中計資料等において、各社が今後の戦略投資枠を開示しているケースがあります。今回はTDKがどのような戦略投資枠を設けているかをまとめます。

過去にも$1bnを超えるM&Aを複数実施しており、事業再編と買収等をどのように組み合わせていくか、注目です。
足元は株価も高騰しており、様々な対価を組み合わせた手法も考えられるかもしれません。

TDKが新中計、戦略投資3倍の1500億円 M&Aに重き - 日本経済新聞TDKは22日、2027年3月期を最終年度とする3年間の中期経営計画を発表した。M&A(合併・買収)などの戦略投資www.nikkei.com

TDKは3ヶ年累計の営業CF想定1兆円のうち、約1,500億円を長期的な成長に向けた戦略投資に充てるとのことです。

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https://www.tdk.com/system/files/tdk_investor_day_20240522_ja.pdf

前回の中計目標であった2兆円の売上高を達成したものの、収益性や効率性の指標に課題が残ったようです。

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新中計ではCAGR成長率5%を見据えつつも、FCF+1,000億円を産む効率性向上もポイントとなっています。

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過去推移を見ると営業CFと投資CFがトントンな年度が多いようですが、今後どの程度効率性向上が結果として現れるでしょうか。

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新中計においては、成長、効率性等指標のさらなる良化を、ポートフォリオ変革を通じて目指します。

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事業に関しては、既存事業の譲渡などポートフォリオの変革も含めて資本配分の見直しも実施していきます。具体的には足元の成長を牽引しちえるエナジー事業の一定の成長鈍化を見据え、磁気応用・センサ事業の成長牽引、エナジー・受動部品事業の効率性向上を見据えたポートフォリオマネジメントを強化するようです。

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また投資枠捻出のために、ハードルレートを設けるなどの財務マネジメントも行います。

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執行役員のうち50%の9名が外国籍の方というのも、今後の海外市場の強化に向けた戦略投資促進に結びついていそうです。

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市場別では、ICTや産業機器市場向けの売上高が鈍化したようです。
特に中国市場減速の影響を受けている部分も大きそうです。

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過去のM&A事例

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https://www.tdk.com/system/files/company_profile_2023_ja_01.pdf

2005年: Amperex Technology Limited (ATL)

中国の大手リチウムイオン電池メーカーATLを買収。TDKのエナジー応用製品事業を大きく強化しました。

2005年: ラムダパワーグループ

日本の産業用電源メーカーを買収。電源事業の拡大を図りました。

2007年: Magnecomp Precision Technology

タイのHDDサスペンションメーカーを買収。HDDヘッド事業の競争力強化を目指しました。

2008年: EPCOS

ドイツの大手パッシブコンポーネントメーカーを買収。TDKのパッシブコンポーネント事業を大幅に拡大しました。

2016年: Micronas、Hutchinson Technology

スイスのセンサーメーカー、米国のHDDサスペンションメーカーをそれぞれ買収。センサー事業とHDD事業の強化を図りました。

2017年: InvenSense

米国の大手モーションセンサーメーカーを買収。IoT、自動車、ICT分野でのセンサーソリューション事業を強化しました。

2023年: Qeexo

機械学習プラットフォーム開発のベンチャー企業を買収。スマートエッジソリューション事業への進出を目指しています。TDKは、パッシブコンポーネント、センサー、エナジー、HDDヘッドなどの主力事業分野で、M&Aを積極的に活用してきました。新規技術の獲得と事業ポートフォリオの拡充を図ってきたと言えます。

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