株式交付を通じて資産管理会社を子会社化するスキームについてまとめてみました。

株式交付の目的

エステーは、事業環境の変化に対応し、ブランド価値の向上と持続的成長を目指しています。特に、ESG(環境・社会・ガバナンス)戦略の強化が求められる中で、シャルダンを子会社化することで、コーポレート・ガバナンスの強化と株式の流動性向上を図ることが目的です。

株式交付の内容

  • 交付比率: シャルダンの普通株式1株に対して、エステーの普通株式20.41株を割当て交付します。
  • 交付する株式数: エステーが新規に発行する株式で、シャルダンの全株式を譲り受けた場合、エステーの普通株式4,163,640株を交付します。

公正性の担保

  • 第三者算定機関: 株式会社KPMG FASが株式交付比率の算定を行い、その公正性を確認しました。
  • 特別委員会: 独立社外取締役による特別委員会が設置され、株式交付の目的、条件、手続の公正性を検討し、当社の一般株主にとって不利益ではないと判断しました。

子会社化する具体的な手続き

1. 株主総会付議承認取締役会決議

  • 日程: 2024年5月20日
  • 内容: 株式交付計画の承認を取締役会で決議します。

2. 株主総会決議

  • 日程: 2024年6月18日(予定)
  • 内容: 株主総会で株式交付計画の承認を得ます。

3. 株式交付子会社の株式譲渡の申込期日

  • 日程: 2024年6月28日(予定)
  • 内容: シャルダンの株主がエステーに対して株式譲渡の申込を行います。

4. 株式交付の効力発生日

  • 日程: 2024年7月1日(予定)
  • 内容: 株式交付が正式に効力を発し、シャルダンがエステーの子会社となります。

5. 合併予定

  • 内容: 株式交付実施後、エステーを存続会社、シャルダンを消滅会社とする合併を予定しています。これにより、シャルダンが保有するエステー株式の処分が求められます。

株式交付比率の算定

  • 株式交付比率: 19.29~22.21(エステーの普通株式1株当たりの価値を1とした場合のシャルダンの普通株式1株に対する比率)
  • エステーの株式価値: 1,527円~1,549円(市場株価法)
  • エステーの普通株式は東京証券取引所プライム市場に上場しており、一定の流動性があるため、市場株価法を採用しました。2024年5月17日を算定基準日として、終値、直近1か月間、3か月間および6か月間の株価終値の単純平均値を基に算定しました。
  • シャルダンの株式価値: 29,461円~34,395円(修正簿価純資産法)
  • シャルダンの株式価値: シャルダンは非上場会社であり、その主要な資産がエステー株式であることを考慮し、修正簿価純資産法を採用しました。シャルダンの2024年2月29日時点の貸借対照表の簿価純資産額に、シャルダンが保有するエステー株式の含み益等を反映させた修正純資産額を算出しました。

1. コーポレート・ガバナンスの強化

エステーは、シャルダンを子会社化することで、コーポレート・ガバナンスの強化を図ります。シャルダンはエステーの筆頭株主であり、エステーの議決権の24.8%を保有しています。この株主構成がエステーの経営の安定性に寄与してきましたが、創業家が主要株主であることから、資本と経営が実質的に一体であるかのような状況が続いていました。この状況を改善し、より透明で公正なガバナンス体制を構築するために、シャルダンを子会社化することが決定されました。

2. 株式の流動性向上

シャルダンが保有するエステー株式を、シャルダンの株主が直接保有することにより、エステーの株式の流動性が向上します。これにより、固定的な主要株主が存在しない状況を作り出し、資本市場の要請に応じた柔軟な資本政策を実行することが可能になります。

3. 資本コストの削減と資本効率の向上

エステーは、資本コストや資本収益性を意識した経営を行うため、経営指標を「売上高営業利益率」から「ROE(自己資本利益率)」に変更しています。シャルダンを子会社化することで、資本効率の向上を図り、企業価値の向上を目指します。

4. 資金の社外流出防止

株式交付は、株式交換とは異なり、シャルダンの株主の意思を尊重しつつ子会社化を実現する手法です。この方法により、エステーの資金が社外に流出することなく、シャルダンを子会社化することができます。

5. 長期的な企業価値の向上

本株式交付により、エステーはシャルダンを完全子会社化し、コーポレート・ガバナンスの強化と株式の流動性向上を図ることで、長期的な企業価値の向上を目指しています。これらの理由から、エステーはシャルダンを株式交付によって子会社化することを決定しました。共有書き直す

経営課題

1. 競争環境の激化

日用雑貨業界は競合他社や新規参入者との間で厳しい競争が行われています。エステーは市場や消費者のライフスタイルの変化によるニーズの分析を行い、高付加価値商品の提供や商品ラインナップの見直しを進めています。

2. 原材料価格の高騰

原材料価格の高騰や円安の進行により、素材価格の高止まりが長期化する可能性があります。エステーは複数購買やグローバル購買などによる原材料調達価格の安定化を進め、代替品の検討を行っています。

3. 気候変動の影響

防虫剤や除湿剤、カイロなど、売上高が天候に大きく左右される品目が存在します。エステーは気候変動データを活用した分析・予測を行い、リスク低減を図っています。

成長戦略

1. 既存コア事業の高収益化

エステーは既存コア事業に集中し、多様化するライフスタイルに対応した需要の拡大策を図っています。エアケアや衣類ケアの市場シェア拡大を目指し、統合コミュニケーションや新しい需要の取り込みを行っています。

2. 原価高騰対策

コスト削減のために、原材料コストの低減や生産性向上、エネルギー・物流コスト削減に取り組んでいます。また、高単価・高付加価値品の拡売を行っています。

3. 成長領域への投資

中長期的な成長に向けて、B2B、海外、新規事業への取り組みを継続しています。特にエアケアに注力し、作業用手袋の収益改善や海外市場への展開を進めています。

4. ESG時代を生き抜くための基盤作り

環境対応や新しい価値を提供するための商品開発体制の強化とともに、企業の持続的な成長をもたらすための人的資本経営を推進しています。リスク管理体制の強化やデジタル技術の活用によるイノベーションに挑戦しています。

5. コーポレート・ガバナンスの強化

資本コストや資本収益性を意識した経営を行うため、経営指標を「売上高営業利益率」から「ROE」に変更し、資本効率の向上に取り組んでいます。また、経営環境に対応した機動的な資本政策の遂行を重要課題としています.これらの経営課題と成長戦略を通じて、エステーは持続的な成長と企業価値の向上を目指しています。