミングしたり、他のユーザーが作成したゲームをプレイしたりできるオンラインゲームプラットフォームで、NYSEに上場しています。本日は、Robloxがどのようにコーポレート・ディベロップメント（Corp Dev）機能を構築してきたかについてお話します。

私はRobloxに入社して5年になります。以前はeBayでプロダクトやコマーシャルの役割を担っていました。Robloxでは、CEOのチーフ・オブ・スタッフとして入社し、その後、1年半ほどでコーポレート・ディベロップメント（Corp Dev）チームを立ち上げました。eBayでの経験からCorp Devについて少しは知っていましたが、RobloxはこれまであまりM&Aを行ってこなかったため、新たな挑戦でした。

2. M&A戦略の策定：有機的で段階的なアプローチ

RobloxのM&A戦略は、「ロードマップの加速」という明確な目標を掲げています。つまり、Robloxの技術革新を加速させるために、必要な技術や人材を持つ企業を買収するということです。

Corp Devチーム立ち上げ当初は、トップダウンの指示ではなく、各プロダクトリーダーやエンジニアリングリーダーとの対話から始まりました。彼らがどのような技術やチームを求めているのかを理解し、Robloxの戦略に合致する買収対象を模索しました。この有機的なプロセスを通じて、Roblox独自のM&Aプレイブックと戦略が徐々に形成されていきました。

3. 買収実行の舞台裏：組織と連携の重要性

M&Aを実行する上で、組織的な整備と連携が重要です。特に、法務チームや人事チームとの連携は欠かせません。Robloxの場合は、買収対象企業の技術だけでなく、人材の評価と長期的な定着も重視するため、人事チームとの連携が特に重要でした。

買収対象企業の創業者とのコミュニケーションも重視します。創業者は長年会社を築き上げてきた人たちであり、買収は彼らの人生にとって大きな決断です。そのため、Robloxは、彼らに対して人間味あふれる丁寧な対応を心掛け、時間をかけて相互理解を深めるように努めています。具体的には、買収後のキャリアパスやRobloxの企業文化への適応などについて、率直な意見交換を行います。

4. 統合計画：早期のブレーンストーミングと投資仮説の検証

Robloxは、買収対象企業との初期の対話段階から、統合後のシナリオについて具体的に検討します。例えば、買収対象企業の技術をRobloxのプラットフォームにどのように統合するか、従業員の役割分担をどのように行うかなどを事前に検討します。これにより、買収後のリスクを軽減し、スムーズな統合を促進します。

このプロセスは、Robloxの投資を検証する機会でもあります。買収対象企業の技術やチームがRobloxの戦略に本当に合致するのか、統合後にどのようなシナジー効果が期待できるのかを具体的に検討することで、より確実な意思決定を下すことができます。

5. ビジネスリーダーとの連携：Win-Winの関係構築

M&Aを成功させるためには、ビジネスリーダーとの連携が不可欠です。ビジネスリーダーは、Robloxの各事業部門を統括する責任者であり、彼らのニーズや課題を理解することが、効果的なM&A戦略の策定につながります。

RobloxのCorp Devチームは、ビジネスリーダーと密に連携し、彼らの目標や課題を共有します。例えば、Robloxの教育部門が新たな学習コンテンツを開発したいと考えている場合、その分野に強い企業を買収することで、Robloxの教育事業を強化することができます。このように、M&Aがどのように彼らの目標達成に貢献できるかを具体的に説明し、Win-Winの関係を構築します。これにより、ビジネスリーダーはM&Aに対して積極的な姿勢を示し、統合後の協力体制もスムーズに進みます。

6. M&Aの評価と改善：定量化と振り返り

Robloxは、M&Aの成果を評価し、継続的に改善するための仕組みを導入しています。例えば、パイプライン活動の定量化（月に何社の企業と接触したか、何件のM&A案件を検討したかなど）や、買収後の統合プロセスにおける課題の分析（従業員の定着率、技術統合の進捗状況など）などを通じて、M&Aプロセスの効率化と効果の最大化を目指しています。

また、M&Aの経験を通じて、Robloxにとって何が重要かを学び、それをM&Aプレイブックに反映しています。このプレイブックは、RobloxのM&A戦略の進化と成長を支える重要なツールであり、過去の成功と失敗から得られた教訓が詰まっています。

7. AIの活用：M&Aプロセスの進化

Robloxは、AI技術をM&Aプロセスに活用することを積極的に検討しています。例えば、AIを活用した情報収集では、膨大な量の企業情報を効率的に収集し、Robloxのニーズに合致する企業を迅速に特定することができます。また、AIを活用したデューデリジェンスの自動化では、財務データや法務文書などを自動的に分析し、リスク評価を効率化することができます。さらに、AIを活用した統合計画の最適化では、買収後のシナジー効果を最大化するための最適な統合プランを提案することができます。